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伝統野菜で調べてみよう「わが町の物語」

伝統野菜で調べてみよう「わが町の物語」
高井戸節成半白胡瓜(たかいどふしなりはんじろきゅうり)。半分が白いのも特徴の一つ。節成とは親づるの節ごとに雌花を付けることからきている。主にぬか漬けに利用された

夏休みの声を聞くと、子どもの頃の「夏休み自由研究」を思い出します。当時、テーマをあれこれと腐心したものでした。今ならば、伝統野菜がちょうどよい題材になりそうです。

 

過去十数年間、加賀野菜や京野菜をはじめ、全国各地で伝統野菜が注目されるようになりました(インターネットで「伝統野菜」というキーワードで検索すると、農林水産省や各自治体、市民グループによる情報サイトがずらりと出てきます)。

 

夏野菜が豊富なこの時期、伝統野菜も盛り沢山です。キュウリやウリ、ナス、トウガラシ、カボチャなど、各地で個性的な伝統野菜を見つけることができます。たとえば大都市・東京の伝統野菜。JA東京の資料によると40ほどの江戸東京野菜がピックアップされています。伝統野菜の面白い点は地域に密着していることですが、背景を調べていくと江戸と全国各地との間の人々の往来や物産交流が見えてきます。

 

先日、都立小金井公園内にある江戸東京たてもの園を訪ねたところ、園内の小さな一角で江戸東京野菜を栽培していました。今年、栽培しているのは、高井戸節成半白胡瓜、内藤唐辛子、内藤南瓜、谷中生姜、千住一本葱の5種類でした。

 

今も高井戸付近は交通の要所ですが、小金井市の資料によれば、甲州街道に面していたことから、栽培しやすい節成半白胡瓜が栽培されたそうです。徳川家康によって幕府が開かれて以来、江戸の人口が増え、郊外は人々の台所を賄う野菜の供給地になったことを物語るキュウリでした。

 

あるいは唐辛子と南瓜に冠されている「内藤」。江戸期、現在の新宿御苑は高遠藩内藤家の下屋敷だったのですが、そこでカボチャやトウガラシが栽培されていました。つまり内藤南瓜、内藤唐辛子は、一見、伝統野菜とは無縁に見える東京のど真ん中の歴史的な野菜だったのです。

 

姿や味が個性豊かな伝統野菜。しかしその個性ゆえに、流通上扱いづらい、食味のよい改良新品種が登場した等の理由から次第に表舞台から姿を消していったのです。

 

さまざまな背景や由来を持つ「わが町の伝統野菜」について、夏休みを利用してそれぞれの5W1Hを調べるとき、野菜という視点から、日本を、故郷を、そして自分自身を見つめるよい機会になるのではないでしょうか。

 

小金井市江戸東京野菜HP

 

取材協力:江戸東京たてもの園

 

 

(元『趣味の園芸』編集長 原田)

 

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【園芸LOVE 原田が行く】は、「みんなの趣味の園芸」スタッフであり『趣味の園芸』テキスト元編集長の原田による園芸エッセイです。

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内藤唐辛子。東京のど真ん中、新宿に伝統野菜が!? トウガラシが上を向いているのが特徴で、熟すと真っ赤になるという。新宿区内藤町付近の伝統野菜
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内藤南瓜。江戸時代、武士は屋敷内で野菜を栽培し、自給していたという。「淀橋南瓜」ともよばれ、新宿区内藤町付近の名物だった
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谷中生姜。江戸時代、谷中付近はショウガの産地で、お盆の頃、土産ものに利用されたところから有名になったという。今でも居酒屋などで「谷中」といえばショウガが出てくる
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千住一本葱。ネギの白いところを利用する根深ネギ。畑ではまだまだ小さかったが、この後、立派な姿に成長するのが楽しみ
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江戸東京たてもの園の一角にある江戸東京野菜の畑。古い東京の農家を背景に伝統野菜が育つ光景は興味深い

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