天空の花たちからの爽やかな残暑見舞い
残暑、お見舞いを申し上げます。
立秋を過ぎたとはいえ、まだまだ暑い今日この頃、世界の3,000メートル級の山々で咲く美しい花たちからの、涼感あふれる残暑見舞いです。
届けてくれたのは植物写真家の冨山稔さん。世界各地の美しい花に魅せられ、これまで50を超す国々の花を見て歩いたそうです。
「英国のアルパイン・ガーデン・ソサエティーの会報誌に掲載された美しい花の写真を眺めていると、どうしても自生地を見たくなり、じっとしていられなくて......(笑)」
という冨山さんの心を捉えて離さない天空の花――。
まずはノモカリス(属名:Nomocharis)。
中国・雲南省の高地で、初夏、薄紅色やピンクの花を咲かせます。高さ20~50cmのユリ科球根植物ですが、花弁に入るブロッチはどこかクリスマスローズを思わせます。この花のファンからは「ソバカス美人」の愛称で親しまれています。
ノモカリスの自生地にはヒマラヤの青いケシ、メコノプシス・ベトニキフォリア(学名:Meconopsis betonicifolia)も咲いているそうです。
続いては昨年12月に自生地を訪ねたというロゼット・ヴィオラ(英名:Rosulate Viola)(*1)。名前の「ロゼット」から想起するとおり姿は多肉植物エケベリアを思わせますが、11月から1月、葉のすき間から色とりどりのスミレの花を咲かせます。
自生地はアルゼンチンやチリ、エクアドル、ボリビアのアンデス山脈の高地、太平洋からの風が吹き抜ける急峻で乾燥した礫地帯です。
圧巻はチベット東部の標高4,800mに自生する巨大な草本、レウム・ノビレ(学名:Rheum nobile)。ヒマラヤ高地の象徴のような、いわゆる「温室植物」(*2)として有名です。
標高が高い場所では植物は一般的に小型になると思われがちですが、この植物は草丈2m。山の斜面に突如、巨大な白いタワーのような植物が群生する景色は壮観です。
姿のみならず生育もユニークで、ロゼット葉のままの姿で7~8年かけて栄養を蓄え、一気に2mの白いタワーのような花序を立ち上げると枯れてしまうそうです
天空の花たちの生態は、暑い日本にいながら 秘境を旅する気分を味わわせてくれます。
(*1)ロゼット・ヴィオラは南米の多肉化するタイプのヴィオラの総称。代表種のViola sacculusやV. cotyledonなど全部で30種ほどあり、現在も新種が発見されている。
(*2)温室植物:標高が高く夏でも低温の地域に自生するレウムは、半透明の白い葉で花茎を覆い、温室のように内部の温度を上げて昆虫が受粉しやすい環境をつくっている。
写真提供:冨山 稔さん
●スライド会「冨山稔・南米の高山スミレ、ロゼット・ヴィオラの世界」
日時:9月25日(金)14時~16時
会場:アルパインツアーサービス ネイチャリングツアー事業部 3階説明会会場 (東京都港区西新橋2-8-11 第7東洋海事ビル)
定員:30名
*予約制となります。申し込み・詳細は以下のページをご覧ください。
2012015年 スライド会 開催の知らせ5年 スライド会 開催
のお知らせ
(元『趣味の園芸』編集長 原田)
--------------------------------------------------------------
【園芸LOVE 原田が行く】は、「みんなの趣味の園芸」スタッフであり『趣味の園芸』テキスト元編集長の原田による園芸エッセイです。