傍らの花と「会話」していますか!? ~『植物は〈知性〉をもっている~20の感覚で思考する生命システム』
昨年4月28日、京都大と山口大の研究者による大変、興味深い研究発表がありました。
「トマトはハスモンヨトウの幼虫に食害されると香りを放出して周囲のトマトに知らせ、その知らせを受け取ったトマトは食害されないように防御する植物間の情報伝達メカニズムを、分子レベルで初めて解明する」
という内容でした(研究は複雑ですが)。
香りを利用して情報伝達するトマト――
植物間コミュニケーションは2000年頃から報告されていたそうですが、日頃、ヨトウムシに痛い目にあわされている経験から、「トマトはすごい!」と思わずにはいられませんでした。
この研究を想起させる新刊書『植物は〈知性〉をもっている~20の感覚で思考する生命システム』が、11月25日、NHK出版から発売されます(電子書籍も同時発売)。一足先に読むことができたので、この本のPRです。
我々は園芸生活を楽しんでいますが、植物は動物や人間のような脳をもたないことから、植物の知性について考えることはあまりありません。一方、本書は植物の生命活動を取り上げ、再考を促します。
トマトの嗅覚、食虫植物の味覚、あるいは根粒菌と共生して窒素固定するマメ科植物、受粉のために巧みに擬態するラン等々、植物の問題解決能力を捉え直し、知性とは何かを問いかけてきます。
さて、かつて「趣味の園芸」キャスターを務めた園芸家の柳生真吾さんは、「足音園芸」という話をしていました。そしてこの話を、園芸上手の心得として受け止めていました。育てる花に足音を聞かせようとすれば必ず植物を観察することになり、その変化に対処できるからです。
しかし、本書を読んでいると、植物は足音を聞いて人間のことを認識しているのでは......!? そんなふうに思えてきたのです。園芸ファンの一人として、植物とは何か、知性とは何か、改めて考えてしまう本でした。
(元『趣味の園芸』編集長 原田)
植物は<知性>をもっている 20の感覚で思考する生命システム
ステファノ・マンクーゾ、アレッサンドラ・ヴィオラ 著
久保耕司 訳
定価:本体1,800円+税
発売日:2015年11月25日
お近くの書店、NHK出版Webサイトからお求めいただけます。
--------------------------------------------------------------
【園芸LOVE 原田が行く】は、「みんなの趣味の園芸」スタッフであり『趣味の園芸』テキスト元編集長の原田による園芸エッセイです。