こんちゃんさんの園芸日記
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こんちゃんさん  岡山県
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洋ランの無菌培養のお話(実生編)

2014/10/24
洋ランの無菌培養のお話(実生編) 拡大 写真1 洋ランの無菌培養のお話(実生編) 拡大 写真2 洋ランの無菌培養のお話(実生編) 拡大 写真3

他の植物と同様、洋ランも、品種改良は、交配、播種、育苗、開花、選抜・・・という工程で行われます。
また、貴重な原種の繁殖や、形質のばらつきが少ない一代交配種(F1品種)などの大量生産のためにも、実生が行われます。

洋ランの種子は、長さ0.5~1.0mm、幅0.2~0.4mm程度と極めて小さく、他の植物のように発芽時の栄養を蓄えている胚乳や子葉が無いため、通常の播種方法では、実生苗を安定的に得ることが難しいため、「無菌播種」という方法が用いられます。

自然界では、ランの種子は、通常、ラン菌(カビの一種)と呼ばれる共生菌の助けを借りて、発芽に必要な栄養分を取り込み発芽するのに対し、フラスコなどの容器を用い、殺菌した栄養分を含んだ培地(寒天で固めたもの)に、無菌的に播種を行うことから、「無菌播種」と呼ばれます。

洋ランの鞘の中には、多いものでは、数十万個、あるいは数百万個もの種子が入っていると言われています。
これを、鞘が裂開する前、あるいは、裂開したものについては殺菌処理を行い、無菌播種を行います。

カメラ①半分に割ったデンドロ(セッコク)の鞘と種子。
小さい点々が種子です。
定規の目盛と比較してみてください。


洋ランは、発芽の仕方も独特です。
ラン科植物は、単子葉植物ですが、まずは、球形の細胞塊:プロトコーム(Protocorm)ができ、そのプロトコームの上部にシュートが発生し、下部からは根が分化し、小さな苗に育っていきます。

カメラ②デンドロのプロトコームから、シュートが出始めている状態。

さらに、フラスコから取り出して植えても大丈夫な苗サイズになるよう、新たな栄養分を含んだ培地に1~2回移植します。
これらは、すべて無菌状態で行われます。

こうして育った小苗は、ようやくフラスコから取り出して植えれるようになります。
フラスコ出し直後の苗は、弱めの光で、頻繁に霧吹き(葉水)を行うなど、湿度に気を配りながら、徐々に外気に慣れさせていきます。
その後は、通常の肥培管理で育苗し、開花まで育てます。

品種改良が目的の場合は、開花した株の中から、優秀個体を選抜し、メリクロン(茎頂培養)技術によって、その個体と同形質の苗を大量増殖し、本格的な生産が行われることになります。

カメラ③実生の中から選抜された優秀個体。


メリクロンのお話は、また後日・・・

※画像は、これまでに撮影させてもらった記録画像から抜粋しています。

「洋ランの無菌培養のお話(実生編)」関連カテゴリ

みんなのコメント(9)

こんばんは~。
なかなかこういった話を聞かせてもらえる機会ってないですね。普通の園芸の本ではここまで書いてないですし。やはりプロだったこんちゃんさんのお話は面白いです。
メリクロン編も是非是非お願いしますわーい(嬉しい顔)

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こんばんは。

 蘭の種子は煙か埃みたいなのは判っていますが、専門ではなかったので、今まで播種、育苗に付いて考えたことはありませんでした。

 メリクロンについては、遣って見たいと思いましたが、知識がないので諦めています。

 いつか機会が有れば、遣ってみたい世界です。

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こんばんは〜〜

あ〜〜〜、やっぱり、教科書以上の教科書です〜〜ひらめきひらめきひらめき
とっても勉強になるお話、そのまましっかり頭にいれました。

蘭という植物は、とっても他力本願菜植物なんですね〜〜(笑)
と同時に、その「他力」が存在できる環境、即ち、亜熱帯〜熱帯の植物ということでもありますよね。
蘭菌の存在は、とっても面白く、まさに、反芻獣の第一胃の中の細菌フローラと反芻獣の関係と同じかしら、と思ってしまいましたわーい(嬉しい顔)

培地での栽培、なるほど〜〜と思いました。
ただ、無菌的な環境が必要だと、家庭では無理ですね〜。
プロトコームを形成するというお話も、とっても興味深いです。とても変わった発芽の方法ですね。
こういった発芽方法は、進化の過程を考えると、蘭という植物が、進化の段階のいつ頃に位置するのかも興味深いですね。

しかしながら、こういったお話を伺うと、ますます、なぜにこの自然界には、これだけの生命体のバリエーションがあるのか、ますます不思議になります。
少し、哲学的にもなるかもしれませんが、そういったことも思わず考えてみたりしますわーい(嬉しい顔)
やっぱり、宇宙の外に、全てを見通す神様がいるのかな〜〜なんて思ってみたりもします(笑)

メリクロン、クローン技術ですね〜〜。
クローン技術は、素晴らしい技術で、それこそ、学生時代に最先端だった技術でもありますが、どうも本当にここまで人間が扱っていいものなのか、という疑問を個人的には持っていて、とても複雑な気分になります。
それでも、人間にとっても有用な技術でもありますよね。
蘭のクローン技術、またまたのお話を楽しみにしております!!

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こんちゃん先生 おはようございます

蘭の実生とは凄いですね。

以前本で’アメリカにはマニアが交配した種を育ててくれる施設がある’と読んだことがあります。昔は蘭の株元に種を撒いて(ラン菌の助けを借りて)育てていたとも聞きましたが、育種家の話と思っていました。

なんでも凄いです。

珍しいシュートの画像を見せていただきありがとうございました。

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うめさん、こんばんは。

趣味園芸の本では、このような内容はほとんど書かれていませんねうれしい顔
多くの方にとって、現実には、ほとんど参考になる内容では無いのですが、私たちが気軽に綺麗な花を買ったり、眺めたりできるようになったのは、様々な技術があってからこそ実現されていることを知ってほしくて書いてみましたわーい(嬉しい顔)

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バンダ大好きGGさん、こんばんは。

蘭の種子は、ふ~っと息を吹きかけると、パ~っと飛んでいってしまうくらい小さいですねうれしい顔
蘭が身近な存在になったのは、こうした実生、あるいはメリクロン技術が確したことで実現しています。

実生は比較的容易で、凝られる方はご自分で行っている方もいらしゃるようですが、メリクロンになると、かなり難しくなりますねがまん顔
特に、バンダ大好きGGさんがお好きな、単茎性のランは、茎頂を材料にすると、元株が枯死してしまう危険性が高いので、花茎培養の後、茎頂培養あるいは葉片培養を行うといった、2段階の工程が必要になりますげっそり

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サクシュコトニさん、こんばんは。

洋蘭、中でもカトレア、デンドロなどの着生ランは、競合の少ない樹上へと生息場所を移して進化した植物ですねウィンク
熱帯、亜熱帯は、多くの動植物が生息しているので、子孫を残すためには、より多くの種子をばら撒く方法を採ったのかもしれません。

発芽に共生菌が必要なことについても、そのような菌が存在する蘭にとっては快適な場所に辿りついた種子のみが、育つという仕組みですね。

クローン技術・・・
サクシュコトニさんは、動物学が専門でいらしたので、特に「クローン技術」という言葉については敏感で、同時に複雑な気持ちも抱いてしまうのかもしれませんね。

でも、植物の場合は、少し違っています。
確かに、メリクロンは、無菌のフラスコ内という不自然な条件下で行われるクローン技術になってしまうのですが、植物の場合は、それ以外の方法でも、クローンは作れます。
クローン・・・元と同じ形質を持った別個体ですよね。
つまり、挿し木、接木、株分けなど、皆さんも日常的に、様々な「クローン技術」を使って、元と同じ形質の苗を作っていると思います。
メリクロンは、そのクローン技術の一つということになりますねウィンク

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たねたねさん、こんばんは。

株元に種を播き、共生菌の助けを借りる播種方法は、「有菌播種」と言いますわーい(嬉しい顔)
培養技術が確立する前は、このような播種方法でしたが、あまりにも小さな種子のため、効率的に苗を得ることが出来ず、品種改良も容易では無かったと思います。

無菌播種により、効率よく実生苗が出来、かつメリクロン技術の確立によって、素晴らしい花を咲かせる品種が、身近な存在にまで普及するようになりましたるんるん

確か・・・講師のトミーさんの所では、依頼をすれば無菌播種をやってくれると思いますよわーい(嬉しい顔)

ランの生まれたばかりの赤ちゃん・・・可愛いでしょううれしい顔

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サクシュコトニさん、追記です。

動物と植物のクローンの違い・・・

植物のクローンにおいては、対象となる個体に由来する組織だけを使うのに対し、動物のクローンでは、別個体に由来する組織(授精卵)も使いますよね。
そこが、動物と植物のクローン技術の大きな違いだと思います。

植物の世界から見ると、動物のクローン技術は、遺伝子組み換え技術に近い感じに思えます。

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