柔らかく弾力のある肉色の組織の間から
乳白色の固い物質が突き出てくる。
夜に明るい蛍光灯の下でそれを摘みながら、
これは一体なんなんだろうとしみじみ思う。
20本の何かの幼虫のような指の先に
唐突に突き出ていて、徐々に伸びる。
キーボードを叩きながら口の中を舌でたどる。
容赦なく噛み切ったり磨り潰したりする野蛮な
道具がずらりと並んだ不気味な空間。
親元に居た頃に抜いた歯の跡。
一人になってから抜いた歯の跡。
親知らずという単語がぽっかりと空いた大きな穴倉の中で 行き場を失って右往左往しているのに、
他の白く固い奴らは素知らぬふりをしている。
大まかな構造は、
細かく穴の開いた支柱に張り付けた
伸縮自在な筋と、白っぽい脂肪に、桃色の肉。
表装には日に焼けやすい柔らかな皮を使用。
機械は、意思とは別に動く自動式と
瞳から水を流したり、音を立てて意思疎通を図ったりする
他動式の二種類を搭載。
でも、哀しくなったり嬉しくなったりは
どこで動いているのでしょう。
寂しくなったり楽しくなったりは、
何が作動するのでしょう。
メンテナンスしたいけれど、螺子やら蝶番やらが
見付からないのです。
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