生き抜く力

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写真2

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昨夜から降り続いた雨は朝になっても止まず
路肩を流れて側溝へ音を立てて流れ込んでいたのに
いつの間にかぴたりと止んで、今は真っ青な空が光っている。

誰にでもその人らしい生き方をする権利はあるはずだ。
ただしそれぞれの手には限られた持ち物しかなくて、
それを駆使して生きるしかない。
運を持つ者と持たざる者と、
知恵を持つ者と持たざる者と、
金を持つ者と持たざる者と・・・・
己の掌を見詰めて持っていない物を知り
羨むのは容易いが、
己が握り締めた何らかを、
それを道具に例えるならば旨く使いこなして
いるかと考えてみたら、
なかなか難しい事だと苦笑いするしかないから
情けないね。
それでも自分には何かあると知っているかどうかは重要だ。
君の手にはなにそれがあると教えてくれる人に
出会えれば幸せだろう。
そんな人に出会えるかどうかも、
はじめから持っている運なのかもしれないけれど。

「どうすればいいですか」と
焦点のあっているのかどうか不安にさせる瞳で
此方を見据えた少女は問うた。
よく焼けた肌に浮かぶ初々しい微笑みからは
考えの及ばない世界に、
どうやら彼女は生まれ落ちたらしい。
家庭の事や未来の事や、
他者には尋ねにくいし答えようもない有象無象が
自分の首を真綿の如く締め付け始めていることを、
彼女は生まれながらの本能で感じているのだろう。
君の問いに私は君が受け慣れた学校の数学の試験の
答案のように明解な答えをあげられないよ。
それでも私が君の倍の年を生きてきた経験から
ヒントならあげられるだろう。
そのヒントを活かして進むかどうかは少女次第だ。
今活かさずともいつか活かすかもしれない。
ヒントを忘れてそのままかもしれない。
筆圧ででこぼこになった帳面に、
メモをとるなら今だよと促しながら、
私は膝の上に重ねた自分の冷たい指先を意識した。
過去にこの手を引いてくれた人がいたから、
私はここに居るのだ。
私が立っていたのは
目の前の少女のような深淵ではなかったが、
学校と家と公園しか記載されていない
ビー玉のような地球儀の上をウロウロしていた
幼いあの頃は、
世界はそれ以上にもそれ以外にも広がらず
ただただのっぺらぼうだった。
私の冷たい握り締めた掌を優しく開いて、
貴女の手にはこれがあると見せてくれた人々の中には
私は顔も名前も思い出せない人が沢山いる気がするけれど、もう何も思い出せない。

少女よ、君も私を忘れてくれていい。
忘れちゃいけないのは神様は平等じゃないってことで、
君は君の生き方を限られた道具を駆使して
貫くしかないって訳だ。

出掛けに意気揚々と履いた私のお気に入りの長靴が
今となっては滑稽に見えるように
ツマラナイ事を書き連ねる自分だって
3秒後にはどうなるか分からないから、
私は私で、君は君だ。
お互いに幸あれ。

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