私が植えた桃の樹が大きくなったから、
初めていっぱいお花をいけたんですって。
あの日、あの時、あの私を、
木の下で自信無く笑うのを置き去りにしてきたのに、
花は満開になったのね。
明日旅立つ若い娘を見送るの。
雑踏の中バスの車窓から手を振る娘に微笑んで、
これから大丈夫だって知ってるから
背中までは見守らずに立ち去るの。
大丈夫じゃないのは私だけ。
いつの間にか、花は咲くし。
いつの間にか、人は老いる。
いつの間にか、誰かとすれ違って。
いつの間にか、誰もが独り。
見えない星を目印に歩くのに何時から慣れたんだろう。
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