湯島臥牛さんの園芸日記
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湯島臥牛さん  東京都
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知ってる? 多肉の「ミズゴケ栽培」

2017/10/11
知ってる? 多肉の「ミズゴケ栽培」 拡大 写真1 知ってる? 多肉の「ミズゴケ栽培」 拡大 写真2 知ってる? 多肉の「ミズゴケ栽培」 拡大 写真3

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今から50年も前、こちとらぁまだガキの時分。

下町の薄暗い路地の奥の木造の家に、一人暮らしの小っちゃな爺さんが住んでた。

小学校低学年のこちとらが小さいと感じるくらいだから、よほどのチビだったのだろう。


そのサマジイ(爺様)は偏屈でいつも不機嫌、子供の眼から見ても近所中から嫌われてるのが分かった。
挨拶はしない、気に入らないとすぐ声を荒げる、誰彼構わず怒鳴りつける、人が通りがかると戸をピシャッと締める。

こちとらまだ子供だから、家族がどっかにいるのか、元は何をやってたかなど考えもしねぇ。
ただ、物ごころ付いた頃にゃそこに住んでて、人の顔を見るたびいつも悪態をつくジジイだった。


その家の庭はいちばん奥まった所にあり、悪ガキどもがしょっちゅう近道に通り抜ける。
その一角の向こう側へ出るのには遠回りしなくて好都合だからだ。

爺さんに気付かれると、いきなり家から飛び出して来て首根っこをつかまれるわ 引っ叩かれるわで、そこを通り抜けるのにはかなり勇気が要る。

まぁでもそこは悪ガキ連、すばしっこく逃げて「あっかんべぇ」をしたりからかったり。おいらなんか石を投げ付けたりしたものさ。
「やんな」って言われるとワザとにやりたがる、そこがイタズラ小僧の面目躍如たるとこ。


ある日、例によって格子戸の脇から家と家の隙間を通って庭へ出ようとしたら、板壁にしつらえてある植木鉢を置いてる棚が眼に入った。

子供だから盆栽なんかにゃ興味はねぇんだが、その中に肉厚の葉を二方向へ行儀よく広げてる小っちゃな植物があった。

それまで見た事のない物で、その異形さに眼を奪われて思わずジッと見入ってしまった。


すると、とつぜん後ろに人の気配を感じて振り向くと、爺さんが黙ってツッ立ってる。

一瞬、とっ捕まって殴られると思って身構えたが、不思議なことに爺さん顔が怒ってねぇんだ。

不器用に顔をほころばせ、無理にニッコリして話しかけて来た。

「どうだ? 変わってるだろう」

いきなりの事で、おいらどう言っていいか分かんないんでとりあえず侵入をごまかすために、

「サボテンなの? 」って聞いてみたら、

「そうだな、サボテンの親戚みてぇなもんだ」と爺さん答えた。

今思い出してみるとそれはガステリアの臥牛。

土の代わりに枯草のような物が鉢の中に詰め込んである。

「コレ何? 泥は入れないの?」

「土は入れねぇんだ、これだけで育つんだぞ」

それは、今思うとミズゴケだった。



キョービの若けぇ園芸専門家は知らねぇだろうが、昔は観葉植物は鉢土を用いずミズゴケで植え込むのが栽培法の主流だった。

現在でも、春蘭・寒蘭などの東洋蘭の鉢土の上へ、空中湿度を上げるのと土の急激な乾燥を防ぐため「マルチング」として敷く。

ガステリアの多くもミズゴケ栽培されてて、「玄人(くろうと)」と自他共に認める栽培家は臥牛や子宝を植えるのにみんな採用してたくらいポピュラーだったんだ。

今でもたまに着生ランや石斛(せっこく)を植えるのに使ってる人を見る事がある。


「乾燥を好む」多肉植物のガステリアに使えるのか?って驚くのは素人の浅はかさ、ガステリア・ハオルチアあるいは月下美人・孔雀サボテンなどの「森林性サボテン」の根は着生ランと性質がよく似通っていて、ある程度の空気の流通があるのを好む。
多肉植物はなんでもかんでも砂漠に生えてるって思うのはマチガイ。

こちとらも40年前にミズゴケで、あれはたしかダルマ臥牛だったか、仔吹きして増えたのを何鉢か栽培してた。

あの爺さん、ほかの盆栽や万年青・東洋ランなどにも肥料として油粕(あぶらかす)を甕(かめ)の水に溶いて腐らせ、水で薄めてやってたのを思い出し、「完熟油粕」を砕いて水に溶いてパチンコ玉くらいの大きさに丸め鉢の隅に置き肥えとして置いてた。


ミズゴケで栽培すると臥牛の根張りが良く土で栽培するより成長が早い。
また逆に、ミズゴケで栽培してたのを鉢土へ降ろすと急に成長が緩慢になる。これは昔の専門書にも記してあった。


ってなわけで、今回 秋の植え替えでガステリア・臥牛の子をハズしたのでそれをミズゴケ栽培してみようと思う。

ミズゴケはホームセンターや大きな園芸店へ行きゃぁ乾燥してパックになったのがたいてい置いてる。


【写真左】買って来て何年目か忘れたが、ウチのフレームの片隅にいつも置いてある「ザラ肌ダルマ臥牛」


【写真中】旧来の大型臥牛やH.スプレンデンスと共に植え替え時に子をハズした。
カッターやハサミで切るより手で慎重にもぎった方がダメージが少ない。

【写真右】ぜんぶ一鉢に寄せ植え。表面が乾いたら軽い「腰水」と上からの霧吹きを欠かさないのがコツ。


これで立派に栽培できるんだよ。

ミズゴケに含まれた水は「弱酸性」を呈する。

肥料はほんの少量の置き肥えか、ごく薄くした水性肥料をやる。


そもそも、ハオルチア・ガステリアは肥料をやるより、遮光した軟光線と豊富な水やりで育ってゆく。
動物が食べ物を口に入れて消化し栄養を吸収するのとはメカニズムがちがう。

肥料をやるのは、人間に例えりゃ「ビタミン・ミネラル補給」に近い。
エネルギー生産と体作りの主体は光合成なのである。

光合成は水+光+二酸化炭素で行われる。

肥料は触媒(しょくばい)と考えてほしい。与えすぎると害になることを肝に銘じておくれ。

人間の場合だってそうだろ、ミネラルの塩分・鉄(水に溶けた)・カルシウム・マグネシウム・銅・亜鉛などは身体に絶対必要だが、大量に摂りすぎると障害を起こす。

ビタミンだって同じで、脂溶性ビタミンの過剰摂取は重い病気になる場合がある。水溶性もやはり摂り過ぎは胃腸に障害を起こす。

前の日記にも書いたが、植物の場合、病気どころか一発で枯れることもしばしば。

人間に必須のビタミン・ミネラルも、植物の肥料も、「微量」だからこそ有効に働くんだ。

ここんとこを勘違いしてる人が世の中にゃゴマンといる。

園芸家はこころすべし。


さぁて、どのように発根して育ってゆきますか、結末を御覧じろ。




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みんなのコメント(14)

臥牛せんせぇ~、質問でっす手(パー)

私も実は・・・サマジイと同じく芽臥牛ファン
なのですけど。。。

臥牛先生は、どのくらいの感覚で臥牛に波お水やりを
されておられますか???

私は、多肉植物用の土に植えているのですけど・・
枯れたら怖いので4週に1度しか、あげていません。
でも、もう買ってから3年経ちます。元気です。
芽子株も横から増えてきてます。

返信する

臥牛をば、肉厚に見映えよく作るコツをお教え致しまする。

まず👂に🐙でしょうが、植え替え時に白い新根を絶対に乾かしたり傷めたりしないこと。

茶色に変色した根も芯は生きてることがあるので、明らかに腐ってる根以外は、あたかも赤ン坊の内臓にでも触れるようにソフトに、かつ手早く乾かさないように植え替えて下さい。
優秀な外科医がオペを行うイメージですね。

よく先に鉢から抜いてから、培養土を調合するせっかちな段取りの悪い人がいますが、行き当たりばったりの栽培は最もダメです。
計画を立て全ての作業をスムーズに進めるようにします。

🌵🚿 水やりは、その植物により、鉢の大きさ、培養土のプロフィール、休眠期か生育期か、植物の好不調、天候・気温・湿度、通風の有無、設置場所、日当たり・遮光・半日陰か軟光線か、などにより、何日に一度とかは言えません。
その臥牛自体を手に取らないとどうこう言えないのです。

しかし大雑把に云うなら、これからの生育期は、鉢の用土の表面が乾いて来たら早め早めに水をやって下さい。

よく専門書で「鉢底から流れ出るくらいタップリと」と表現してますが、こちとらに云わせりゃそれじゃ足りない。
数年も植え替えを怠った鉢内は水の通り道が決まってしまってて、せっかくの灌水が用土全体に万遍なく行き渡らないことがあります。

腰水をお勧めします。
それも鉢底から1/3くらい浸けてすぐ引き上げ、後は鉢際に大型スポイトで何ヶ所かタップリ水を流し込む。
生育期のピークなら心配要りません。臥牛は滅多な事じゃ腐りません。
それよりも生育期に水切れさせる方がマズい。葉が薄っぺらく貧弱な株になります。

それと子を付けたままじゃ葉が肉厚にゃなりません。
植え替え時に慎重にハズして、この日記にあるように独立させて下さい。

花梗も出て来たらすぐに摘み取って下さい。
開花のエネルギーと栄養分を葉に回して下さい。

厳しい栽培法ですが、これくらい徹底すると標本球のような臥牛が出来ます。

色々とありがとうございましたm(_ _)m
とても参考になります。
植え替え時は、焦らずによくよく考えながら
ゆっくりやってみようと思います(^_^)v

お安い御用ですよ。

多肉植物を栽培してる人の多くは、どこかサボテン🌵の植え替え法が頭の片隅にあり、根を整理したがる癖が染み付いてるのです。
小生はいつも口癖のように言ってますが、サボテンと多肉植物(とくにユリ科のハオ・ガス)とでは根の性質がまったく違うということです。

ハオルチア・ガステリアの根は、どちらかと言えばランの根に近いということです。
だからこそミズゴケでも立派に育てられる。

たしかに、ハオルチア・ガステリアの葉は多肉質ですが、それは乾季を吸水無しで乗り切るためのもので、それは南アという地域の「否応なしの試練」なのです。

しかし、だからと言って、日本に生まれ日本の栽培家で育てられる環境にあるのに、何もそういう要らざる試練を与える必要はありません。
適温、適湿で伸び伸びと育ててやれば良い訳で、それが美しい苗を作り出すことになるのです。
花梗を摘み取る事と矛盾するようですが、決してそうではありません。
それは「一種の剪定」と考えて頂ければいいのです。

小生はハオルチアとガステリアを「少しだけ乾燥を好む観葉植物」と考えることにしています。

もちろん、サボテンやメセン類とまったくかけ離れた植物だと割り切るのにかなり苦労しましたがね。

こんばんは湯島さん♪
早速じっくり読ませて頂きました!
旦那さんの文章、こりゃちょいとした小説の一節みたいでスゴいや(失礼ながら江戸っ子弁で)

書かれている通り、昔は頑固な偏屈じじいが一人は居て、周りからは「アンタ!変人だから寄るんじゃぁないよ!」とか近所のおばちゃんがよく言ってるのを耳にしました。
…が、どういう訳か私はそういうおじちゃんやおじいちゃんと仲良くて、幼稚園児の私の友だちでした。
同じ幼稚園の子(今から思えば○○ガキ)たちじゃ話し相手にもなんなくて、おっちゃんたちの方がよっぽど色んな事を教えてくれて毎日行く先があって楽しかったです。
かかりつけの内科の先生が植木をやってらして、後から母に聞いたら『アンタみたいなチビに可愛いからって、一鉢8万円もするような物凄い技術の要るサツキをくれたんだよ?まったくもう』なんて思い出。
確かにミズゴケ、油粕そういう体裁の植木鉢が青いライトのガラスケースや待合室の植木にありました!
母もゴムノキをとても可愛がっていて、庭に数え切れない程の植木鉢があっても、私は全くゴムノキ以外興味なしでしたが、万年青の青い鉢にミズゴケが敷いてあったのを覚えています。
昭和40年代の栽培方法や定説、物資の存在が時代だったのでしょうねぇ~。
資材が輸入品から学んだ日本製の『ハイテク』になった現代での育て方はどこかイビツなのかもしれないと、湯島さんの記事を読んで改めて思いました。
恐らく旦那さん(湯島さん)は、うちの母と同じ世代だと思います。
小石川植物園の園長先生とお話してるみたいで、記事を読んで勉強になって、楽しいです。
西武がそうなってるのをテレビで見て知り、ああ遊園地なくなっちゃったんだねぇと時代の移り変わりを見たような気がしました。
何せ今は、ばあちゃんの故郷の鹿児島に居ますんでねぇ(笑)
ではでは✨

返信する

へ〜、婆さんのお里がね〜。
で、今かごっまに住んでなさる。
ウチで長年飼ってる多肉動物(カミさん)が鹿児島の出なんです。
こいつがちっとも言う事聞かなくって。🐗💢

なんか分かるなぁ~😋
東京人の頑固さとはちょっと違って、何でそこで意地張んのよ!?
って、ちっとも分かんねぇーばっかしアハハハ!

人間も植物も結構気難しいし、気がちっちゃいんだか強いんだか
今時言葉で言うんなら「意味分かんね」。
でも似てるのは、気前が悪い奴は粋じゃないって気質。
今さら人生やり直し、人間観察してんの。
「バカじゃないの?」って言うと、母が『じゃない?じゃなくてバカなの』ばっかし。
人間が面白いから、人間嫌いのクセに人間大好き💕

返信する

かごっまは大変でしょ。
桜島・新燃岳の灰(へ)と黄砂・PM2.5、襲来する台風、韓国語と同じくらい分からねぇかごっま弁。
こちとら10日で懲りました。

お返事ありがとうね😃
お墓参りで35年以上毎年来てたけど、住むのと滞在じゃ違うね汗
大変!
この頃の人たちは分かる言葉(日本語)で話してくれるから分かるけど、地元育ちの人の言葉は気を抜くと全然分かんない(T-T)
ここは外国だわ~☺️
犬走りっていう敷地の周りに何か黒い砂、窓ガラスが磨いても曇ってる。
それ全部、灰だ!って気づくまで2年掛かったよぅ(笑)
親の都合で引っ越した名古屋は全く『住めば都』にゃならんかったのに、不思議と同じ閉鎖的封建的って云われるここ鹿児島は第二の故郷みたい。
何か余所者って思われてても、誰かかんかが『どないして?』と声掛けてくれる。
かごんま、エエとこ💕
旦那も懲りずに、来やったもんせ~😋

返信する

もひとつ聞いて!
昨年長女が骨休めで来て、桜島見に行こう!って言って初めて二人して見て来たの。
ここから60km先。
「ありゃナンだ?」と対岸から見たら、目が痛いの何のって、ドーン!とそれが桜島。
お姉ちゃんが『だってアタシ火山観たことないもん!』
アタシ「アタシだってないよ!」
笑っちゃった。
それぐらいビックリして認識出来なかったよ~

こんばんは。。

最近そういえば、水苔で、ってなかなか見ない気がします。
なるほどですねぇ、根っこに酸素(空気)、流れですね。。
うまいこと整えてやろう、と大袈裟に思わずに、
常に頭の片隅に置いて付き合おうと思います。(マジメ・・・)

返信する

水苔栽培については重大な欠陥が判明致しました。
詳細については【新・多肉コミュ】のトピックにてご確認くださいまし。

https://www.shuminoengei.jp/?m=pc&a=page_c_topic_detail&target_c_commu_topic_id=4186

さすがですね、楽しく又勉強しました、懐かしく読ませてもらいました。

返信する

ダイコン侍殿いらっしゃい。

戦後東京下町は、映画『3丁目の夕日』のシーンそのままの時代でした。

あの頃は良かった。
今のように言動の全てをまるで重箱の隅を突っつくような"人民裁判"的なSNS炎上などありませんでした。

素朴・善良な市民と、そうでない素行不良な人々が混在・共生して、多様化した世の中が楽しかった。
言いたい事を言いやりたい事が出来た。
野良犬・野良猫も安気に暮らしてました。

日本人はいつの間にこんなに劣化してしまったのか。
まるで安物の電卓のように杓子定規にしか物事を考えられなくなってしまった。

技術は進化したが脳内は劣化してます。
融通の利かないマニュアル脳。

こちとらもう年ですからどうでもいいですけど。
この国の未来がどうなろうとも。

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