紙魚淑女さんの園芸日記
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紙魚淑女さん  東京都
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菊娘に羊羹を

2012/09/09
菊娘に羊羹を 拡大 写真1 菊娘に羊羹を 拡大 写真2 菊娘に羊羹を 拡大 写真3

今日という日とこれから重なるの記憶の記録。

恐ろしいと思う程、記憶の良い人を知っている。
F女史としよう。
世界を探せば、天才やら秀才やら異才やら奇才やら
色々な人がいるらしいが、
私の周囲の人々の中では彼女の記憶力が一番である。
なんせ、自分と他人との会話以外での言葉すら
耳で聞き分けて、更に記憶しているのである。
「あの時、私が誰それさんと話してた時、
   貴方はこう言ったでしょ。」
幼い頃に数カ月だけ暮らした街の配置を覚えている。
「私の家を出て、左隣から**さん、??さん、
3代続いた豆腐屋さん、魚屋さん、畳み屋さん・・・・・・・」
といった具合。
読んだ本、新聞、誰かの言葉、幼い頃に口ずさんだ歌。
一体どれだけの物事を記憶しているのか。

そんな彼女の巨大な情報管理室の中に、
私の誕生日が重陽の節句だという情報も、きちんと収納されていた。

朝、職場で1人作業していたら、ガラスを叩く音。
何事かとドアを開くと、F女史が立っていた。

「1人ね。私、花束持ってないから、菊娘にこれあげるわ。」

私以外に人が居ない事を確認して、
さっと手渡された包みを受け取ると、
彼女はさっさと去ってしまった。
パン屋の袋の中を覗きこんだら、羊羹が1棹入っていた。

虎屋の「夜の梅」

四角いものは四角いといい、
真っ直ぐなものは真っ直ぐでなければならず、
一度聞いた事はニ度と忘れない。
何が正しく何が間違っているかを最後まで追求するから、
彼女の正論は常に真っ直ぐで、聞いていると時々、
胸が締め付けられるような思いをする。
けれど、本当は傷つきやすくて、
自分の発した言葉が誰かを傷つけた事すら、
忘れられずにずっと悔んでいる。
そんなF女史がくれた、羊羹一棹。

羊羹が甘い事は誰だって知っている。
けれど、これは、他の味もする気がする。

羊羹を片手に思いにふけっていたら、
今度は旧友がわざわざ訪ねて来てくれた。
手渡されたのは、ずっと探していた絵本2冊と薔薇の花一輪。
血のような文字が「HappyBirthiday」とのたうつケーキの
カードに書かれたメッセージは、
「オンナもキノコもちょっと毒のあるほうが魅力的だ。」

昨夜はポストに小包が一つ。遠く離れた母からであった。
中には手拭い2本と白粉1つ。
手紙には「貴方、最近油っぽいから」と書かれていた。

隠せる処は、手拭いで隠して
隠しきれぬ処には、白粉を塗って、
味を出せと言われれば、ピリリと毒を効かせて
だけど、気付けば何処からともなく、梅の香り。

そんな風であれと、誰ともなしに言われた気がした秋空の下。
今日は、お祭りの日らしい。
遠くに聞こえる太鼓や笛も、きっと私を祝う祭囃子であるな。
今までにだって、何かしらあった。これからだって何かしらある。
羊羹も人生も、甘かったりしょっぱかったりするのだろう。

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みんなのコメント(2)
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  • 2012/09/09

こんばんは。

お誕生日だったんですか~。
おめでとうございますわーい(嬉しい顔)

いくつになってもお祝いしてもらえるのはうれしいですよね。

そういえば最近は友人に誕生日祝いを贈ってないなあ。

返信する

こんこ様
有難う御座います。
今まで様々な物を頂きましたが、羊羹は初めてでした。
あまりの斬新さに感動したので、書いてしまいました。

誕生日、自分で言うのも自覚するのも恥ずかしい歳に
なりましたが、それでもお祝いの言葉を頂戴するのは
嬉しいものですね。

お友達にカード一枚でも。
大好きだけど出すのを躊躇ってたカードなどを使うと
何故か気分爽快に私はなります。

有難う御座いました。

返信する
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