薄墨を流したような空は明る過ぎて、星も月も見えない。
回遊魚の如く、人の流れを突き進みながら、ふと思った。
どうして、こんな処に居るんだろう。
新宿。
この夜空は、私の夜空ではない。
赤いお化けの目玉のような伊勢丹の印の下に、
私を手招く出窓があった。
こちらへいらっしゃい。と妖艶な声が聞こえた気がする。
オランダの夜のアムステルダムには、
蝋人形のような肌をした女達が並ぶ出窓の通りがあるらしい。
大きなショーウィンドウの中は、
茸をモチーフにしたディスプレイだった。
美しい色合いと、怪しげな形。
ゆらりゆらりと蠢く照明と、足早に通り過ぎる人影のコントラスト。
「これはまっただ人体のようなくさびらじゃ。
えい、ちと抜いてみよう。エイ、エイ、エイ。エイ、エイ、エイ。 」
ああ、なんて美しい幻想の世界。
夢中でシャッターを切りながら、次へ次へと出窓を覗く。
ここに住めたら、なんて幸せ。
「行者は加持に参らんと、役の行者の跡を継ぎ、
金胎両部の峯を分け、七宝の露を払いし篠懸に、
不浄を隔つる忍辱の袈裟。
赤木の数珠のいらたか、では無うて、
むさとしたる草の実をつなぎ集め、数珠と名づく。
この数珠にて一祈り祈るならば、などか奇特のなかるべき。
ボロンボロ ボロンボロ ボロンボロ。」
山伏の加持祈祷が頭の中に響いて、夢から覚めた。
新宿三丁目交差点。
ここは、私の街ではない。
新宿伊勢丹本店 彩り祭
ショーウィンドウディスプレイを見て。
2012年9月14日
グラフィックデザイン:プシエメク・ソブツキ
写真:鈴木安一郎
硝子細工:青木美歌
狂言「茸」より
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