新宿御苑 新温室
2012年11月5日
・2012年11月20日 リニューアルオープン
温室が優雅さを失ったのはいつからだろう。
装飾的な鉄骨に支えられた、脆い硝子板の集合体。
異国の植物達を、無理やりに生き抜かせる為の
後宮のようなその建築物には、
まだ見ぬ花を追い求める人々の野望と浪漫が詰め込まれ、
それを覆い隠すように茂る大きな葉が、
やるせなさと物憂げな気分を漂わせる。
世界中をプラントハンター達が駆け巡り、
無慈悲な手で植物をかき集めては本国に送り付けた時代の温室には、優美さと退廃的な雰囲気があると私は思う。
英国キューガーデンのかの有名な硝子温室に漂っていた空気の中に、
名古屋市立東山動植物園の朽ち行く温室の無情さの中に、
それを私は確かに感じた。
新宿御苑温室。
健康的な美しさのある温室である。
退廃的ムードなどどこにもない。
育ち盛りの青年の、
溌剌とした気力のようなものに満ち溢れたフォルム。
三角形と長方形の硝子の組み合わせが、現代的だ。
植えつけられたばかりで、まだ葉の伸びきらぬ植物達が
これからの生長の為の生命力を発散して、
健康的なムードをさらに掻き立てる。
植物のこれからが楽しみである。
温室はどのようにして生き残るべきか。
建築技術は進歩し、気候は変動する。
各都市に必ず一つはあると言ってもいいほど、
日本全国には温室が溢れている。
計画から完成、そして取り壊すまで
恐ろしく金を食うこの建築物に、夢や浪漫を感じる人種は
もはや限られた趣味人のみである。
ただ、見せるだけでなく、何かに活用出来る。
海外での温室を使った試みは、
どのような成果をあげているのだろうか。
一つの活用方法だけではなく、二つ・三つと利用できねば
勿体ないという考えは、いかにも現代的だ。
心のどこかで、その空間をただ楽しむ事が出来ぬのは
貧困のなせる技だと感じる私は、ひねくれているのだろう。
しかし、一方で、何らかの活用方法が一般的となるならば
それを甘受したいとも思う。
たぶん私は、未だに、
硝子の小部屋の奥に広がる熱帯雨林や砂漠の中に、
浪漫が溢れていると信じて、見果てぬ夢を追っている。
青年のうんざりするような爽やかさに眉をひそめて、
雨が滔々と流れる硝子の向こうに新宿の街並みを眺めた。
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