かたつむり。さんの園芸日記

ここからが本当の実験

2021/07/24
ここからが本当の実験 拡大 写真1 ここからが本当の実験 拡大 写真2 ここからが本当の実験 拡大 写真3

 
※ ほぼ自分用の記録。

 2年半前からやっている「すっぽんぽん栽培の窒素源としてペプチドが有効かどうか」の実験の新局面。ようやく、ようやくです。ようやく、本当のスタートラインに立てました。


【画像1】ブルームーンの子株、ついに独立!!

 6月14日付の日記
https://www.shuminoengei.jp/?m=pc&a=page_mo_diary_detail&target_c_diary_id=829439
で、ブルームーンに生えてきた子株について、親株から切り離せるようになるのは「たぶん来年の夏以降だろう」と予想していました。それが、思ったより早く、子株自前の根がどんどん伸びだしたのです。そこで、7月24日、親株から切り離しました。
 子株を立派に育てることが目的なら、もっと大きくなるまで親株につけたままにしておきたいところですが、実験のためには可能な限り小さいうちに親株から切り離したかったのです。
 この子株はただの子株ではありません。長期にわたるコラペ栽培を続けている親株から生まれた子株であることに重みがあります。


【画像2】体重記録用のフォーマットを変更
(主に水やりの前後に計量しています。小刻みな上下振れは水やりでの吸水量の目安となります。株の成長を見るには、下側の水やり前の重さをなぞると分かり易いでしょう。)

 以前は植木鉢ごと計量した体重をそのまま記録していました。人工的な設置物(植木鉢+固定具+ビニタイ)の重量が総重量のうちの幾らを占めているのかが不明だったためです。まだ1つレナンセラが残っていますが、他の株は、この夏までに一回以上の植替え作業をしたので、そのついでで設置物重量が判明しました。
 これで植物の正味の体重を算出できるようになったので、設置物を変更した時にはそれを反映できて、鉢ごとの計量値を入力すると自動的に正味の体重を算出して、その正味の体重でグラフを描いてくれるように、記録用のフォーマットを改良しました。
 その新フォーマットに過去データも貼り付けて、計量を開始した昨年8月4日からの体重を1つのグラフにまとめたのが【画像2】です。画像はブルームーンの親株 と Phal. pulchra の小苗 の記録で、両株とも2019年の初めからコラペを唯一の窒素源とした栽培を続けています。

 ブルームーンの親株は、新しい部分が成長しつつ古い部分が枯れ落ちていく成熟株なので、長期的に見ると成長も衰退もしておらず、この栽培では何年経っても「在庫使い回し説」が否定できません。
 だから、独立させた【画像1】の子株を大きく育てることが可能かどうかをこれから検証したいわけです。

 pulchra は、親株由来の根が枯れ進んでいるうちは体重が減少傾向でしたが、親株由来の根が全部枯れ落ちて以後は、ゆっくりとですが成長しています。
 でも、こんなノロノロ成長では、「一部しか効いてない説」を否定できません。
 コラペには 15% 程度の窒素が含まれていると推定されますが、15 のうちの 1 しか効いてなかったとしても、この程度のノロノロ成長なら可能でしょう。ここで証明したいのはその 15 が額面通りに効くことですが、その証明のためには、そもそも成長が早い植物でないと、実験台として使い物になりません。
 前にもお話ししたように、ファレノプシス類に関しては、コラペが効く効かない以前に、すっぽんぽん栽培自体がうちの環境では難しいのです。続けられる限りは続けてみるつもりですが。

 その点、ブルームーン(バンダ類)に関しては、自分の栽培環境・栽培方法でもまともに成長できること(つまり実験台として使い物になること)が確認済みです。
 やはり、【画像1】のブルームーンの子株が、これからどうなるかにかかっています。
 楽しみでもありますが、これまで2年以上続けてきた研究があっさり否定される可能性もあるので、怖くもあります。


【画像3】植物はみんなが思う程おちょぼ口じゃない

 各種窒素化合物の「大きさ」を表すイメージ図を作ってみました。
 イオンや分子が「質量に比例する体積を持つ球体」だと仮定した時の、その球体の大きさの比を示した図です。図中括弧内の数値が各物質の式量(質量比を示す数値)です。
 水色は化学肥料の成分です。緑色はアミノ酸で、小さい方代表のグリシンと大きい方代表のトリプトファンの大きさを示しています。タンパク質は「小さめ」を 4000、「大きめ(背景の大きな灰色の球)」を 20万 としていますが、実際にはもっと小さいものも大きいものもあり、これは「ほとんどがこの範囲に収まる」という目安です。

 従来の園芸の常識で言うところの、植物が(微生物による分解を経ずとも)直接吸収可能な窒素源は、緑色の球までです。(尿素に関しては、多くの植物で葉面からの吸収が可能だとされているため、ここでは直接吸収可能なうちに含めておきます。ただし、尿素の「根から」の吸収については、肯定的な情報がなく、今のところ「できない」というのが通説のようです。尿素は土に染み込むと微生物の働き等によってアンモニアや硝酸に変化して、それで初めて植物が根から吸収できるようになると考えられています。)
 それに対して、私が2年半前から実験しているのは、「黄色の球が食えるのか?」です。
 俗世間では緑色の球までと考えられていますが、学術上の知見としては、桃色の球まで食えるはずなのです。
 ただ、植物が根の細胞でエンドサイトーシスによって巨大分子であるタンパク質を「食べる」ことに関しては、植物の種類によってその能力の強弱が大きく異なるようなのです。
 それで、植物のその能力が、着生蘭のすっぽんぽん栽培で実用レベルで活用できるのかどうかを試しているわけです。

 一般的な配合液肥は、植物が土に植えられていることを前提に作られているため、燐酸とカリが多めに入っていますし、窒素の多くが(微生物による分解を経なければ根から吸収できない)尿素の状態で入っています。
 また、化学肥料では硫酸などの抱き合わせ物質も過剰になりがちです。(それは土植えでも問題なのですが、すっぽんぽん栽培ではなおのこと問題です。)
 すっぽんぽん栽培では、良くも悪くも、土からの影響を受けないはず。それなのに、土植え前提で配合された液肥を与えるとなると、必要量の窒素を与えるためには、必要量の何倍もの大過剰の燐酸・カリ・硫酸などを与えることになりますから、それが余計な負担になってしまうと考えられるのです。
 ご飯と梅干の量が逆転した「逆日の丸弁当」を想像してみましょう。それでご飯をお腹一杯食べようとしたら、大量の梅干が余ってしまいますよね。土植え向けに作られた「普通」の配合液肥をすっぽんぽん栽培に使うということは、そういうことなのです。
 だから、余計な抱き合わせなしに窒素だけ与えることがそこいらで容易に入手可能な材料で可能な方法を模索していて、行きついたのが、現在試しているコラーゲンペプチド(ここではいつもコラペと略している)なのです。
 逆日の丸弁当にご飯を追加することで普通の日の丸弁当に直す実用版の方法では、窒素源の7割程度がコラペになるようにしています。その一方で、コラペが本当に窒素源として有効なのかを確認するためには、コラペを唯一の窒素源とする栽培も試す必要があります。それを上記のブルームーンを実験台にして一昨年から実験しているのです。


こちら
https://ux.getuploader.com/k181009/
にアップロードしているファイルを1年2か月ぶりに更新しました。
 テキスト版で【画像3】の図を加えたことと、計算表で体重記録用フォーマットを【画像2】の作成に用いた新バージョンに差替えたことが主な変更で、その他はマイナーチェンジです。

「ここからが本当の実験」関連カテゴリ

みんなの趣味の園芸にログイン/登録する

※コメントの書き込みには会員登録が必要です。

会員登録がお済みの方は

会員登録をすると、園芸日記、そだレポ、アルバム、コミュニティ、マイページなどのサービスを無料でご利用いただくことができます。

定期購読
投稿募集中 from テキスト編集部
見て見て!お気に入りの花

見て見て!お気に入りの花
自慢の植物・庭の写真を募集中!

みんなのマルシェ

みんなのマルシェ
自慢の畑・野菜の写真を募集中!