未定航路｜園芸日記by紙魚淑女｜みんなの趣味の園芸

写真1

写真2

写真3

蒼天は丸いこの星のほんの薄い部分のみに張られた
大気の覆いであると、どこかに書かれてあった。
機内からみる空は夕暮れから夜へと変わっていく。
私の曇天と雷雨の如きご機嫌の色々など雲上に出てしまえば
笑止する程の乱れである。
私を乗せたプロペラ機は兎の跳ぶ海を斜めにしながら
日常へと飛び立った。
父は私に
強く言いはれる程の正しさなど人は持ち合わせていないのだから、
無邪気に慎ましく愛らしく居れと言う。
頷きながら私はそれでも、
つり上がった眦を下げることが出来ずにいる。
我儘を過ぎて凝り固まった自己と嘯くこの鎧を脱ぐのは出来るのだろうか。
いつの日かこの混沌の雲の中を抜けて何処へ着陸出来るのだろうか。

夜の街の空を誰かを乗せた飛行機が通過する。
ジェット音を聞きながら、遠い何処かの街角を思う。
たぶんそこにも私がいる。
同じようにへの字の口元で、
同じように決して笑うまいと思いながら、
同じように腹の底の怒りに燃料をくべている。
ゴゥゴゥと唸る音はジェット音じゃなくて
炎の燃え上がる音かもしれない。

もう負の感情を原動力にして、前に進む事をやめたい。
凪の中穏やかに居られるとは限らないと知っているけど、
それでもこの腹の底の原子炉に
伝えようのない想いとか、
決して満たされない望みとか、
冷え冷えとした哀しみとかを投げ込んで
捨て場のない燃え滓にしたくない。

管制塔からの指示は私に届かない。


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