かたつむり。さんの園芸日記

ハー゛ン ダ ◆逆さ栽培 (2)

2022/02/12
ハー゛ン ダ ◆逆さ栽培 (2) 拡大 写真1 ハー゛ン ダ ◆逆さ栽培 (2) 拡大 写真2 ハー゛ン ダ ◆逆さ栽培 (2) 拡大 写真3

 
 一昨年11月から昨年7月まで上下逆さまにして栽培していた ダンバ 改め バンダ の続報。

 【前回の話】
https://www.shuminoengei.jp/?m=pc&a=page_mo_diary_detail&target_c_diary_id=842863

 (普通は花芽が出たら喜ぶものなんでしょうけど、これは「花芽が出たらガッカリ」という実験ですよ。)

 昨年7月には、「根がこれだけ枯れたのに、葉の成長速度は正常を保っていて、よかったよかった」みたいに言ってましたが、まだ、続きがありました。それは「成長」というよりも「徒長」でした。普通なら成長が止まる長さになっても葉の伸長が止まらず、ぐんぐん伸び続けて、やたらと長~い葉になってしまったのです。
 【画像1】(葉に付した数字はその葉の発生年月)

 考えてみれば、そりゃそうなるわ、という現象です。
 植物は、茎や葉は上向きや光を受ける向きに伸ばし、根は下向きや光を避ける向きに伸ばします。このように植物が「上下」や「光が来る方向」をあたかも認識しているかのような育ち方をするのは、主にオーキシンという植物ホルモンの作用によります。オーキシンは重くて強光下で分解するため、植物体内では「下の方・陰になる側」で濃くなりがちで「上の方・光が当たる側」で薄くなりがちです。このオーキシンの濃度勾配により、植物は上下や光の方向を認識することができるのです。茎葉と根とで逆の反応をするのは、茎葉と根とでオーキシンに対する感受性が異なるためです。(植物体内でそういう作用をする物質のことを総称的にオーキシンと呼ぶのであって、オーキシンという名称の化合物があるわけではありません。)
 例えば、茎が光が来る方向に曲がって伸びるのは、陰側のオーキシン濃度が高くなることで陰側の組織の伸長が促進されることによるものです。
 逆さ栽培の後で葉が徒長したことについては、頂芽で作られたオーキシンが(本来は茎を伝って株の下に向かって移動するところ、逆さまにされていたせいで)新葉の方に降りて行ったためだと考えられます。

 逆さ栽培をやめた後でそんな余韻が半年も続いたのは意外でしたが、新葉が徒長したことは理論通りの現象なわけです。(オーキシン自体が半年間も上の方に留まり続けたとは考えにくいので、オーキシンがスイッチを押したことでその後の徒長が逆さ栽培終了時点で既に確定していたのだと考えられます。)
 「脇芽を出させる」という逆さ栽培の本来の目的に関連して昨年7月の日記でお話ししていた「頂芽優勢」というのも、オーキシンが関与する現象の一つです。なので、オーキシン云々で理論通りの副作用(新葉の徒長)が出たという事実は、好意的に受け止められるものです。


 で、肝心の本題。

 通常このバンダは、葉が1本更新する度に、花芽を1つ出します。通常なら全て花芽になってしまう葉腋の成長点を、脇芽(=子株)にすることができるのではないかと期待して、逆さ栽培をしたわけです。
 その結果、「逆さ栽培をしていた8か月間、葉が2本更新する間に、脇芽こそ出なかったものの、花芽も出なかったので、将来に可能性を残せた」というのが前回(2021年7月)の報告でした。(逆さ栽培開始直後に発生した新葉と花芽は「0個目」としてノーカウント、「その後の8か月間で2本新葉が発生したが、その間に花芽も脇芽も出なかった」ということ。)

 その逆さ栽培の終了後、次の新葉が、なっっっっっかなか出なくて、やきもきしていたのですが、11月になってよ~うやく出始めました。(その後の成長もゆっくりで、1か月で 1 cm ほどしか伸びていません。成長が遅いのは、冬なのと、根がまだ回復途上なのとで、仕方がないことだと思います。)

 そして、ちょうど年が明けた頃、「芽」が出てきました。
 【画像1】の赤字で示した所
 【画像2】拡大

 この実験は、いよいよ、結果を収穫する段階に入って来たわけです。

 経緯を時系列でまとめました。
2020年11月12日:逆さ栽培開始
2020年11月下旬:新葉【20.11】発生 & 花芽発生
2021年5月上旬:新葉【21.05】発生(A)
2021年7月中旬:新葉【21.07】発生(B)
2021年7月16日:逆さ栽培終了
2021年11月上旬:新葉【21.11】発生(C)
2022年1月上旬:「芽」発生(まだ花芽か葉芽か不明)

 この株では通常、花芽発生のタイミングは、新葉発生のタイミングと概ね前後するようです。新葉発生と花芽発生とが一対一にリンクしているものと考えると、2020年11月下旬の花芽発生は同時期の新葉発生とリンクするものだと考えられます。
 その後しばらく花芽も脇芽も出なかったのですが、2022年1月上旬、約13か月ぶりの「芽」が発生しました。この「芽」は何芽なのかまだ判りません。(どうせ花芽だろうとは思いますが、まだ断定はできません。)【21.11】(C)の葉は(冬なのもあって)成長が遅く、この「芽」が出た時点で 3 cm 程度しかなく、「まだ出たばかりの葉」と言えます。
 よって、タイミングについて言えば、この「芽」の発生は、(C)の新葉発生とリンクしているように見えます。
 でも、この「芽」が出た位置については、むしろ(A)の新葉発生とリンクするべき位置から出ているのです。
 (B)(C)の新葉発生とリンクして通常なら既に花芽になっていたはずの位置にある2つの成長点が、逆さ栽培の効果により、まだ何芽にもならずに保留されているというのが現状です。

 今出ている「芽」は、どっちの芽なのか。これが花芽だったとしても、あと2つ残っている「保留中」の成長点が、どうなるのか。楽しみですね~。

 普通、バンダにおいて、脇芽が出るのは、株のだいぶ下の方からのことが多いようです。つまり、花芽になりそびれた葉腋成長点が、何年も後になって、脇芽になるわけです。そのため、現在「保留中」の成長点が脇芽になるとしても、普通に考えたら、何年も先のことだと思われます。
 一方で、こういう普通じゃないこと(逆さ栽培)をした後なので、「普通と同じになるとは限らないじゃないか(割とすぐ脇芽が出るかも)」という期待もあるわけです。


 【画像3】は、逆さ栽培の拷問から解放された後の、このバンダの体重を示すグラフです。
 基本的に、水やりの前後と、体重変化を伴う手入れ(枯れた葉や根の除去など)の前後に計量しています。そのため、ジグザグの線になっています。
 水やり前の体重は、逆さ栽培開始時(2020年11月12日)には 約 68 g でした。逆さ栽培の間に、根の大部分が枯れてしまいました。それで逆さ栽培終了時(2021年7月16日)に枯れ根を除去したら、体重は 約 40 g にまで減少してしまいました。
 その後もしばらくは根の成長が鈍く、体重がほとんど増えない期間が3か月も続きました。
 2021年10月中旬頃から、ようやく本格的に根の成長が再開し、どんどん体重が増え始めました。今月初めの時点で 約 58 g まで回復しています。この春のうちには逆さ栽培開始前の体重に戻れそうです。
 というわけで、逆さ栽培のせいで大ダメージを被っていたこの株の健康状態は、だいぶ持ち直してきました。

 …と思っていた矢先、写真でぱっと見で分かる程ではないものの、冷害を発生させてしまいました。こんなの初めてです。(新葉に小さな水浸状病斑が生じて一見すると軟腐病の初期にも見えたので発見した時には相当ビビりましたが、発生したタイミングと状況、寒さに弱い種類にだけ同時多発的に発生したこと、切除や消毒などの対応をせずにほったらかしといても全く拡大しないことから、冷害だと判断しています。)
 栽培場所では加温していて、この冬は最低13℃以上を保てているので、水やりの時になったのだと思います。水やりは、浴槽にステンレスのワイヤーでできたスノコみたいなのを敷いて、シャワーでかけるなどしてやるのですが、その後、水を切るためにしばらくそこに置いておくのです。その「しばらく」が長過ぎて、冷害が発生したのだと思われます。
 浴室は乾燥のために窓を開けている時間が多いため、気温は屋外と違わない時もあります。それなのに、「ほんの一時置くだけだし、今まで何年もそうしてきて問題なかったし」と無意識のうちに高を括っていました。
 「そういえば、こないだ『寒いな~、あ、雪降ってる』と思いながら、窓開けて2時間置いてたわ冷や汗2
 こういう慣れから来る油断が、大失敗につながることがあるんですね。気を付けましょう。何事においても。

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みんなのコメント(2)

かたつむり。さん、こんにちは(*^^*)

逆さ栽培、ひとまず終了ですね😀

オーキシンですか‥🧐
そう言えばつるバラも横に誘引すると途中から側枝が沢山出ます、さきっぽを下にしてのの字にするともっと出ると聞いたことが有ります。

バンダも自然の状態で着生していたら、支柱も無いし、上の方がクネっとなったりして、曲ったリ下を向いた所に脇芽が出るのかもしれないです🤔

そうだ、単型種でアングレカムディスティカムを育ててるのですが、ちょうどクネっと下向いた所があってそこから脇芽出ています(根は出ていません)

慣れから来る油断‥
私も思う節が有ります💦気を付けます〜〜

これから、バンダの脇芽楽しみですネ、脇芽出ますように!
(^_^)/~

返信する

 ミルキー・ノンさん こんばんは。

 この逆さまにするというアイデア自体は、植物生理学的にはなんてことないアイデアなんですよね。でも、お気に入りの一株で、それを実行に移して、根がどんどん枯れてなんかヤバい感じになりながらも継続するのには、相当な勇気が必要でした。逆さ栽培を終えてからも、根が本格的に成長し始めるのに3か月もかかりましたから、気が気じゃなかったですね。
 これだけやったのだから、是非とも脇芽が出て欲しいものです。
 現在出ている「芽」の正体は未だに不明です。既に 1 cm 程に育っています。いつもならもっと小さなうちから花芽だと分かるようになるものですが、今回はなかなか花芽らしくなりません。かと言って葉芽らしくもないのです。もうどっちでもいいから早く正体を明かしてくれって感じです。

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