胡蝶蘭ふやし放題?(Phal. pulchra)

植物名 コチョウラン(胡蝶蘭)
品種名 Phal. pulchra
地域 広島県 場所 室内 栽培形態 鉢植え
日当たり 明るい日陰 満足度
ジャンル ラン ふやす(挿し芽など)

栽培ストーリー(わたしの育て方レポート)

胡蝶蘭ふやし放題?(Phal. pulchra)

胡蝶蘭ふやし放題?(Phal. pulchra)

作成日:2021/06/15
最終更新日:2022/08/16

 従来、高芽か脇芽の発生という「幸運な偶然を待つこと」が「増やし方」のように言われてきたファレノプシス(胡蝶蘭)ですが、ここで紹介する方法なら、もっと確実に増やせ(ると思い)ます(、たぶん)。ここで活用するのは、デンドロやカトレアなどで言うところのバックバルブに相当する部分です。つまり、植替の時に出る「捨ててもいい部分」から増やせるのです。
 ナゴラン Phal. japonica で確立した方法がファレノプシス属の他種でも通用することを実証し(たいと思い)ます。

 子株が芽吹いて成長軌道に乗れば、それで成功とします。(開花まで育てる用の場所がないので、子株はたぶん適当なとこでお嫁に出します。)

  • 植替えで掘り出した親株

    1

  • 切株の採取

    2

  • 切株

    3

  • 水苔を付けた → 無い方が良かった

    4

  • 水苔は無い方が良かった

    5

  • フタして保湿、時々換気

    6

  • このイボが芽になる?

    7

  • イボちゃんが・・・

    8

  • 枯れた部分を切除

    9

  • まだ生きてます。

    10

  • 今年こそは!

    11

  • 親株の植え替え

    12

  • 新しい切株で仕切り直し

    13

  • 発芽しました!・・・見えないけど。

    14

  • 芽らしくなってきた

    15

  • その頃「浪人生」は・・・

    16

  • 植え付け

    17

  • 素焼鉢を使いたくない人のための植え方

    18

  • 植え付け完了

    19

  • 後は頼んだ!

    20

  • こちらは順調

    21

1.植替えで掘り出した親株

胡蝶蘭ふやし放題?(Phal. pulchra) 植替えで掘り出した親株
 2021年5月28日
 黒線で囲んだ部分を切り出します。
 前年に肥料をやり過ぎたようで、古い根が傷み気味。経験上、こういう根は植付けてもほとんど育たないので、全部切株側に付けることにしました。(本当は親株の方にもっと根を残した方がいいんですよ。)
 古い根を左右に分けてビニタイで結束してあります。こうすると芽が出る所(葉の跡)を見失うのを防げます。(この株には不要でしたが。)

2.切株の採取

胡蝶蘭ふやし放題?(Phal. pulchra) 切株の採取
 2021年5月28日
 左下の黒線囲みが「切株」です。
 右が親株、左上は捨てる部分。
 今回は傷んだ根が多かったので、親株に残せる根が少なくなってしまいました。親株を弱らせては元も子もないので、通常は親株を作落ちさせないことを優先に考えましょう。

3.切株

胡蝶蘭ふやし放題?(Phal. pulchra) 切株
 2021年5月28日
 切株をすっぽんぽんのままプラ鉢に入れます。根を左右に掻き分けて、先端を内側にカールさせて、輪っか状にして鉢に突っ込むと上手く入ります。
 植木鉢には透明な容器でフタをして保湿します。
 成長中の芽が付いていない状態ではとても根腐れし易いため、すっぽんぽん栽培にするのです。でも、直に外気に晒すのでは乾き過ぎるため、フタをして保湿します。

4.水苔を付けた → 無い方が良かった

胡蝶蘭ふやし放題?(Phal. pulchra) 水苔を付けた → 無い方が良かった
 2021年6月2日(切株の採取から5日の間が空いたことに特に意味はありません。5/28 は植替え作業だけで疲れたので、続きを別の日に回しただけです。)
 葉が付いていた側面(=芽が出る側面)に水苔を針金で括り付けました。
 芽が出たらすぐに植込材にありつけるようにと思ってそうしたのですが…白カビがぼうぼうに生えたので 6/14 に除去しました。(→次項)

5.水苔は無い方が良かった

胡蝶蘭ふやし放題?(Phal. pulchra) 水苔は無い方が良かった
 2021年6月14日
 水苔を付けて以後、ジメジメ過ぎてカビカビになってきたので、水苔は結局除去。腐ってきた葉の残骸もついでに除去。
 切株の上面切口がカビにやられましたが、幸い致命傷ではなさそう。(切口の白カビはシャワーで洗い流しただけで、拭ったり削ったりカビ〇ラーかけたりはしてません。)
 青矢印は花茎の跡で、位置の目安です。

6.フタして保湿、時々換気 注目!

胡蝶蘭ふやし放題?(Phal. pulchra) フタして保湿、時々換気
 プリンの空き容器でフタをします。適度に空間を作れる透明容器であれば食品の種類は問いません。
 毎日1回はフタを外して「芽ぇ出せぇ~!」と気を送りながら手で扇いで換気をします。
 水やりは、鉢内に結露が生じなくなったら、シャワーで洗う感じでかけてやります。フタは水滴が粗方乾いてから被せます。
 あとは1~3か月、発芽まで気長に待ちます。この間、肥料は不要です。

7.このイボが芽になる?

胡蝶蘭ふやし放題?(Phal. pulchra) このイボが芽になる?
 2021年6月15日
 前日 6/14 に腐った葉の残骸を除去したら露出した緑のイボ。
 今回に限らず、植替・切株採取の時に枯れた葉の残骸を丁寧に剥がしてやると、こんなのがしばしば見つかります。が、「これが芽になるのかなあ」と思いつつ、ちゃんと見届けたことがありません。今回はこのイボちゃんをしっかり見つめていようと思います。

8.イボちゃんが・・・

胡蝶蘭ふやし放題?(Phal. pulchra) イボちゃんが・・・
 2021年6月23日
 そんな期待も、色あせて、萎んで、陥没。
 そういえばそうでした! こういうイボが芽になる所を今まで見たことがなかったのは、こうなってたからでした!
 茎を覆っている枯れた葉の付根部分は、わざわざ剥がさない方が良かったようです。(これも経験。)
 成長点は他にもあるはずなのでまだ望みはありますが…、このそだレポのタイトルには「?」を付けました。

9.枯れた部分を切除

胡蝶蘭ふやし放題?(Phal. pulchra) 枯れた部分を切除
 2021年6月29日
 枯れてきた根を除去。切り口を乾燥させて固めて腐りにくくするため、こういう作業をした後は、保湿用のフタはしばらく(1~3日程度)外しておきます。
 ちょっと雲行きが怪しくなってきたような気もしますが、今回が失敗に終わったとしても、来年再挑戦するので、このそだレポは継続します。

10.まだ生きてます。

胡蝶蘭ふやし放題?(Phal. pulchra) まだ生きてます。
 2022年3月31日
 芽は出ませんが、まだ生きてます。これはこれで大した根性です。

 今回は「しない方がいいこと」を新たに2つ確認できました。(まぐれ当たりの成功よりも有意義!)
 1.水苔を括り付けたこと。(過湿でカビだらけ。)
 2.枯れた葉の付根部分を剥がしたこと。(それが成長点を保護していた。)

 これで次回以降の成功率が上がった、はず。

11.今年こそは!

胡蝶蘭ふやし放題?(Phal. pulchra) 今年こそは!
 それが今日見たら、こんなに立派に育ってました!! …と思ったら、これ親株でした。いい感じで根が暴れてきました。初夏頃には植替えます。今年も切株が採れそうです。
 この状況を受けて、昨年の切株のことは今日から「浪人生」と呼ぶことにします。是非とも先輩の意地を見せて欲しいものですが…。枯れずにいるってことは、あれでもどこかに芽を隠し持っているかもしれませんし、諦めずに世話してみます。

12.親株の植え替え

胡蝶蘭ふやし放題?(Phal. pulchra) 親株の植え替え
 鉢外に出た新根はともかく、鉢の中に埋めた根は昨年の植替から殆ど成長していません。

 この日記
https://www.shuminoengei.jp/?m=pc&a=page_mo_diary_detail&target_c_diary_id=808376
の【画像2】の植え方をしていましたが、底がぺたんこの鉢ではあまり意味がなかったようです。同日記【画像3】の植え方に改めました。

13.新しい切株で仕切り直し 注目!

胡蝶蘭ふやし放題?(Phal. pulchra) 新しい切株で仕切り直し
 それでもこのそだレポのため、今年も無理して切株採りました。

 今回は、採取した切株にすぐには水をやらず、2日間乾かしました。切り口を乾かして固めて腐りにくくするための措置です。
 あとは昨年と同様に管理します。

14.発芽しました!・・・見えないけど。 注目!

胡蝶蘭ふやし放題?(Phal. pulchra) 発芽しました!・・・見えないけど。
 スマホのカメラがしょぼくて写真には全く撮れていませんが、矢印の所に、芽が出始めました。
 注目に値するのは、この芽が出た場所。「花が終わって切り取った後の花茎の付根」から芽が出ているのです。ファレノプシス属はこれができるので、葉腋成長点が全部花芽に化けてしまう性質の株でも、この方法で芽吹かせることが可能なのです。(バンダ類ではたぶん無理。)

15.芽らしくなってきた

胡蝶蘭ふやし放題?(Phal. pulchra) 芽らしくなってきた
 切株の採取から約2か月、発芽確認からは約1か月。ようやく芽らしくなってきました。
 葉が生え始めたので、フタを外す時間を長くして外気に馴らします。

16.その頃「浪人生」は・・・

胡蝶蘭ふやし放題?(Phal. pulchra) その頃「浪人生」は・・・
 後輩に先を越されてしまった「浪人生(2021年採取の切株)」。
 春から数本の根が枯れてしまいましたが、まだ粘ってます。

17.植え付け

胡蝶蘭ふやし放題?(Phal. pulchra) 植え付け
 外気に馴化し、葉が生えてきました。
 芽が無い状態では根腐れし易いため、切株はこれまですっぽんぽん栽培にしていました。
 芽が育ち始めれば、普通に栽培できるようになるので、植込材を用いた栽培に移行します。

18.素焼鉢を使いたくない人のための植え方

胡蝶蘭ふやし放題?(Phal. pulchra) 素焼鉢を使いたくない人のための植え方
 上記「12.」のリンク先で紹介した植え方をします。(あくまで我流。別にこんな凝った植え方しなくてもいいですよ。)

 (字数の都合で、次頁の説明をここから始め)
 主に日向土を用いますが、それだけだと表面に藻が発生して汚らしくなるため、表層部はバークでマルチングします。子株から半径 2 cm は水苔で囲います。真上から見下ろすと芽が見えて、横から見るとほぼ隠れる塩梅にします。

19.植え付け完了

胡蝶蘭ふやし放題?(Phal. pulchra) 植え付け完了
 子株を水苔で囲うのは、子株からの発根を妨げないためです。子株が初めての自前の根を出そうとした時、そこに硬くて大きな日向土やバークの粒が立ちはだかっていたら、こんな小さな「芽」でしかない子株にとっては、過酷な試練になりそうだからです。

 水苔以外は乾いた植込材で植付けましたが、すぐには水をやりません。(これも傷を乾かして固めるため。)最初の水やりは5日後にしました。

20.後は頼んだ!

胡蝶蘭ふやし放題?(Phal. pulchra) 後は頼んだ!
 あたかも後輩君の成長を見届けるようなタイミングでした。一年以上にわたって、芽が出ないなりに粘り続けてきた「浪人生」(昨年の切株)でしたが、もはやこれまでのようです。最後に残っていた根も枯れてきました。
 「たとえ芽が出なくとも、この方法で一年以上生存可能である」ということを身を以て示してくれたのは「浪人生」君の功績であり、この驚異的な根性を讃えたいと思います。

21.こちらは順調

胡蝶蘭ふやし放題?(Phal. pulchra) こちらは順調
 今年の切株からの芽生えは、順調に成長を続けています。本種 Phal. pulchra の特徴であるツヤッツヤの葉が生えてきました。

わたしの育て方

 
 ● 従来の「増やし方」は…
 従来から言われている「胡蝶蘭の増やし方」は、高芽か脇芽を子株として育てる方法です。つまり「勝手に増えるのを待つこと」を「増やし方」と称していたのです。しかも、その高芽や脇芽なんて、品種にもよりますが、大抵はたま~~~にしか出ません。同じ株を数十年栽培し続けても一度も出ないことも。

 ● もっと確実な方法ないの?と始めた試行錯誤
 そこで、増やしたい時に増やしたいだけ増やせる方法を考えました。
 植え替えの時に「切株」を採り、そこから芽吹かせるのです。ここで言う「切株」とは、株の下部にある古い部分を切り出した物のことです。
 それはデンドロやカトレアなどで言うところのバックバルブに相当する部分です。でも、胡蝶蘭の切株には、体力を蓄えたバルブがありません。そのため、切株を植付けて育てようとしても、芽が出る前に力尽きてしまうことが多かったのです。

 ● 決め手は「すっぽんぽんのじめじめ」
 切り出したばかりの切株には、成長中の芽が付いていません。その上、根も古いものしか付いていません。そんな状態だから、非常に根腐れし易いのです。
 そこで、植込材を使わず、すっぽんぽん栽培にしてみました。
 その結果、成功例も出始めた一方で、干からびて枯れてしまうこともあり、当たり外れがありました。
 ファレノプシスはバンダほど乾燥に強くないので、すっぽんぽん栽培にはより高い湿度が必要なのではないかと考えました。
 そこで、切株を入れた植木鉢に透明な容器でフタをして、保湿してみました。すると、かなりボロい切株からでも発芽させることができたのです。
 こうして「すっぽんぽんにして保湿する」ことで、成功率(発芽率)がかなり向上しました。
 ただし、無闇にジメジメにし過ぎるとカビが生えて腐ってしまいます。なので、水やり後は水滴が粗方乾いてからフタをしたり、鉢内の結露が多過ぎる時にはしばらくフタを外したりと、柔軟に対応します。
 逆に乾き過ぎてしまった(けど本格的な水やりをする時間がない)時には、とりあえず霧吹きで軽く湿らせてフタをしておきます。
 フタをした時に鉢内にうっすら結露が生じる程度に湿り具合を調節します。

 ● 発芽後の管理
 すっぽんぽん栽培のままでの育苗は難しいので、子株が発芽したら植込材を用いて植付けます。
 植え方については各々の流儀でいいと思いますが、幼苗のうちはバークや軽石系よりもミズゴケの方が馴染み易いでしょう。
 胡蝶蘭のように乾き気味に育てる着生蘭では、ミズゴケを固く詰め込むことで水を含み過ぎないようにするのが一般的です。が、幼苗でそれをやると根がちぎれてしまいます。なので、少なくとも株元の数センチは、あまり固く詰めない方がいいでしょう。
 私はプラ鉢に軽石(日向土中粒など)を入れてその上にミズゴケを盛る方法を採用しています。これならミズゴケの余計な水分が軽石に吸われてはけるので、ミズゴケをふんわりと盛っていても、水やり後のべちゃべちゃ状態が短時間で解消します。
 親株由来の根が枯れたら子株を切り離します。
 植付後の管理は親株とほぼ同じでOKですが、ストレスをかけないように気を付けましょう。

 ● 切株に成長点は必ずあるの?
 葉腋(葉の付根)の成長点が花芽になるとその成長点は消費されてしまうから、葉腋成長点が全部花芽になる程花付きの良い個体では、切株に成長点が残ってないんじゃいの? …という疑問もあるかもしれませんが、心配無用です。
 ファレノプシスは花茎を出す時に花茎の基部に節を作っているようで、枯れた花茎の付根からでも芽が出ます。そのため、葉腋成長点が全部花芽になる性質の株でも、切株からの芽吹きは可能です。
 目安としては、切株に生きている根が4~5本もついていれば発芽は可能です。
 なるべく若い根が多く切株についていた方が、切株から芽吹かせるのにはもちろん有利です。でも親株の方を弱らせてしまっては元も子もありませんから、当然、親株を作落ちさせないことを優先に考えて切株を取ります。

 ● どの位のペースで増やせるの?
 葉が3~4枚更新する毎に1回、元気な親株なら1~2年に1回切株を採取できますが、株への負担を考えると最大でも隔年とした方がよいでしょう。
 1つの切株から1~4株の子株が発芽します。
 切株から子株が発芽するのには1~3か月程度、子株が開花株まで育つのには3~5年程度を要します。

 ● 2021年6月時点で考え得る最良の方法で最初からやり直したナゴランのそだレポもご参照ください。
 https://www.shuminoengei.jp/?m=pc&a=page_r_detail&target_report_id=20619
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