1.イチジクの苗を用意します
初夏からいろいろ出回ります。写真の品種は「アーティナ」。20~40gの小~中果で、「ミニイチジク」の名称で売られていることもある品種のひとつ。皮ごと食べられ、香りよくさっぱりした甘さとか。
秋に大手種苗業者で販売される苗は、5月くらいに挿し木・接ぎ木したものと思われます。挿し木苗は、先に葉が展開し、それから根が伸びてきますが、この時に根を傷つけると一発で枯れるので注意。
2022年6月5日開始
2.4~5号鉢/ポットの挿し木苗
水切れを起こさないよう注意しながら、雨の日以外、毎日灌水していれば、挿し木苗でも2か月もすれば立派な根鉢が出来ます。根鉢を崩さないように、8号鉢~10号鉢に鉢増しします。
イチジクの栽培には、最低8号深鉢は必要になります。地植えであれば、浅く広く根は伸びますが、鉢植えでは下にしか伸びることができませんので。
ちなみに7月8号鉢に植えた1/3くらいは、8月中に10号鉢に再移植をはじめています…。
3.植え付けや、鉢増し時
水はけの良い用土に、堆肥、有機石灰、苦土石灰少々、マグァンプK大粒少々、有機マグカリン、水はけの向上にベラボン中粒を混ぜます。
私はベラボンを採用していますが、ハスクチップや桐生砂など、人それぞれです。水はけ重視は共通。おそらく根の成長が早まりますが、毎日の十分な灌水が出来ない場合は避けた方が良いかもしれません。
なお、樹勢の強い品種への施肥は控えめに。堆肥や石灰分はふんだんに与えましょう。
4.旧枝に付くのが夏果、新枝が秋果
初年度に実が付くのは豊産種の証みたいなものですが、残念ながら初年度は大半の果実が落果して終わります。
まれに果実の小さい物が付いた状態で、6月とかにメルカリやオクに出ているものがありますが、あれは実が付いた枝を挿し木にしただけです。同様に高確率で落果すると思います。
お盆の頃までに秋果が実れば、収穫できると思います(初年度除く)が、晩生種は暖地でないと厳しかったり、数年は落果するだけというのも。
5.樹勢の強い品種の育ち方
右が7月23日。左が8月13日。20日間でこんなもんです。
写真は「ベルモントビューティー」。イチジクハンターと呼ばれる酔狂な方々の一人が、カリフォルニア州のシエラネバダ山脈の崖から採取してきたもの。ガラガラヘビが多数生息する場所ですが。ブラウンシュガー系で、種が多く、ジューシーで非常に甘いそうな。
200種以上イチジクは品種がありますが、オクなんかで買うと、日本では結実しない種類もあります。
6.カミキリムシ対策
カミキリムシの産卵期は7~8月で、6月までに茶色く木質化している部分には、「ガットサイドS」を刷毛で塗ります。有機リンを含みますが、この忌避効果は1週間程度で、要は樹脂フィルムで木をカバーして守る物です。
ほかにも農薬成分を含まない、樹脂フィルム剤も、探せばあります。かえって高くなると思いますが…。
効果は、数か月あります。4~6月に使用推奨。もっとも、塗っても根元を掘ってやられることも。
7.主軸が曲がってくるようなら支柱をたてる
冬には40~50cm高で主軸をバッサリいきますが、枝作りは2年目から、初年度はひたすら株作りなので伸びるに任せます。が、曲がってくるようなら支柱を。結わえる際には、幹が太くなるので余裕を持たせて。
また、根元から2本目の軸がでてくるのはV字で許容できますが、写真の手前のひょろひょろしたひこばえは地際からカットします。主軸が弱ってくるととくに出やすくなりますので、随時カットで。断面には癒合剤推奨。
8.半数弱のイチジクに果実が付いているが
残念ながら8~9割は落果して終わりと思われる。どのみち、初年度~2年目は、甘いだけで風味が劣るイチジクになりやすい。初年度から実が付くのは、ある意味豊産種の証で、将来楽しみではある。
写真は「シャーアンバー」。原木はイタリア近隣の放棄された家の前で見つかった。丈夫で甘く超豊産性。果皮色は黄色~黄緑色。果肉色はわずかにピンクかかった琥珀色。
YouTuberが紹介し、2022年はわりと高値で推移。
9.fig mosaic virus
不治の病。葉にモザイク症状、奇形を引き起こし、果実の品質低下、減収を伴い、抜き棄て推奨。樹勢が回復すれば、写真のように新しい葉はマスキングされ分からなくなるが。
輸入穂木はほとんどが罹患している可能性がある。イチジクモンサビダニにより媒介と推測されており、ハダニ対策は念入りに。
写真は「スミス」。1900年代初頭にクロアチアから米国へ持ち込まれたとされる、甘さはほどほどだが複雑な旨味が人気とか。
10.初年度はほとんど熟すまでもたないという話
初年度に実を付けたイチジクは8種(※2種は1~3個程度)。「ベルモントビューティー」「サイオデモナコ」は次々と落果中。
写真は「ブランシュダルジャンテイユ」。黄色の果皮、果肉色は琥珀色。肉質はなめらかで目はしっかりと閉じて雨にも強く、糖度25度前後の超豊産種。樹勢は弱め。
「アルジャントゥイユ(地名)の白いの」という程度の意味で、古くからパリの北西部で栽培されてきたイチジク。
2022.9/10
11.だいたい秋果の収穫の可否はお盆までかな
9/14になって新たに1品種実りましたが、遅すぎるので収穫は出来ないかと。結果日から収穫日までの日数と積算温度の変動は小さく、桝井ドーフィンで約80日、蓬莱柿で約85日。早生の品種には45日というのも。レディシリーズは晩生種。
オイリングで早められるが失敗すると落果する。
写真は「ブラックジャック」。正式品種名不明のイチジクのひとつで、茶紫の果皮に琥珀色の果肉で風味良好。豊産性。耐寒性なし。
12.だから遅いんだってばよ
9/15になって新たにまた1品種実る。落果しにくい品種であれば、上の方の若い実を摘果して、下の2個くらいにしてやると、実が大きくなりやすく収穫も多少早まる。落果しやすい品種であれば、果実は下から落ちていくので、、、。
写真は「バコリニョ」。マデイラ諸島に古くからある品種。小中果、樹勢収量並、果皮は黄緑果肉は赤。目が開き耐雨性保存性に劣るため、今は栽培は希。甘い香りがありフルーティーでジューシー。
13.台風の風で鉢がバタバタ倒れる
イチジクはバランスが悪く、葉が大きくて風を孕みやすいですからね、バタバタ倒れていっています。10号鉢でさえ!ユリも倒れていっていますけどね。
リッチェルバラ鉢を2重にすると、地面から3cmくらい鉢底が余計に浮いて、バラや紫陽花が地に根を張るのを防いでくれていました。これまでは。
しかしイチジクは容易に突破、複数。太根は皆無なので、それなりの効果はあったのかもしれませんが。
2022.9/18
14.免責事項のようなもの
変わった品種は穂木を個人輸入したり、メルカリやヤフオクあるいは交換会で入手することになりますが、イチジクの増殖方法は挿し木で比較的容易であることが多いため、販売者・栽培者の作為・不作為にかかわらず偽物・誤った品種であることは珍しくありません。
たとえば表紙のi258は葉の切れ込みが細く深くおそらく違います。
勉強代と思って許せるか、そうでないなら大手種苗メーカーからのみ買い求めた方が無難です。
15.さび病
私が育ててきたイチジクではありませんよ?無農薬の正反対で栽培しておりますので。すべからく病気は予防がすべて。
しかし入手してしまったし、他に感染するので、本日9/24はラリーを散布。サプロールもDMI剤ですし効果はあると思いますが適用作物ではありません。治療で使うなら、アンビルかトリフミンかラリーあたりになります。
蔓延するとイチジクは身を守るためにその葉を落としますので、成長・収穫に影響大。
16.鉢植えの実の味は地植えの実に劣るという
たぶん有機物が足りないからでは。根拠は無い。そこで、普段は種まき苗の肥培に愛用しているサカタ「ネイチャーエイド」を殺菌剤と混用して葉面散布。月イチ灌注。
有機JIS規格ではないが有機のアミノ酸液肥。アミノ酸葉面散布は殺菌剤と共に撒かないと雑菌に横取りされると私的愚考。
写真は「ピンゴデメル」。ポルトガル産の夏秋兼用種、中小果で緑皮、果肉は琥珀色。「蜂蜜の雫」という意味で甘い。寒さに強い豊産種。
17.未だに着果を続ける品種多数
どのみち熟さず食べられそうにありませんが、写真のは食べられるようになるかもしれません。でもおそらく品種違いPartⅡ。
個人的には品種より味が大切も、2年は本来の味でないことが多いという。最終的に品種も違って味もイマイチだったら放逐します。
丈1m程度あってまったく着果の気配のない品種は「ノワール ド バルバンタイン(サンミシェル)」「スイートカロン」など、樹勢が強く果実のなりにくい品種ばかり。
18.さび病②
落ちた葉は必ず焼却処分。さび病の菌の胞子の塊みたいなものです。夏は飛散し、冬は越冬し、雨に当たって萌芽して容易に感染します。
気温25度が適温で、4~10月くらいまで発生します。ピークは9月ごろ。窒素過多と葉の混みすぎによる風通しの悪化が拍車をかけます。
先に挙げた農薬や、銅剤、アミスター10などをローテーションして対応。春に胞子の発芽を抑えるダコニールも予防で有効。無農薬派は重曹水でどうぞ。
19.落果した果実を狙ってナメクジが
毎晩訪れるようになり、しかも時折木に登って果実を探し始めたので、根元を銅のメッシュで巻いた。銅箔テープではやがて食い込むし、手軽に外せないとガットサイドSなどが塗れなくなる。
検討の結果、多少の伸縮性が期待でき、安価で有効そう、取り外しも容易な銅のメッシュに落ち着いた。
当家はナメクジが多いために必要になった処置であり、通常のお宅では必要ない工程かと存じます。
2022年10月2日
20.●ここで反省点まとめ①●
2022年6月頭より始めた初心者のぺーぺーにつき、いろいろと後出しで栽培上の留意点が溜まっています。
①5月に摘心をする
5月に摘心をして、枝の充実を図るそうです。ただ、夏果が多数付いている場合に摘心すると、落果に繋がるそうです。6月から始めたのに知らんがな。
1本立ちをズバっと翌年低く剪定しても、イチジクは枯れるようなことはありませんが、樹勢が強い品種ほど枝が暴れやすくなるそうです。
21.●ここで反省点まとめ②●
②初年度は実を付けさせない
ガンガン育つに任せて着果させていますが、バラなんかと一緒で初年度に結実さすと、翌年の樹勢が大きく損なわれるそうです。とくにシャーアンバーやブランシュダルジャンテイユなど、樹勢が並以下で豊産種の場合。
しかし穂木をとって挿し木苗を売るつもりはなし、食べたいのを我慢できない、①で枝が暴れやすいというので②で樹勢を落とせばバランスが?
と甘いことを考えている10月2日。
22.ときどき聞かれますが、薬剤は葉裏がメイン
農薬というのはどの植物であれ散布は葉裏からが主。下から上に向けてかければ、はみ出た薬剤はまた上から降ってきて葉表に付くので、裏7:表3くらいです。葉裏の方がクチクラ層も薄く染みこみやすいですし、染みこまない薬剤なら満遍なくという意味で尚更。
アルストロメリアは葉元で捻れて裏が上を向きますが。
染みこみやすくするアプローチBIやスカッシュなどの機能性展着剤もありますけどね。
2022/10/10
23.ブランシュダルジャンテイユは
今期ひとつは食べられそうな予感!⑰のイチジクは一回り大きくなったけどまだ固い。しかしブランシュダルジャンテイユは少し柔らかくて今年食べられそうな感じ。
白イチジクは何時が収穫適期かわかりにくい。柔らかさで判断するらしいけど、それって経験が必要では。
完熟間近になったと判断したら、サージカルテープを短く切って果頂部の目の部分に貼ると、アリやアザミウマの被害を大幅減できます。
2022/10/10
24.5月末に頼んでいたアイーダブラックが
到着。イチジクもう場所なし。40cmくらい?春に挿したものか。タ○イでは今、桝井ドーフィンとアイーダブラックのみ接ぎ木苗も販売しているが、いちどイチジクを植えていた跡地に植えるなら嫌地を懸念して接ぎ木が良。
イチジクの接ぎ木は個人でも難しくはないらしい。台木は、LSUパープル、バローネ、スイートカロンあたり。一方で縞模様など、台木の影響を接ぎ木された品種は強く受けるそうだ。
2020/10/13
25.いまだ続々着果中、熟れ残るだけだが嬉しい
貰い物のLSUパープルやアゾレスダークにも今更着果。温室でも無い限り熟す可能性はゼロ。最高気温26度は明日までの予報。
LSUパープルは91年にルイジアナ州農業試験場でエドオルーク博士により作られた最も優れたイチジクのひとつ。風味良、口当たり良、糖分含有量高、目は閉じ耐雨性良、耐寒性強・耐さび病・高い線虫抵抗性を持つ樹勢強の豊産種。残念ながら20g程度の小果。台木にも最適。
2022/10/14
26.一か八かでオイリング
紀元50年頃にはすでに行われていたという熟期促進技術。オリーブ油などの可食植物油を一滴目の部分に垂らす。果皮に付くと黒いシミになる。
オレイン酸が分解されてエチレンになり、熟期が早まると推測されている。短縮できるのは約7~10日。早すぎると成長が止まったり落果のおそれ。遅すぎると効果が無い。
果重35gとか果径3cmくらいから。小果種は不明。果頂部が下向きになる前に行う。
2022/10/15
27.昨日朝までは無事だったけれど
オイリングを施したイチジクの半数くらいが、作朝はシャキッとしていたのに、今朝はうなだれている。㉖のLSUレイトブラックなど肥大しないまま(写真左)。これは失敗したのかもしれんね。
とりあえず昨日雨で、今収穫しても…もしかしたら今で無くともだけれど…美味くはないと思われるので、収穫は週末にする予定。
LSUレイトブラックはLSU非公式。LSUティボドーとの関係が疑われているが、結構違うっぽい。
28.収穫
樹上で完熟、果頂は真下を向き、柔らかさは耳たぶより柔らかい。そこまでいくと風味は劣るらしいが、2年目でも本来の風味は出ないというのに初年度で何を期待するのやら、ってやつですよ。
外見はいまふたつ。柔らかいので粉末ハイス鋼の良く切れる三徳包丁でカット。
中は思った以上に瑞々しい。ただし、大きさはたいへんコンパクトで、ブランシュが21g、LSUレイトは9gしかないけれど。
2022/10/22
29.よし、食うぞ!!これは…美味い!(笑)
通常流通しているイチジクの糖度は、桝井ドーフィンで16度程度、とよみつひめやビオレソリエスで18度程度です。樹上完熟させれば、もう5度は上がりますが、柔らかくなって輸送に耐えない。
ブランシュダルジャンテイユは…ひっじょーに甘い蓬莱柿。酸味も十分でジューシー。
LSUレイトブラックは…酸味なくひたすら甘い。種が多く果肉は滑らかなゼリー状。味は濃厚なイチジクジャムの味がする。
2022/10/22
30.ご当地の現状は
連日晴れで、朝晩は寒いが昼間は暑い。そのおかげもあって、続々と諦めかけていたイチジクの果実が急成長を始めている。まさにラストスパート。
一方で灌水もギリギリ2日もつかどうかで、甘いイチジクを採るには収穫期に水を控えた方が良いのだが、2日目には最低でも1回たっぷり水をやらないといけない現状だ。
しかし昨日の糖度を見る限り、やらずに果実が落ちるよりはやった方が良いな。 続く
2022/10/23
イチジク大好物。そして、木で完熟させたイチジクや、店で売っていないイチジクを食べてみたくなったんだよ!
ただそれだけ。
※2022年6月より始めたまったくのビギナーですのであしからず。9月に趣味園メールマガジンにピックアップされたようですが、結果がついてくるのかは謎です。もっともらしく書いていますが、全力で手探り状態!