1.花後1か月の状態
9月末に咲いたオーレアの1か月後の状態です。
『花がらは早めに摘み取りましょう』というのが一般的。美観の点からも翌年の美しい花のための球根の充実のためにも、それが正しいのでしょう。
でも花の愛好家には、人の持っていない品種を!人がやらない秘伝の育て方を!との思いがありませんか?そんな思いを満たせる第一歩が、ここから始まります。
2.こぼれ落ちそうな充実した種
12月7日の状態です。黒い大きな種が今にもこぼれ落ちそうです。このままポロリと零れ落ちるもの、方や茎の根元から倒れて株元から30~50センチのところにまとまって落下するもの・・・いろいろですが、この一粒に『夢』が入っているかもしれません。この写真では6個の房?が見えますが、一房に15個前後入っていますので、この茎1本分で最大で約100個近い種が収穫できます。『夢』百倍です!
3.種の状態
種を収穫してから写真のような状態に剥いたものです。
種子の内部の写真までは撮影できませんでした。私たちが目にする種子のほとんどが固い種皮に覆われているものですが、オーレアは柔らかい種皮に覆われており、白っぽい柔らかい胚乳の中央に球根をイメージさせるものが見えます。専門的には上手く説明が出来ませんが、この黒い種皮のまま蒔くことになります。自然な状態でも、これらの種子が地上に落下して生育するわけです。
4.失敗した一昨年の発芽状態
2015年12月に100粒づつ4鉢蒔いたもので、1年後の2016年12月に撮影したものです。100粒中10本だけが発芽しました。ごらんのように土にかんしてもなんの配慮もなく、正直なところ、ただ蒔いただけ。4鉢はそれぞれ違う環境に置きました。土地全体は川が流れる谷合で、日照時間も1日に3時間ぐらいの場所です。この鉢は比較的日当たり良い場所でしたが、こまめな水やりもなしです。
5.2015年最高殊勲賞
2015年に蒔いた100粒蒔きの鉢で発芽率30%を達成しました。前記の鉢同様に水やりは一切していませんし、土も同じです。置場は一切陽の当たらないキンカンの根元でした。ただ、枯れ葉がたくさんつもっており乾燥防止の効果があったようです。水やりを1年続けることも大変ですが、いつの時期にどの位が適量かという基準が分からないのですから、自然に任せるしかありません。ちなみに、1年目は葉が1枚のみです。
6.培養地の環境
2015年の400粒の発芽結果を踏まえ、2016年12月には5000粒ほどを蒔きました。本題に入る前に、培養地の環境に触れておきます。谷合の水分の多い土地柄です。日照時間は1日に夕方3時間程度。写真はその環境を生かした自家用クレソン栽培です。水温は多少温水が混じるため25°Cほどあります。気温は日照時間の関係で低めだと思います。南も北も林。西側にからくも陽の差し込む余地が残る程度です。
7.自生地の環境
自生地などではありません。友人の山ですが日差しはほとんどありません。友人の家族が昔植えたものです。ものの本には陽の当たる場所がいいと書かれていますが、経験的には日陰の方が群生しやすいようです。種が落下して発芽した幼苗が所狭しと生えています。日向の葉より多少長めです。足りない日照は、葉の面積で補うという生命力を感じます。栽培農家を訪問したときも日陰を作るため木を植えたと書物と異なる意見でした。
8.2016年12月の種まき法
乾燥防止策としては、2つの方法をとりました。まずは鉢植えよりは地植えを選択しました。まわりに自生した幼苗がたくさんあったことから、砂と黒土が半々ぐらいの用土で、一辺1メートルほどの区画を作り1区画千粒を蒔きました。肥料分は自然に堆積した腐葉土のみ。深さは10センチほどを丁寧に耕し、覆土は種の頭が見える程度に薄く。この後細かく砕いた広葉樹の枯れ葉を1センチほど被せてあげました。
9.2016年の種まき法2
落葉樹の枯れ葉の上に、さらに松の枯れ葉を厚く乗せた状態です。茶色に見えるのが松葉です。松葉は腐敗防止作用があるようで、里芋などの保存に活用したり、葉が腐った後はタバコ栽培の苗床に使用するという地元に古来伝わっている手法を取り入れてみました。結果としては、松葉なしの床での結果に優位差は認められませんでした。置場は梅の木の根元で、夏場は葉が茂っているため乾燥の防止にはなったと思われます。水かけはなし。
10.発芽の確認
2017年10月27日の写真です。見事に発芽です。この時期に成長したヒガンバナも葉を出し始めます。残念ながら途中の写真はありません。今からどれだけ出てくるか楽しみです。種まき時に被覆した枯葉や松葉はほとんど腐葉土化しています。さらに周りの竹の葉などがたくさん積もっています。撮影する前に雑草取りを行いました。偶然でしょうか黒い種皮を被ったようなものもあります。
11.1年目の幼苗の球根の状態
幼苗の球根の状態をご覧ください。1円玉よりはるかに小さい球根です。根は2-3本。とても植替え出来るような状態ではありません。砂気の多いまたはバーミュクライトのようなふわふわした用土でなければ苗を痛めてしまいます。1年目の葉は1枚のみです。葉での光合成で得られる養分と根からの吸収は非常に重要そうです。実は2015年の苗もまだ定植していません。
12.2年後の苗の状態
2015年の苗はどうなったでしょうか?まだ葉が出始めですべてが出そろった訳でがないのですが、葉の数は2枚または3枚となっています。
13.最新の幼苗の状態
12月7日の幼苗の状態です。もう出そろったと思われます。
乾燥防止に焦点をあてた栽培でしたが、50%以上の発芽が達成できたようです。葉は球根1個につき1枚のみです。
球根を充実させるため、この段階でカリ分の多い肥料をごく少量施しました。鉢で栽培する場合、鉢を半分ほど地中に埋めてさらに枯れ葉など十分な乾燥防止をしてやるこが大事そうです。
14.2年目の発芽
2015年の苗は、微量の施肥はしているものの、定植はしていません。他の品種の栽培を見ていると1年以上してからの発芽の可能性について言及したものがありますが、経験上、1年以上後に、発芽するケースはありません。それにしても翌年10月まで地中で何が起きているのでしょうか?5-6月に葉が枯れてしまうまでに球根らしきものが育っているのでしょうか?それと2年目の球根はどれほどになっているのでしょうか?
15.2年前の球根の状態
12月18日、やはり気になり2年前の苗の球根の発育を確認のため掘り上げてみました。大分大きくはなりましたが、1円玉1個分までも成長していません。まだ、定植には早いかもしれません。微量の追肥をして後1年待った方がよさそうです。彼岸花は意外と強いですから来年5-6月なら大丈夫かもしれません。
16.成熟した球根
何年たったものかわかりませんが、大きく成長した球根はこんな感じです。2年目の球根と比べれば50倍ほどでしょうか?それ以上かもしれません。1年で体積2倍に成長すると仮定すると、2年で2倍、3年で4倍、4年で8倍・・・・やはり10年近くかかりそうですね。長生きしなくっちゃ!
17.今年採取した種
さて、今年採取した種です。総数約5000粒。
全てうちの彼岸花から採取したものです。他の種類の彼岸花の花粉が付いていることを祈りながらの採取です。オーレアはそのほとんどが、他の彼岸花が終わった後に咲きましたから、ほんの一部は可能性がありますが・・・・
18.今年の種まきの床
今年の種まきの床の場所はここに決めました。過去の経験を踏まえ2年間は、ここで成長してもらいます。現在は右側から陽がさす感じですが、春から夏場にかけてはスモモの大木が葉を茂らすため、直射日光は入りません。西側に2~3時間ほど陽が差し込みます。菜っ葉のない時期は陽が入らず、葉っぱのある時期はある程度の陽が差し込む絶好の場所だと判断しました。
19.用土の質と前の住人
比較的砂気の多い感じで腐葉土がかなり混じっています。この土質のため、この場所を耕していたとき出てきたのは、写真のものです。実はこれはミョウガです。夏の終わりには私の胃袋を慰めてくれたものですが、移殖します。昔植えたものでしょうが、随所にミョウガが繁殖しています。
20.2017年12月の種まきの結果
2017年12月に種をまいたものが発芽しました。一見成功のようですが発芽率は3割程度でしょうか?満足の行く結果ではありませんでした。ごく少量のカリ分の多肥料を施し球根の生育を促します。
(2018年12月初旬撮影)
21.発芽率低下の原因
発芽率が悪かった原因は西陽のせいだと思われます。この場所は
夕方2-3時間の西陽(写真の手前側から)がさす場所です。写真手前側の発芽率が極端に悪いのが明らかです。昨年の植え方と全く同じなのですが、去年は約5割の発芽率でしたががっかりです。
写真右側の青いトレーの場所が今年の種まきの場所を準備してしまいました。手前に寒冷紗などの対策を講じる予定です。
球根類の種を採取して、それを増殖するというのは、『良い花を咲かせる』という意味では邪道かもしれません。交雑種が生まれるかもしれないという夢があることと、ほとんどの人がやっていない未知の世界へのチャレンジという意味ではぜひ挑戦したいものです。個人的には、『結果を見るまでは死ねない』という長生きの秘訣と思って取り組んでいます。