第6回 コケで感じる森の空気 ― 今、熱い植物アーカイブ
「コケ女子」という言葉を聞いたことがあるだろうか。コケを愛好する女性たちのことである。ある者はコケを栽培し、またある者はコケの観察にいそしみ、その小さな命の営みを愛でるのだ。鉄道会社のテレビコマーシャルでは、有名な女優が自生地でコケを観察するシーンが登場する程度には、世間的に認知されている趣味でもある。
これまでコケは盆栽の鉢土に張られたりと、園芸的にはほかの植物のサポート役として利用されることが多かった。しかし、今ではそれだけで栽培される、主役を務められる存在となった。
「なかなか植物を育てられない室内でも育てられるので、身近に置いておきやすいのがいいんでしょうね」
そう語るのは、コケをビンに入れたコケテラリウム作品などを製作、販売する石河英作さん。
「森の中でも、上空が開けた場所には光が多いので、大きくなる草木が生えてしまいます。コケは、それらの植物が生えない、より光が少ない場所にも生えることができます。なので、室内の照明でも十分育つんです」
そのため、家庭だけでなく、仕事場のデスクに置いたりして楽しむ人も多いという。
「室内で育てられるコケの多くはこうした、比較的暗く、湿った環境で育つ種類。こうしたコケは、弱くてもいいので、長時間光が当たる環境に置くと、強い光を短時間当てるよりも、よく育ちます」
石河英作(いしこ・ひでさく)
園芸研究家。ラン種苗会社を経て独立。2014年に植物ブランド「道草」を立ち上げ、コケをはじめ、ゆっくりつき合える植物を提案。
ここでは比較的暗く、湿り気のある場所を好むコケを中心に紹介します。
撮影/田中雅也 編集/土屋 悟 撮影協力/道草
『NHK趣味の園芸』テキスト大好評連載「今、熱い植物」アーカイブ
この記事は『趣味の園芸』2017年9月号「今、熱い植物」を編集、抜粋したものです。
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