ところで、映画に出てくる在来作物は、F1品種とは栽培のサイクルが異なります。難しい話は省きますが、F1品種の野菜は、毎年タネを買って育てなければなりません。今年育てた野菜の収穫が終わったら、タネをとって来年まけばいいのでは? と思うかもしれませんが、そのタネでは必ずしもうまく育ちません。一方、在来作物の場合、タネをとってまけば翌年もきちんと育ちます。生産者たちは今年育てた野菜のタネを自分たちでとって大事に保管し、翌年まいて育てます。
タネをとるという行為には、鋭い観察力や経験に裏打ちされた見極め、味のよしあしを見分ける舌、自分のこだわりなどが反映されます。それが野菜の作り手たちの誇りを生み出し、信念と笑顔=イケメンを作るのでしょう。ということで、今すぐイケメンになりたい人は農業を始めればいいのでしょうが(笑)、そんな大変なことをやる自信がない人(筆者はこっち)は、イケメンたちがどんな思いを胸に野菜を作っているのか、この映画でその核心に触れてみるのも手です。食べることの原点は、なるほどこういうことだったのか! と合点がいくこと請け合いです。
文 加藤雅也(『やさいの時間』編集長)