触ると危険、食べると危険な有毒植物にご注意!

植物には、触るとかぶれたり、誤って食べると中毒症状を起こしたりする化学成分を含むものがあります。観賞目的には問題がない身近な園芸植物も例外ではありません。体質によって害の出方に差があるものを含め、注意が必要な植物の一例を紹介します。どのような植物が「有害な植物」「毒草」なのか、しっかりと理解をしておきましょう。

こちらもあわせてお読みください
植物の化学成分とは何だろう? 植物が生きるために備えているもの >

●教えてくれた人
佐々木陽平(ささき・ようへい)/金沢大学教授。金沢大学附属薬用植物園園長。薬剤師。漢方薬材料の国産化に向けた研究に取り組む一方、市民講座を通じて植物の正しい知識の普及啓蒙を行う。日本植物園協会理事。

*本記事は、『趣味の園芸』2021年9月号掲載の「薬用植物園園長が語る 園芸生活の思わぬ落とし穴」の内容を元に再構成したものです。(作成年月:2021年8月)


人体に影響がある化学成分を含む植物の一例

触ると危険な化学成分を含む植物

影響
植物例
どこに含まれているか
原因物質
植物にさわるとかぶれる
ウルシの仲間(ウルシ、ツタウルシ、ヤマハゼなど)
樹液(敏感な人は近づくだけでダメ)
ウルシオール

イチョウ
ぎんなん
ギンコール酸
イラクサの仲間(イラクサ、ミヤマイラクサなど)
茎、葉
ヒスタミン

プリムラ・オブコニカプリムラ・マラコイデス
地上部(葉、花柄、萼)の毛
プリミン
葉や茎の汁に触れるとかぶれる

キンポウゲの仲間(クレマチスクリスマスローズなど)
茎や葉の汁
プロトアネモニン

トウダイグサの仲間(ポインセチアハツユキソウハナキリンなど)
切ると出る白い乳液
ホルボールエステル

ジンチョウゲの仲間(ジンチョウゲ、フジモドキ、ナニワズなど)
樹液
不明

ガガイモの仲間(ガガイモ、ブルースターなど)
葉、花、茎
不明

ウコギの仲間(ヤツデ、カクレミノ、キヅタ、アイビーなど)
茎や葉の汁
ポリアセチレン化合物

キダチアロエ
多肉葉の内部
シュウ酸カルシウムの針状結晶
葉汁に触れて、その部分に日光が当たるとかぶれる

セリの仲間(ホワイトレースフラワーセロリ、ハナウドなど)
地上部(葉、葉柄、茎)の汁
フロクマリン

同じ仲間の植物に注意しよう
ウルシやぎんなんのかぶれは、よく知られていますが、注意したいのはウルシだけでなく、同じ仲間の植物にもかぶれの原因となる化学成分が含まれていることです。例えばヤマウルシ、ツタウルシ、ヤマハゼなど、これらは山野に普通に見られる植物です。そしてウルシの仲間とは気づきにくいのですが、敏感な人はピスタチオやマンゴーでかぶれる人もいます。

作業をするときは手袋などの対策を
鉢やプランターで花を育てていて敏感な人は、プリムラ・オブコニカやプリムラ・マラコイデスの、全体に生えている毛に触れてかぶれることもあります。園芸植物として広く普及しているので、この花を扱うときは手袋をするなどの対策が必要です。キンポウゲの仲間、トウダイグサの仲間などは、葉や茎の切り口から出る汁の成分で、ひどいかぶれになる場合があります。
この表に記載がない植物でも、手などについたら長い時間そのままにせずに洗うことを心がけましょう。初めて扱う植物の場合は、あらかじめ有毒性について調べる、ラベルの表記をよく読む、以前に何かの症状があったときは念のため手袋を使う、といった準備もしておくとよいでしょう。

かぶれないように気をつけて

食べると危険な化学成分を含む植物

影響
植物例
どこに含まれているか
原因物質
中毒
ナスの仲間(ハシリドコロ、チョウセンアサガオなど)
全草
アルカロイド

ジギタリス
全草
強心配糖体

スズラン
全草、とくに花と根
強心配糖体

キョウチクトウ
全草、とくに種子と乳液
強心配糖体

フクジュソウ
全草
強心配糖体

ツツジの仲間(レンゲツツジ、ホツツジ、アセビシャクナゲなど)
全草
グラヤノトキシ
発がん性
生のワラビ(十分にアク抜きすると無毒)
全草
プタキロシド
長期的な健康障害

カタバミの仲間(オキザリスなど)
全草
シュウ酸

シュウカイドウの仲間
全草
シュウ酸
タデの仲間
全草
シュウ酸

むやみに植物を口に入れない
大切なのは植物を安易に口に入れないことです。口に入れると危険な植物でも、園芸観賞の目的であれば問題がない植物がほとんどです。
ナス、マメ、ミカンは、食品として利用されているものは安全ですが、それらの仲間のなかにはアルカロイドを含むものがあります。例えばチョウセンアサガオ(ナス科)、スイートピー(マメ科)、ミヤマシキミ(ミカン科)などです。 一方、マンゴーにかぶれる人とかぶれない人がいるように、同じ植物の化学成分でも人によって害の出方が違うことがありますので、自分の体質も理解しておくとよいでしょう。

子どもやペットが触れないようにしよう
小さなお子さんがいる場合やペットを飼っている場合は、その配慮も忘れずにしてください。子どもやペットが直接触れない場所で管理するなどの対策をしましょう。

毒草の豆知識

毒草は医薬品の大切な資源
「毒草」とされる植物は、じつは医薬品を開発するための大切な候補でもあります。私たちの祖先は毒の性質を理解し、薬として利用してきました。例えばトリカブトは、その猛毒の根に高い温度と圧力をかけることで毒性が減少するので、この方法でトリカブトの根は漢方薬にも使用されているのです。しかしこれは医薬品の例ですから、アルカロイドを含む植物を加熱したら安全になる、ということではありません。
コーヒーに含まれるカフェインもアルカロイドです。コーヒーをたくさん飲むと気分が悪くなる人がいたり、しかも人によってその量は異なることは身近な例として理解しやすいと思います。ふだん安全に口に入れているものでも、用量や飲み続ける期間によっては害になることもあるのです。
植物は自然のものだから人体にやさしいと思いがちです。しかし、植物がもつ化学成分を利用する、薬用植物学の視点から観賞目的の園芸植物をとらえ直すと、植物によっては人体に影響を及ぼしたり、量が多くなると有害になったりする場合があります。
近年、世界中の園芸植物がより身近になってきています。多様な園芸生活を楽しむために、こうした植物の有害性や化学成分の知識についても、頭の片隅にとどめておきたいものです。


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【参考外部サイト】
自然毒のリスクプロファイル - 厚生労働省

間違えやすい有毒植物 - 東京都福祉保健局

山菜と間違いやすい有毒植物の見分け方 - 東京都健康安全研究センター 東京都薬用植物園


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