寒空のもと凛として咲くサザンカの美しさ
晩秋から花を楽しませてくれる花にサザンカがあります(今年は庭のサザンカが例年よりも早く咲きだしていました)。
冷たい空気がピーンと張りつめている早朝、凛とした風情を漂わせて咲くサザンカを見ると、師走の到来を感じます。
サザンカ、カンツバキ、ハルサザンカの3系統に大別されるサザンカ。ツバキと同じカメリア属(Camellia)ですが、花にボリューム感があるツバキに対して、地味な印象があります。しかし、ツバキに劣らず、古くから日本人に愛され、多彩な品種を誇ってきました。
サザンカの研究と品種保存に努めている園芸家の箱田直紀さんによると、「もともとサザンカは九州から四国南西部に自生していて、 野生のサザンカは一重でやや小ぶりの白い花だった」そうです。
花びらが薄く、日差しが強いとどこか萎れたような感じになるということでした(日差しが弱まると花に元気が戻るそうです)。
そして、「野生状態のサザンカのなかで変異種が生まれたり、ヤブツバキとの自然交雑があったりして、サザンカ群のほかにカンツバキ群やハルサザンカ群ができてきた」ということでした(八重咲きや濃紅色のサザンカ、あるいは春咲きサザンカは、ツバキの性質が影響しているようです)。
日本人はそうしたサザンカを珍しい花として注目し、栽培してきました。箱田さんの話では、とりわけ江戸の園芸が盛んだった文化文政期の江戸サザンカ、明治期の肥後サザンカに、サザンカ園芸の画期を見ることができるそうです。
さて、国立歴史民俗博物館くらしの植物苑で「冬の華・サザンカ」展が始まりました(会期は1月31日〈日〉まで)。
清楚な一重咲きや八重咲き、万重咲きの花、あるいは紅色や薄いピンク色、花びらの縁に紅をさした花等々、受け継がれたサザンカが並んでいます。多彩な展示と解説に、日本人の、そして箱田さんの'サザンカ愛'が溢れていました。
開催期間:2015年12月1日(火)~2016年1月31日(日)
取材協力:国立歴史民俗博物館くらしの植物苑
(元『趣味の園芸』編集長 原田)
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【園芸LOVE 原田が行く】は、「みんなの趣味の園芸」スタッフであり『趣味の園芸』テキスト元編集長の原田による園芸エッセイです。