野菜の味がする!!~『1+1の和の料理~単純こそがおいしい理由』
若い頃、週末になると気分転換をかねて、『きょうの料理』テキストを片手に男の料理を実験していました。
狙いは旨い酒の肴をつくること。乏しい知識と技術、限られた装備と時間では凝ったものはできませんでしたが、単純な料理で旨い酒が飲めたものでした。
この古い記憶を呼び覚ます「焼き茄子」が表紙に掲載された本に遭遇してしまいました。タイトルは『1+1の和の料理~単純こそがおいしい理由』。
2014年度『NHK趣味の園芸 やさいの時間』12回連載の「ひと皿の土巡り」を一冊にまとめたものです。
本を開けば目にもおいしい料理がズラリ。日本の伝承・伝統文化の普及に努める著者・松本栄文さんこだわりのレシピのオンパレードです。
頭のなかでイメージクッキングするうちに、「今宵の酒肴」に試したくなりました。
選んだのは、冬なので「青菜の豆腐粥」。小松菜、木綿豆腐、生姜、片栗粉があれば簡単にできそうです。
小松菜を細かく切り、木綿豆腐を細かく賽の目切りにし、鍋で煮ると、あっという間に完成。おろし生姜をのせ、出来たてをハフハフしながら口に運ぶと......、「小松菜の甘みが広がっていく~!!」。
そしてぬる燗の日本酒をグイッと飲む、まさに至福のときでした。
だしを使わず、小松菜と木綿豆腐の味覚の共演を 塩と生姜とわずかな醤油で支えている、ただそれだけなのにこの味わいの深さとは......!!
驚いたのは、小松菜の味の豊かさです。著者の松本さんが指摘するとおり、単純ゆえに 野菜の味や食材の魅力が引き出されるとはこのことなのだ、と改めて感心するばかりでした。
収載されている料理は53レシピ。皆さんもぜひ試してみてください。野菜に潜む豊かな味わいと出合えます。
(小生は、次は「菊味にんじん」か、それとも「宵夜鍋」か。)
(元『趣味の園芸』編集長 原田)
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【園芸LOVE 原田が行く】は、「みんなの趣味の園芸」スタッフであり『趣味の園芸』テキスト元編集長の原田による園芸エッセイです。