復活!南部太ネギ~郷土の野菜をよみがえらせた名久井農業高校生
郷土の野菜「南部太ネギ」を復活させ、普及させようと、青森県立名久井農業高校の生徒たちが頑張っています。
南部太ネギは昭和40年代、青森県の県南一帯、いわゆる南部地方で広く栽培されていました。しかし、採算性の問題等から栽培農家が減り、4年前には1軒になってしまったのです。
「郷土の伝統野菜を絶やしてはいけない!」、立ち上がったのが地元の名久井農業高校伝統野菜班でした。
顧問の赤坂圭一先生に話を聞いてみました。
ネギは軟白部が多い太ネギ(長ネギ)と青い部分が多い葉ネギがありますが、南部太ネギは下仁田ネギと同じ系統の太ネギでした。軟白部が30センチ程度、青い部分が60センチ程度(下仁田ネギをやや大きくした感じです)。柔らかい食感、そして加熱すると甘みが増すことから、鍋料理や天ぷらなどに適しているそうです。
スーパーなどで販売されている根深ネギ(長ネギ)との違いは、南部太ネギは軟白部がふっくらとしていて、青い葉の部分も柔らかくて美味しいところです。しかし、この柔らかさが南部太ネギの栽培を難しくしていました。強風で折れてしまうくらい地上部が柔らかなことから、機械を使った土寄せ作業ができず、人手がかかるために採算性が悪くなり、栽培農家が減ってしまったのです。
効率的な栽培を探せ――。決め手は農業雑誌で紹介されていた「縦穴法」でした。
元肥をたっぷりもった高い畝(高さ30センチほど) をつくってマルチングし、そこに深さ30〜40センチの穴を掘り、苗を植えることで土寄せ作業を省くことに成功しました。(播種4月中旬、苗の植え付け6月上旬、収穫11月中旬〜12月。)
先輩から南部太ネギ復活のためのプロジェクトを受け継いで4年、今では栽培農家8軒、栽培面積32アールになりました。流通は地元周辺が中心ですが、2014年からは東京の高島屋や伊勢丹でも販売されるようになったそうです。
名久井農業高校の畑で育つ南部太ネギ。かつては南部地方で広く栽培されていた
加熱すると甘みが際立つ。南部地方の伝統料理せんべい汁に入れても美味!
なお、青森県立名久井農業高等学校伝統野菜班の活動「南部太ネギで地域を元気に」は、国連生物多様性の10年日本委員会による「生物多様性アクション大賞 2015」で「セブン-イレブン記念財団賞」を受賞しました。
取材協力/写真提供:青森県立名久井農業高等学校伝統野菜班
(元『趣味の園芸』編集長 原田)
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【園芸LOVE 原田が行く】は、「みんなの趣味の園芸」スタッフであり『趣味の園芸』テキスト元編集長の原田による園芸エッセイです。