大河ドラマの舞台「信州上田・真田の里」を園芸的に眺めると......
1月10日から始まったNHK大河ドラマ「真田丸」。
舞台地の一つ 「信州上田・真田の里」には記憶に残る風景があります。
かつて長野県青木村のアイリスの郷を訪ねた帰途(アイリスの郷は残念ながら2008年、閉園)、上田城跡公園で珍しいシダレグワに釘づけになりました。
クワは英名でマルベリー、当時、ベリー類は人気植物だったことから、「クワの木の枝垂れ、シダレグワが見直されている!?」と驚いたものでした。
じつはクワは上田市の歴史と関係がありました。
上田市にシダレグワの由来を尋ねると、上田城跡公園の二の丸橋から東虎口櫓門に通じる園路80メートルに30本、今も残されていました。これに上田市にある信州大学繊維学部附属農場の情報を重ねると、シダレグワは真田の里の産業史を物語る植物だったのです。
上田は「上田紬」で知られ、「蚕都・上田」といわれるほど絹産業が盛んでした。絹といえば養蚕、養蚕といえばクワです。
1934(昭和9)年、現在の上田東高校の前身である長野県小県蚕業高等学校で育苗されていたシダレグワを、今から約30年前、当時の信州大学繊維学部の押金健吾教授が上田市から依頼されて附属農場で育て、1987(昭和62)年3月、植栽したのでした。
真田の里は見どころが豊富です。上田電鉄別所線終点の別所温泉駅周辺は「信州の鎌倉」といわれ、神社仏閣が多く、幽玄な雰囲気に包まれています。
その一つ、北向観音には、過去、幾度も映画やドラマ化された「愛染かつら」所縁のカツラがあります。原作者・川口松太郎が別所温泉に逗留した際、この樹に着想を得たといわれているそうです。
また別所温泉のツツジが美しい温泉宿、臨泉楼柏屋別荘。ここにはノーベル文学賞作家・川端康成が『花のワルツ』を書いた客室があります(小説に登場する温泉地が別所温泉だそうです)。
「真田丸」は「真田の里」の園芸的な風景を呼び覚ましてくれました。
取材協力:上田市/信州大学繊維学部附属農場/臨泉楼柏屋別荘
(元『趣味の園芸』編集長 原田)
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【園芸LOVE 原田が行く】は、「みんなの趣味の園芸」スタッフであり『趣味の園芸』テキスト元編集長の原田による園芸エッセイです。