地上31メートルの空中庭園は花盛り~コマツビル屋上庭園の50年
屋上庭園はいつも花盛り――。
都市部ビルの屋上緑化は今日的話題ですが、すでに50年も前から東京のど真ん中で屋上庭園が実践されている例があります。
都心の溜池交差点にある、建設機械メーカーとして知られるコマツ本社ビルです。
コマツビルが現在の赤坂2丁目、溜池交差点の場所に竣工したのは1966(昭和41)年。その時、当時の河合良成会長の発案でベニヤエシダレ等を配した桜庭園(面積360㎡)が誕生しました(河合会長は1962〈昭和37〉年に日本花の会を創立する等、園芸愛の人でした)。
その後2001年に果樹や季節の草花によるデッキガーデン(490㎡)が、2003年には山野草を中心にしたスクエアガーデン(220㎡)が加わり、屋上庭園は充実していきました。
小生が訪れた4月上旬、庭ではシンボルツリーのベニヤエシダレが咲き始めていました。目を転じれば、シャクナゲやツツジ、ヤマブキ、エビネ、ユキモチソウ、クレマチス・アーマンディーのアップルブロッサム等々の花も咲き、春本番を告げていました。
多彩な屋上庭園の管理を手がけているのは公益財団法人日本花の会、現在のガーデナーは猪俣徳二郎さんです。猪俣さんは、「春夏秋冬、何か花が咲き、果実がなるように工夫をしています」とのこと。
その言葉通り、こだわりの園芸植物がそこここに顔を覗かせ、隅々の植物からも目を離せない「趣味の植物園」という様相でした。
日本花の会常務理事の金富信行さんは、「ビルの建設時、躯体を強化し、排水性と通気性のよい土壌を入れて庭をつくりました。桜庭園の土の深さは60cmです。以前調査したところ、ビルの温度が3~4℃、下がっていました。屋上庭園は社員のミーティング場所として、あるいは憩いの場として活用されています」と語っていました。
園芸愛から誕生して半世紀、日々、手入れがされているコマツビル屋上庭園。今や多くの野鳥が訪れ、昆虫が棲み家とするような、文字通り大都会のオアシスになっています。
●コマツビル屋上庭園は毎週金曜日14~16時、公開されています(最終受付15時30分。金曜日が休日や年末年始、夏季休業期間中などの場合は非公開)
取材協力:コマツ/公益財団法人 日本花の会
(元『趣味の園芸』編集長 原田)
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【園芸LOVE 原田が行く】は、「みんなの趣味の園芸」スタッフであり『趣味の園芸』テキスト元編集長の原田による園芸エッセイです。