人の歴史、花の歴史に触れる夏~シーボルトの日本博物館
7月12日から国立歴史民俗博物館(千葉・佐倉市)で「よみがえれ!シーボルトの日本博物館」展が開催されています(会期は9月4日〈日〉まで)。
江戸後期、日本に近代西洋医学を伝えたことで知られるドイツ人医師のシーボルト(1796-1866)。
その一方で、オランダのライデンに残した博物学コレクション、あるいは採取したアジサイにハイドランジア・オタクサ(Hydrangea otaksa)と命名した話から、小生はシーボルトについて18~19世紀のプラントハンター的な存在だったのだろうか、とも考えていました。
(国立歴史民俗博物館くらしの植物苑の「シーボルツ・チルドレン」コーナーには、アケビやフジ、クワ、トチノキ、ケヤキ、イロハモミジ等、彼が故国に持ち帰った植物が栽培されています。)
しかし、今回展示された多彩多様な文物は、シーボルト像を再認識させるものでした。それらはドイツの古城、ブランデンシュタイン城に眠っていたコレクションで、シーボルトが「日本とはどのような国か」を伝えようとするものだったのです。
1823(文政6)年、出島のオランダ商館付医官として来日したシーボルト。シーボルト事件で国外追放となりますが、幕末日本が開国すると1859(安政6)年、ふたたび来日、1862(文久2)年まで日本で生活をしました。
その間、シーボルトはさまざまな「日本」を収集しました。動植物ばかりか、染色や工芸、習俗や信仰を物語るもの等々......。
長崎・出島出入りの日本人絵師、川原慶賀には、博物学的な絵のほか、日本の風景や人々の暮らしぶりを描かせました。シーボルトは「日本博物館」を ヨーロッパの人々に展開しようとしていたのです。
18~19世紀、ヨーロッパ社会は日本にも熱い眼差しを向けていました。そうしたとき、動植物のみならず民族学的な視点から「日本という国」をコレクションしたシーボルト。
小生が認識していた植物学的シーボルト像はその一側面だったのでした。
取材協力:国立歴史民俗博物館
●関連番組
NHK Eテレ「日曜美術館 シーボルト 幻の日本博物館」
7月24日 午前9時00分~
●「よみがえれ!シーボルトの日本博物館」展 巡回予定
2016年9月13日(火)~11月6日(日)江戸東京博物館
2017年2月18日(土)~4月2日(日)長崎歴史文化博物館
2017年4月22日(土)~6月11日(日)名古屋市博物館
2017年8月10日(木)~10月10日(火)国立民族学博物館
(『趣味の園芸』 シニアエディター 原田)
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【園芸LOVE 原田が行く】は、「みんなの趣味の園芸」スタッフであり『趣味の園芸』シニアエディター・原田による園芸エッセイです。