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お花畑から地球社会を考えた!~緑陰読書『NHKブックス 気候変動で読む地球史‐限界地帯の自然と植生から』

お花畑から地球社会を考えた!~緑陰読書『NHKブックス 気候変動で読む地球史‐限界地帯の自然と植生から』
標高2,900メートルのお花畑に咲くチングルマ。お花畑は聖岳山頂と奥聖岳山頂の間の稜線にある凹地にあるという(写真撮影:水野一晴さん)

暑い夏、ギャラリー園芸とばかり、快適な屋内に展示された涼しげな高山植物の写真を見ることがあります。

 

可憐な花が人知れず咲いている光景に見入ってしまう一方、標高の高い場所にあるお花畑の写真を見ると、「どうしてここにこれほどの花たちが咲いているのだろうか!?」という素朴な疑問もわいてきます。

 

こうした「お花畑のなぜ!?」を解き明かそうと、30年以上、世界の高山にお花畑を訪ね、フィールドワークを重ねてきた研究者がいました。

 

NHKブックス『気候変動で読む地球史‐限界地帯の自然と植生から』の著者、水野一晴さんです。

 

たった一人でアフリカの高山を歩き続ける植生調査もしばしばだったようです。

 

水野さんによれば、お花畑は限界地帯に出現するものなので、環境変化といった影響を受けやすい存在だそうです。それゆえに、お花畑の調査は今の地球社会が直面している温暖化の問題を映す鏡でもあるというのです。

 

地形や気候といった条件が絶妙に一致したとき出現するお花畑。そのお花畑の変遷が物語るのは何か――。

 

アフリカ・ナミブ砂漠の木の化石から始まり、大陸移動や氷河期といった地球史的な要因もまじえながら、水野さんは植生調査の核心や興味深いサイドストーリーを展開していきます(ナミブ砂漠のキソウテンガイの話も登場します)。

 

詳しくは本書を読んでいただきたいのですが、植生とはかくも微妙で面白いものなのか、随所で考えさせられてしまいます。

 

さて、本書を読んでいて気になった話。山頂の氷河が輝くゆえに、麓住民の信仰を集めてきたアフリカのキリマンジャロやケニア山。その氷河が10~20年で消滅するというのです。

 

そのとき、住民たちを支えてきた生活文化はどうなってしまうのだろう......!?

 

「お花畑から地球の来し方行く末を考える」――植物地理研究の魅力の一端に触れる一冊でした。

 

 

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NHKブックス『気候変動で読む地球史‐限界地帯の自然と植生から』

著者/水野一晴

発売日/2016年08月25日

 

 

(『趣味の園芸』 シニアエディター 原田)

 

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【園芸LOVE 原田が行く】は、「みんなの趣味の園芸」スタッフであり『趣味の園芸』シニアエディター・原田による園芸エッセイです。

お花畑から地球社会を考えた!~緑陰読書『NHKブックス 気候変動で読む地球史‐限界地帯の自然と植生から』
ケニア山第一のルイス氷河。氷河は後退が続いているという(写真撮影:水野一晴さん)
お花畑から地球社会を考えた!~緑陰読書『NHKブックス 気候変動で読む地球史‐限界地帯の自然と植生から』
ケニア山第二のティンダル氷河では、氷河が溶けた場所にキク科植物のセネシオ・ケニオフィトウムが育ち、黄色の花を咲かせていたという(写真撮影:水野一晴さん)
お花畑から地球社会を考えた!~緑陰読書『NHKブックス 気候変動で読む地球史‐限界地帯の自然と植生から』
美しいケープ植物界の様子(小生も昔、その存在を聞いて以来、関心を抱いていた)。南アフリカのケープタウン近くの限られたスポットに8,550種の植物があるという(写真撮影:水野一晴さん)

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