伴 琢也さんにブルーベリーについて聞いてみた!<前編>『趣味の園芸』7月号こぼれ話
今回からウェブサイト「みんなの趣味の園芸」だけで読める連載「テキストこぼれ話」が始まります。『趣味の園芸』テキストの特集に関連して、おもしろそうなことや役立ちそうなことなどを載せていきます。お楽しみに!
今回は、『趣味の園芸』7月号で「お宅のブルーベリーをレスキュー!」の講師を務めた伴 琢也さんに、ブルーベリーにまつわるあれこれを伺います。
伴 琢也(以下、伴):こんにちは、東京農工大学の伴 琢也です。僕はどうやったら日本でブルーベリーがおいしくつくれるかということを研究しています。
編:伴さんには3年連続で、『趣味の園芸』のブルーベリー特集にご登場いただいています。講師を務めるなかで、何か苦労したことはありますか。
伴:僕は、誌面に載せる情報は、全部原著にあたって調べています。栽培に関する論文や専門書、アメリカの国や州の試験場で、農家向けに作成している資料も取り寄せて、全部読みました。それが一番苦労しました。
編:ブルーベリーの栽培情報はインターネットも含めていろいろなところに載っていますが、伴さんの書かれていることはすごく正確ですね。
伴:きちんとしたいとは思っていますね。講師を務めるのは、名誉なことなので。もう亡くなっちゃいましたけど、じいさんばあさんが生きていたら涙を流して喜んだと思います。
僕が園芸に興味を持ったのは、母方の祖母の影響が大きいんです。幼稚園の頃、祖母といっしょに「さし木」していました。
編:幼稚園で「さし木」ですか!
伴:祖母のところには庭があって。幼稚園のときに、モクレン、センリョウ、マンリョウ、トクサ、全部知っていました。
小学生のときは、実家のベランダでエンドウを育てていました。東向きで日照量が少ないので、自由研究として白いマルチを敷いたり、アルミホイルを敷いたり。どうやったらうまく光を反射させられるか試していました。
中学生のときに、ちょうどつくば市で科学万博が開催されて。ポマトが展示されていました。地上部がトマトで、地下部がジャガイモというもの。それでおもしろいなと思って、農学部に行きたいと思い始めました。
編:ずっと園芸関係に興味を持たれていたんですね。
伴:はい。それで受験して大学に入りました。その頃、世の中では「青いバラ」がブーム。ご多分に漏れず、僕も青いバラを研究したいと思っていました。
ところがその頃は、インターネットもオープンキャンパスもなくて、大学でどんな研究が行われているのか、わからなかったんですね。大学2年生の終わりに研究室を決める段階になって、花の研究室に相談に行ったら「うちでは対応できません」と言われてしまった。
じゃあ花の研究室に行ってもしょうがないかな、って思っているときに、果樹の先生が、「バラの色素とブドウの色素は同じだからうち来たら」と声をかけてくれました。それで、ブドウをやってみようと。
編:じゃあ最初はブドウの色素を研究されていたのですか。
伴:はい。特に'巨峰'の色づきをよくするための技術を開発していました。初めてブルーベリーと出会ったのは約17年前、島根大学の助手になったときです。島根大学の農場に行ったらブルーベリーがたくさん植えてあって、興味を持ちました。
ブドウもブルーベリーも同じアントシアニンという色素を持っています。果実の成熟とともに、果皮にアントシアニンが蓄積していきます。その調節には植物ホルモンが関与しているのですが、ブドウではアブシシン酸、ブルーベリーではエチレンが大きな役割を果たしています。おなじ色素をつくるのに、その色素を制御するメカニズムが違う、そこがおもしろいなと思いました。
ブルーベリーに関する情報を集めているうちに、手つかずの研究分野がたくさんあることに気がつきました。それで、ブドウで研究してきたことをブルーベリーに応用したらおもしろそうだぞ、と。
編:「色素」ということで興味はつながっているんですね。
伴:はい。ブルーベリーの研究も最初は色素が対象でした。ブドウは房の形で店頭に並びますが、ブルーベリーは一粒ずつです。これって、よく考えたら不思議じゃありませんか? 収穫前はブドウもブルーベリーも房状で、似た形をしているのに。
編:えっ、ブドウはあの形だからブドウなのだと思っていましたが......。房状になるのは、ブルーベリーも同じなのですね。
伴:はい。でも、ブルーベリーはブドウと違い、同じ房のなかでもバラバラに成熟します。一つの房のなかにはアントシアニンがしっかり蓄積した青い果実もあれば、未熟な緑色、成熟が始まったばかりの赤い果実もあります。ブルーベリーが房状で出荷できないのは、このためです。ブドウのように、ひと房のなかで成熟時期をそろえることができれば、成熟したものから一粒ずつ収穫しなくてもよくなります。
最近では、ブルーベリーでも房のなかで成熟が揃いやすい品種が出てきています。将来的には、ブルーベリーもブドウのような形で店頭に並ぶかもしれません。
編:それはすごい! 伴さん、ブルーベリーについて、もっと教えてください。
『趣味の園芸』7月号はブルーベリー特集! 最新号の見どころを紹介
--------------------------------------------------------------
『趣味の園芸』テキストの特集に関連して、担当編集者による講師へのインタビューなどをウェブ限定で公開します。(毎月2回更新予定)