伴 琢也さんにブルーベリーについて聞いてみた!<後編>『趣味の園芸』7月号こぼれ話
前編では、伴さんがブルーベリーを研究することになったきっかけや、そのおもしろさについて伺いました。後編では引き続き、ブルーベリーのユニークな性質についてお話しいただきます。
編:他にはブルーベリーのどんな点がおもしろいのでしょうか。
伴 琢也(以下、伴):今メインでしている仕事の一つ、 「菌根菌」がおもしろいですね。
編:キンコンキン? いったい何ですか?
伴:菌根菌は、カビやキノコの仲間です。実は、自然界に存在するブルーベリーの根には、必ず菌根菌が住んでいます。菌根菌はブルーベリーの根っこの細胞の中に入り込んで、ブルーベリーが光合成してつくった養分をもらっているのです。
編:えっ、根っこにカビをすまわせているんですか。
伴:はい。ブルーベリーにもメリットはあるんです。菌根菌は、いろいろなものを分泌して、ブルーベリーが直接吸収できない養分を吸収できる形に変えています。自然界ではブルーベリーは菌根菌がいるおかげで、酸性土壌で生きていけるのではないかと言われています。
編:共生関係ということですか。
伴:ある状況下ではそうです。ところが、自然界に生えているブルーベリーを畑に植えて、人間の手で肥料を与えるようになると、菌根菌は少なくなってしまいます。
養分が少ない状況下では共生関係を結んでいるくせに、いざ養分が十分得られるとなると、追い出してしまうのです。
編:いいように使われている感じがします......。菌根菌はどこから来るのですか。
伴:どこから来るのかはわかりません。さし木をしますよね。半年くらい経ったら、もういますね。鉢植えで育てても、ほぼ絶対にいます。ところが、水耕栽培すると、少ない。おもしろいでしょう。
さらにおもしろいのは、菌根菌のなかには共生しなくても生きていけるものがあります。それなのに、何かのきっかけでブルーベリーに入る。何のために入っているのかは、よくわからない。
編:聞けば聞くほど不思議です。そもそもカビって、植物にとってよくないものだというイメージがあります。
伴:そうですね。菌根菌は、ブルーベリーの根の表面に穴を開けて、そこから菌糸を出します。穴をあけるというのは、いわゆる病原菌と同じ行動です。それなのに、なぜ菌根菌は許されて、病原菌は許されないのか。そのあたりも、まだよくわかっていないのです。
編:そうなんですか。まだ研究が始まったばかりなのですね。
伴:はい。僕が研究を始めたのは2011年くらいですが、国内でこの研究をしている人は、まだすごく少ないです。 ちょっと待っていてくださいね。
(シャーレを持ってくる)これが菌根菌です。一つ一つ種類が違います。今、国内のいろいろなところから菌を集めてきて、それがどのような性質を持っているかを明らかにしています。将来的には、生きている肥料として菌根菌をブルーベリーに与えることができるようになるかもしれません。
編:ブルーベリーの研究には、まだまだいろいろな可能性が広がっているのですね。 ところで、伴さんはご自宅でブルーベリーを育てていらっしゃるのですか。
伴:自宅では育てていません。研究室で十分ですからね。(笑) ただ、老後は、午前中はブルーベリーを育てて、夕方は近所の子どもの宿題を見て、朝と夜は釣りをする、という生活をしたいなと思っていて。
編:それはいいですね。
伴:じつは、妻の実家がブルーベリー農家になったんです。僕がブルーベリーの話をしているうちに義父が気になりだして、10年ほど前に植えつけました。約10a栽培しているのでブルーベリー食べ放題になっていますね。
編:本当ですか! 摘みたてのブルーベリー、すごくうらやましいです。
伴:みなさんにぜひともお伝えしたいのは、摘みたての果実のおいしさは、食べてみなければ絶対にわからないということ。ブルーベリーは甘酸っぱいと思われていますが、それは間違い! ほとんどの方は、まだ本当においしい果実を召し上がったことがないはずですよ。食べてみるとブルーベリーに対する印象がガラッと変わります。
編:摘みたての果実を食べることをモチベーションにすれば、日々の水やりなどもがんばれそうです。
伴:ポイントさえおさえれば、決して難しくありませんからね。まだブルーベリーを育てたことがない方も、『趣味の園芸』7月号を読んで、ぜひ育ててほしいなと思います。
次回は、8月号「真夏の3大プランツ」特集に関連して、8月下旬に更新予定です。お楽しみに!
『趣味の園芸』7月号はブルーベリー特集! 最新号の見どころを紹介
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『趣味の園芸』テキストの特集に関連して、担当編集者による講師へのインタビューなどをウェブ限定で公開します。(毎月2回更新予定)