藤川史雄さんにティランジアについて聞いてみた!<後編>『趣味の園芸』8月号こぼれ話
前編では、藤川さんの初めての園芸体験や、ティランジアとの出会いについて伺いました。後編では引き続き、ティランジア栽培の難しさ、面白さについてお話しいただきます。
編集部(以下、編):置き場を変えたり、いろいろ試していくうちにティランジア栽培のコツをつかんだのですか?
藤川史雄(以下、藤):水やりに関しては、「あげた方が良いんだろうなぁ」と思いながらも、やっぱり初めはビクビクしちゃって。水をやり過ぎるとダメになる植物もいっぱい知ってたからね。
ある日、ベランダに出しておいた株が一晩雨にあたったら、翌日、見事に葉がピーンとなったのを見て、「あぁ、水をやってもいいんだ」と。
編:予想は出来ていたけれど、実際に体感してみて、はじめて確信できたんですね。
藤:ティランジアに限らず、栽培法っていうのは、実際に身をもって体感してはじめて、本当に適した方法というのが分かると思う。基本のセオリーはあっても、やっぱり環境はそれぞれだし、品種や個体によっても全然違ったりするから。
だから僕も、今までに枯らしたり、ダメにしたりした株がたくさんある(笑)
でも同時に、自分でおかした失敗は身について、全部いまにつながっていると思う。
編:失敗した方が、なにがダメだったんだろう、とより真剣に考えるようになる気がします。
藤:通気口に突っ込んだのなんて、今考えれば、完全に失敗だよね(笑)風通しはいいんだけど、一日中、まともな日は当たらないんだから。
そんな風にしておおかた栽培のコツが分かるようになって、今みたいな温室を持つようになったあとも、失敗の原因が分かるのに、何年もかかったこともありますよ。
編:それはどんなことでしょう。
藤:ティランジアの冬越しの方法に関して、しばらく試行錯誤していた時期がありました。
成長のスピードを上げようとして、冬も温室内の湿度を上げて、水も通常通りにやっていたら、調子が悪くなってしまった。
3年、原因が分からないままだったけれど、夏型の多肉と同じように、冬は水を抑え気味、湿度も下げ気味で管理したら、うまくいくようになって。低温で水が多いのがダメみたい。
編:ところで、育てはじめて感じたのですが、ティランジアって、完全にご臨終してしまったのか、まだ復活させられるのか、ちょっと分かりにくくないですか?
藤:たとえば、中心にある葉が黒くなってスポッと抜けてしまうパターンがあるけれど、そこであきらめずに、つけ根まで茶色くなった葉をどんどん外していって、まだ元気な葉がないか探した方がいい。まだ生き残っている葉があれば復活できる場合もあるから。
ティランジアにも、茎があるから、茎の部分まで完全に腐ってしまっていたら難しいことが多いけれど、そうでないならまた葉が出てくる可能性はある。
実際に、もうだめかも、と思っていた株が新しい葉を出したことも何度もあります。
編:なるほど。葉が枯れこんだくらいではうろたえないようにします...!(笑)
藤:まあ、でも、逆に、外の葉は一見まだ大丈夫そうでも、芯が完全にやられていてどうにもならない場合もあるけどね。「お前はすでに死んでいる」状態。
編:こればかりは、経験しないと分からなそうです。
葉のつけ根が黒くなっているが、芯まで腐ってはいない、ということで、こちらは「まだいける」株だそう。
藤:いろいろと経験を積んできたけれど、思い込みが覆されることもあって。 あたりまえだけど、植物はみんな、「生き延びよう」「なんとかして再生しよう」という意志を持っている。 だから、こちらがもうダメかも、と思っても、復活する場合はやっぱりありますよ。
編:ちなみに、温室内にはティランジアが数えきれないほどありますが、「一番のお気に入り」というのはあるんでしょうか。
藤:無いね。これが一番、というのは無いです!(即答)
そういうのがあればかえって目をかけてやれるのかもしれないけど。 もう、あれもこれも気になっちゃって、気づけば、株もどんどん増えて、面倒見切れなくなっちゃって、あぁ、どうしよう......という感じ(苦笑)
サボテン屋さんとかの綺麗に整頓された温室にはちょっと憧れるなぁ(笑)
編:でも、ティランジアは形がどれも個性的で、思わず集めたくなってしまいますね。
藤:園芸の主流は今も昔も、「花」だけれど、ティランジアみたいに葉の形が面白いと、花のない時期でも楽しめるのが魅力。
見た目の面白さから入っても全くかまわないから、その先にある栽培の楽しさも知ってくれたら嬉しいですね。
<完>
次回は、9月号「多肉植物」特集に関連して、9月下旬に更新予定です。お楽しみに!
--------------------------------------------------------------
『趣味の園芸』テキストの特集に関連して、担当編集者による講師へのインタビューなどをウェブ限定で公開します。(毎月2回更新予定)