意外な情報がたくさん! 大森直樹さんに果樹について聞いてみた!〈後編〉『趣味の園芸』11月号こぼれ話
前編では、大森さんにおすすめ果樹・ライチの魅力をたっぷりご紹介いただきました。後編ではより詳しい育て方から世界の果樹栽培事情まで語っていただきました。
編集部(以下、編):ライチ、育てやすそうですが、収穫は苗を植えつけてから2~3年後となりますか?
大森直樹(以下、大):いえいえ。去年、花を持った枝をとり木して苗木にしているものであれば、植えつけて翌夏には収穫も可能です。
編:すぐに収穫できるじゃないですか! でも、ふつう果樹では、植えつけて最初の年は果実がなってもすべて摘み取ってしまって、木の成長を優先させますよね。
大:それが、ライチの場合は違うんです。ライチは夏よりも秋に枝が伸びます。割合で言うと、夏=3、秋=7くらいです。つまり、収穫したあとに枝が伸びるわけです。通常の果樹だと、「初年度は枝を十分に伸ばして、木を成長させて、次の年から収穫を目指しましょう」などと言いますが、ライチの場合は収穫したそのすぐあとの秋に枝が伸びて木が成長してくれるので、最初から果実をつけさせてよいわけです。
編:よいことずくめですね。なにか注意すべき点はあるのでしょうか。
大:咲いた花すべてを結実させないことです。すべて咲かせて実らせると、一つ一つの果実は大きさや味がよくなくなってしまいます。摘花が大切です。
編:受粉樹は必要でしょうか。
大:受粉樹は不要です。ただ、確実に受粉させるために、手で結構ですので雄しべと雌しべを摘まんでこすりあわせてやりましょう。
編:それだけでよいのですか。
大:ええ、ライチの花は蜜が多くて手がベトベトになってしまいますけどね。でもそのベトベトの指をなめるとものすごく甘いのです。そこも魅力のひとつと言えますよ。中国ではライチの蜂蜜が薫り高く濃厚なので高価で取引されています。
編:魅力にあふれていますね。なんだかライチを育てたくなってきました。そういえば大森さんは、ライチのように有望な果樹の視察をするため、よく海外に行かれますよね?
大:最近、スペインに行ってきました。スペインでは、カキがたくさん栽培されているんですよ。
編:カキですか!?
大:ええ。ご存じでしょうか、日本の果物であるカキの出荷量は、全世界で、1位=中国、2位=韓国、3位がスペインなのです。日本は4位です。
編:なぜスペインなんでしょうか。
大:カキだけでなく、ユズやカボス、スダチもスペインでは栽培されています。近年、パリの三ツ星レストランのシェフたちがこぞって日本食に注目しています。そこで、このような食材が広く用いられるようになり、農業国であるスペインが栽培・出荷するようになりました。
編:驚きました。もしかしたら数年後にはスペイン産のカキを私たちも食べるようになっているかもしれないんですね。
大:はい。果物においては、もはや日本は消費国なのです。しかし、果実は基本的には、とれたての完熟を食べるのが一番です。日本産の果物が少なくなってきた今こそ、自ら家庭で果樹を育て、おいしい果実を食べていただきたい、と思います。
<完>
次回は、12月号「ラン」特集に関連して、11月下旬に更新予定です。お楽しみに!
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