多肉、サボテンはどこから来た?靍岡秀明さんに多肉、サボテンについて聞いてみた!<前編>趣味の園芸2月号こぼれ話
ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」だけで読める連載「テキストこぼれ話」の第8回。『趣味の園芸』テキストの特集に関連して、おもしろそうなことや役立ちそうなことなどを載せていきます。
今回は、『趣味の園芸』2月号「多肉植物、サボテン」特集に登場した鶴仙園の靍岡秀明さんに、多肉植物、サボテンの生態、自生地での姿などについて伺います。
編集部(以下、編):昨年9月号に続き、5か月ぶりの多肉植物特集です。
今回は、前回登場が少なかったサボテンも多く紹介していただきました。
靍岡秀明(以下、靍):カテゴリーでいえば、サボテンも多肉植物のなかの一種なのですが、日本では、昭和30年代にサボテンが大ブームになったことで、多肉植物という名前が広まるより先にサボテンという名前が広まりました。
古い本などを見ると、「サボテン・多肉植物」とサボテンが先に書いてあるものが多いですね。
それが数年前から、人気が逆転して多肉植物がフィーチャーされるようになりましたが、最近はサボテンの人気も再び高まっています。
編:多肉植物は、年々種類が増えているように感じます。
靍:自生地にある個体数自体は、開発などが原因で少し減っていると思います。
ただ、ブームになると需要が増える、需要があると分かると今まで入ってこなかった種類でもどんどん輸入される、というわけで、今まで日本では流通していなかった種類が近年多く出回るようになっています。
もちろん、まだ発見されていない種類もたくさんあると思います。
編:昨年は、海外の自生地を訪れたそうですね。
靍:昨年秋、南アフリカへ行き、多肉植物の自生地をめぐりました。
自生地といっても、ほんの畳1枚分ほどのスペースに小さな株の群れがあったり。そのような限られたスペースが、国立公園のような広大な土地に点々とある上に、大半の株は過酷な環境から身を守るように、土に埋まっていたり石などに擬態していたりしています。
今、自生地では簡単に植物を見ることができる場所が非常に少なく、1年以上ぐるぐるまわってようやく自分の見たい多肉植物の産地を見つけられる、という感じだと思いました。
自生地で見つけたリトープス。株の大半は土に埋まって、ほんの少し顔を出している。(撮影:靍岡秀明)
編:どこに植物が生えているのか、全くヒントがないのですか......?
靍:いくつか手がかりはあります。
石英(せきえい)という白い石がある場所に、メセン類が生えていることが多いので、山を眺めて白くなっている部分が点々とあると、あそこらへんにありそうだ、ということは分かります。でも、ほとんど私有地だったので、入っていくことはできませんでした。
また、水が近くにないと生き延びられないので、川の近くを探すと見つかることが多いです。
編:南アフリカでは、どんな発見がありましたか。
靍:栽培のヒントをたくさんもらいました。うまく育てられていなかった種類が、思っていたよりもずっと乾いた土地で生きているのを見て「あぁ、水をあげすぎていたんだなぁ」と分かったり。
また、2月号に登場したユーフォルビア・ゴルゴニスのような「タコもの」と呼ばれる種類は、これまで春秋型種とされていましたが、現地では冬型種のものと一緒に生育していたので、今回のテキストでは「冬型~春秋型」としました。
編:さっそく発見が生かされていますね......!
靍:もちろん、南アフリカと日本では降雨量や湿度が全然違います。自生地の姿を知った上で、日本の環境に合わせた最適な栽培方法を探らなくてはなりません。
編:なるほど、もう少し具体的に、聞かせてください!
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