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ほんとうの完熟ってどういうこと? 小池洋男さんにベリーについて聞いてみた!<前編>趣味の園芸7月号こぼれ話

ほんとうの完熟ってどういうこと? 小池洋男さんにベリーについて聞いてみた!<前編...
趣味の園芸7月号で講師をつとめたさん小池洋男さんに、ブルーベリーをはじめとしたベリー類についてのお話を伺います

ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」だけで読める「テキストこぼれ話」、今月は7月号特集「ブルーベリーと3つのベリー」に関連して、ブルーベリーをはじめとした果樹栽培技術を長年研究し、ご自身も自宅でたくさんのベリーを栽培している小池洋男さんにインタビュー。

 

今回登場するのは、『趣味の園芸』7月号「ブルーベリーと3つのベリー」特集で講師を務めた小池洋男さん。 小池さんは長野県果樹試験場でリンゴとブルーベリーの研究に長年携わってきた果樹栽培のスペシャリストです。

 

編集部(以下、編):7月号ではブルーベリーをはじめとするベリー類を特集しました。家庭で育てる果樹として、ブルーベリーは人気がとても高いです。フルーツとしても身近な存在ですが、意外と日本での歴史は浅いのだと聞きました。

 

小池洋男(以下、小):そうなんです。私が大学の農学部に入ったときは、メインの研究対象はまず、お米でした。果物はまだまだ嗜好品という扱いで、当時は、リンゴ、ブドウ、モモ、ナシ、ミカンなどが研究の中心でした。

 

:ブルーベリーとの出会いも、やはり学生時代ですか。

 

:そうですね。園芸学研究室の岩垣駛夫先生に師事したことが転機となりました。

(注:岩垣氏は、日本で初めてブルーベリー生産開発に関する研究を行って、国内での栽培技術を確立した。日本のブルーベリーの父と言われる)

岩垣先生の研究室に入り、ブルーベリーの面白さを知って、卒業論文もブルーベリーについて書きました。

卒業後は長野の園芸試験場に就職しましたが、そこでもリンゴと並行してブルーベリーの研究は続けていました。当時の上司には「リンゴ9割、ブルーベリー1割で」と言われたのですが、ブルーベリー研究への理解を得て、長野にブルーベリー栽培を導入すべく、研究を続けました。

 

:今では国内生産量第1位になるなど、ブルーベリーと言えば長野、というイメージもあります。

 

:もともと、文字通り、長野にはブルーベリー栽培が根付くための土壌がありました

ご存じのように、ブルーベリーは酸性の土を好みます。浅間山山麓の火山灰酸性土壌には野生のブルーベリーの仲間が自生していたのです。

軽井沢の別荘地の外国人たちは祖国にあるブルーベリーを懐しんで、このクロマメノキの果実を「浅間ベリー」と呼び、親しんでいました。

この地域では、比較的早い段階から、ブルーベリーが果物として認識されていたのだと思います。

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浅間山に自生しているクロマメノキ(通称「浅間ベリー」)。(撮影:小池洋男)

編:野生のブルーベリー、どんな味がしたのでしょう。

 

:基本的には酸味が強く、あまり量も獲れなかったようです。

クロマメノキは現在では採取禁止となっていますが、昔、収穫していた地元の方にこんなお話を聞きました。

「浅間山の火山灰が降ったあと数年間は、大きな実が採れる」。

降灰によって古い地上部の枝が枯れ、残った地下部から多発する新しい枝に更新されたことで、大きな果実がたくさんついた、というわけです。

 

:まさに、7月号の「収穫量アップ!」の記事でも紹介した、古い枝は更新する、という話と繋がりますね。

 

:カナダでは、ローブッシュ・ブルーベリーという丈の低い這い性のブルーベリーが自生地を管理する方法で生産されているのですが、そこでの農法は、2年に1度、一面のベリーを焼き払い、地上部をまっさらにして新梢を発生させることで、収穫量と品質を維持するというものです。これも、定期的に枝を更新するという点で、共通しています。

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小池さんの自宅で収穫したローブッシュ・ブルーベリー。果実は小ぶりだが甘いという。(撮影:小池洋男)

 

:大胆かつシンプルな農法ですね! ハイブッシュだけでなく、ローブッシュ・ブルーベリーという種類もあるとは知りませんでした。

 

:海外には、日本では出回っていないベリーがまだまだたくさんあります。かつてのブルーベリーやラズベリーがそうであったように、今後も、今まで知らなかったベリーが登場してくると思いますよ。

 

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北イタリア・南チロルの屋外市場。手前右の黒い実がヨーロッパ自生のビルベリー、手前左はカウベリー。奥にはブルーベリー、ラズベリーも並ぶ。(撮影:小池洋男)

 

編: ビルベリーなども、最近、健康サプリなどで名前を聞くようになってきましたね。

 

小:じつは、 園芸店で売られているビルベリーの苗木は、ヨーロッパ自生のビルベリーではなく野生の別種なのですが......(苦笑)。

ヨーロッパのビルベリーは、果肉が赤く、自生地以外での栽培が難しいです。冷凍では本物の果実も輸入されていますが、多くはサプリなどの原料にされているようです。

 

: なんと! 本物のビルベリーの苗木が出回る日もくるのでしょうか。

まだまだ聞きたいベリーの話、続く後半では、家庭栽培のキーワード「完熟」についてお聞きします。

 

後編はこちら

 

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小池洋男(こいけ・ひろお)

園芸研究家/長野県果樹試験場長などを歴任。現在は長野県でリンゴやブルーベリーなどの果樹の栽培を研究するかたわら、国内外の果樹産地を訪ね、研究交流を続けている。

 

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『趣味の園芸』7月号 最新号の見どころを紹介

 

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「みん園」限定! 趣味の園芸テキストこぼれ話

『趣味の園芸』テキストの特集に関連して、担当編集者による講師へのインタビューなどをウェブ限定で公開します。(毎月2回更新予定)

 

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