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ほんとうの完熟ってどういうこと? 小池洋男さんにベリーについて聞いてみた!<後編>趣味の園芸7月号こぼれ話

ほんとうの完熟ってどういうこと? 小池洋男さんにベリーについて聞いてみた!<後編>趣味の園芸7月号こぼれ話
趣味の園芸7月号で講師をつとめたさん小池洋男さんに、ブルーベリーをはじめとしたベリー類についてのお話を伺います。写真右は、小池さんの自宅で収穫した果実(撮影:小池洋男)

ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」だけで読める「テキストこぼれ話」。今月は7月号特集「ブルーベリーと3つのベリー」に関連して、果樹栽培のスペシャリスト・小池洋男さんが登場します。

 

前編では、小池さんとブルーベリーの出会い、日本のブルーベリー栽培の成り立ちについて伺いました。

 

編集部(以下、編):小池さんは、自宅でも、たくさんのベリー類を育てられていますね。

 

小池洋男(以下、小): ブルーベリーを中心に、ラズベリー、ブラックベリーなども育てています。長野県なので、寒さに強いハイブッシュタイプが中心ですが、いろいろかけ合わせて、オリジナルの品種を楽しんでいます。

 

:ブルーベリーの品種は日本だけでも数百種あるそうですが、ずばり、小池さんが「おいしい」と思われる品種とは何でしょう。

 

:おいしさには好みがあるのであくまで個人的な感想ですが、'コリンズ'や'スパルタン'などが香りもよくて好きですね。

でも、きちんと完熟すればどんな品種でも、それぞれの香りと糖酸バランスが味わえて、おいしいものですよ。

 

お店で買う果実は完熟前の段階で収穫されているものも多い、という話をよく聞きます。だからこそ「完熟」は家庭栽培の醍醐味ではあるのですが、具体的には、どのくらい違うものなのでしょう。

 

果実が熟す過程のイメージを簡単に示します。

 

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ブルーベリーの果実は大まかに①肥大、②胚の成熟(種子内)、③成熟~完熟、というステップを踏んでいきます

花が終わり、①果実そのものを肥大させる時期、その後に、②種子内の胚を成熟させる時期を経て、最後の③成熟~完熟期には果実をさらに肥大させ、糖度を上げ、逆に酸度を下げます

完熟期を待ってから収穫することで、甘くて大きい完熟果実が味わえるというわけです。

目安としては、完全にブルーに色づいてから、3~5日で甘みがぐっとアップするので、そこが収穫適期です。それ以上経つと、かえって水分が抜けたり、酸味が抜けて味が薄くなったりしてしまいます。

 

市販のブルーベリーのなかには、流通にかかる時間なども考慮して、この完熟期を待たずに、色づいた果実をやや早めに収穫してしまうものもあります。

ブルーベリーはキウイや西洋ナシなどと異なり、追熟しない(収穫後に糖度が増えない)果樹ですが、色づきだけは収穫後も進むので、やや早めに収穫した果実でもお店に並ぶころには綺麗なブルーになっているというわけです。

 

:自分で育てると完熟の美味しい果実が味わえる、といわれる意味がよく分かりました。

 

自然状態のブルーベリーにとっては、鳥たちに成熟した果実を食べて胚を運んでもらいたいわけですから、まずは種子(胚)を成熟させることを優先させ、いつでも食べてもらえる状態になってから、果実を甘くします。

 

:なるほど。鳥たちも食べごろを分かっているのですね。

 

:ベストな摘み時というのは、経験を積めば分かっていくものなのですが、はじめはなかなか掴むのが難しいものです。農工大では、収穫ロボットというのを開発しているのですが、ロボットが果実の色を判断して、アームでつまんだ時に果実の弾力を測って適期の果実を収穫する、という研究成果を発表しています。

 

編:面白い。将来的には収穫はロボットの仕事になるかもしれませんね。

ここまで色々なお話を伺ってきましたが、小池さんの思うブルーベリーの魅力ってなんでしょう。

 

小:果実がおいしいのはもちろんですが、大きくなりすぎず、手軽に育てられること、花も綺麗なことに加えて、秋の紅葉が楽しめること、も大きな魅力だと思います。

日本ではやはり果実に注目しがちですが、じつは紅葉の色も品種によって少しずつ違いがあって、アメリカなど海外では、苗木のラベルに、バーガンディ、ワインレッド、オレンジ、イエローなど紅葉時の色も記載されているほど重要な要素の一つです。

 

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小池さんの自宅庭。秋になると一面紅葉し、真っ赤に染まる。(撮影:小池洋男)

 

編:収穫前の釣り鐘型の花も可愛らしいし、収穫が終わったあとも、紅葉の楽しみがあるのは嬉しいですよね。ブルーベリーの人気の秘密が分かった気がします。

最後に、これからベリーを育てたい人にメッセージをお願いします。

 

小:日本人は、世界各国のなかでも、果物消費量の少ない国です。フルーツは嗜好品という意識は、まだまだ根強いと思います。

しかしながら、食卓にフルーツがあることで、生活に彩りが与えられると思います。

優れた健康機能性が注目されるベリー類などを、自分の手で育てることで、フルーツがもっと身近な存在になれば嬉しいですね。

 

編:お話を伺って、私も自分で育てた果実を食べてみたいと思いました。まずは今回学んだベリー類から、挑戦したいと思います!

<終わり>

 

前編はこちら

 

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小池洋男(こいけ・ひろお)

園芸研究家/長野県果樹試験場長などを歴任。現在は長野県でリンゴやブルーベリーなどの果樹の栽培を研究するかたわら、国内外の果樹産地を訪ね、研究交流を続けている。

 

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『趣味の園芸』7月号 最新号の見どころを紹介

 

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