山野草栽培のヒントは英国植物園にあり!? 久志博信さんに山野草について聞いてみた!<前編>趣味の園芸10月号こぼれ話
ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」だけで読める「テキストこぼれ話」、今月は10月号特集「秋の山野草入門」に関連して、山野草を育てて半世紀という筋金入りの山野草愛好家であり、国内外の山野草自生地を訪れてきた久志博信さんにインタビュー。
今回登場するのは、『趣味の園芸』10月号「秋の山野草入門」で講師を務めた久志博信さん。20代のころに山野草に出会い、栽培を始めてからはや半世紀という久志さん。山野草に関する著書も数多く執筆されています。また、NHK学園での講師や自然の花の観察ツアーのガイドなども務め、山野草の魅力を広く伝えています。
編集部(以下、編):今回の10月号では秋の山野草を特集しましたが、控えめで楚々とした魅力のある種類が多いと感じました。
久志博信(以下、久):そうですね。秋の山野草は、春に比べて花も比較的小さいものが多く、落ち着いた雰囲気があるように思います。
編:そもそも、「山野草」とはどのような植物を指しますか。
久:さまざまな解釈がありますが、私は「山と野に生え、冬場に加温しなくてもよい植物」と理解しています。そのため、多肉植物でありながら山野草であるような植物もあります。
編:野山に生えるということで、古くから日常の景色で見かけるような植物も多いですよね。そのためか、「和」の植物というイメージもあるのですが......。
久: 今月号では、「にっぽんの固有種」と題して日本国内にのみ自生する山野草をいくつかご紹介しました。しかし、実際に今国内で流通している山野草は、おおよそ6割が日本原産の山野草、4割が海外原産の山野草というイメージです。
編:なるほど、「和」ものばかりでもないのですね。
ところで、久志さんはご自宅で多くの山野草を育てられていますが、同時に国内外多くの自生地を訪ねられていますよね。栽培のヒントも、自生地から得ることが多いのですか。
久:もちろん、自生地の姿も参考にはなりますが、各地に点々としている自生地を訪ねるのは一苦労ですし、栽培用に売られている山野草は、自生地に生えているものと全く同じというわけではなく、斑入りや花色違いなど、変わり種も多いです。
私が栽培のヒントを多く得られたと感じているのは、「英国の植物園」です。
編:英国の植物園というと、キューガーデンなどを思い浮かべますが......。
久:キューガーデンはもちろん、同じく王立であるエジンバラ植物園、ウィズレーの王立園芸協会植物園など、英国の植物園の多くはアルパイン(山野草・高山)植物のコーナーを設けています。
現地の写真を実際にお見せしますね。
キューガーデンのアルパイン植物エリア(撮影:久志博信)
1枚目奥のオブジェ内の展示(撮影:久志博信)
編: 美しいロックガーデンですね!
久:同じロックガーデンでも、植物園によって少しずつ違いがあります。
岩壁に着生させていたり、縦に岩を並べて、断層を再現していたり。なかには実験段階のものもありますが、見た目の面白さとともに栽培の工夫が見られるのが面白いです。
ウィズレー植物園の室内ロックガーデン(撮影:久志博信)
ウィズレー植物園の断層を再現した展示。垂直に並べた岩のすき間にさまざまな種類の山野草が植えられている(撮影:久志博信)
エジンバラ植物園の岩壁着生。崖に生える種類が展示されている(撮影:久志博信)
久志博信(ひさし・ひろのぶ)
園芸研究家/和歌山県生まれ、千葉県在住。山野草栽培のほか、国内外の野生植物、自生地の撮影や執筆活動など山野草の魅力を幅広く伝えている。
『趣味の園芸』テキストの特集に関連して、担当編集者による講師へのインタビューなどをウェブ限定で公開します。(毎月2回更新予定)