山野草栽培のヒントは英国植物園にあり!? 久志博信さんに山野草について聞いてみた!<後編>趣味の園芸10月号こぼれ話
ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」だけで読める「テキストこぼれ話」。今月は10月号特集「秋の山野草入門」に関連して、園芸研究家・久志博信さんが登場します。
前編では、英国の植物園の山野草展示の面白さ、コレクションの豊富さについて伺いました。
編集部(以下、編):英国の植物園は、展示コーナーの充実ぶりもさることながら、その膨大なコレクションを管理するバックヤードも興味深いとか。
久志博信(以下、久): 植物園では、豊富なコレクションを楽しむのはもちろんのこと、どんな土を使っているのか、棚をどのような形で作っているのか、などが参考になります。
バックヤードの様子をご紹介しましょう。
(撮影:久志博信)
編:鉢が埋まっていますね。
久:これは、底面給水をしているのです。ブロック状の棚には無数の穴が空いていて、内部には水がはってあります。穴のなかに鉢を入れて、管理しています。
編:効率的ですね! そもそも、山野草は底面給水の方が管理しやすいのでしょうか。
久:それは種類によりますね。高山系の山野草の場合は、上から水やりをすると濡れた部分が熱をもってしまうこともあるので、底面給水での管理が向いているのだと思います。
バックヤードで花が見ごろになったものは、展示室に移動します。
そうして、年中見どころのある展示室になるというわけです。
ウィズレー植物園の展示室。(撮影:久志博信)
編:キューガーデン、エジンバラ、ウィズレーと3つの植物園をご紹介いただきましたが、植物園ごとに特色がありますか。
久:ウィズレーは他の2園と異なり、園芸植物園なので、盆栽コーナーがあったりします。全体に華やかで、魅せる植物園という印象です。
エジンバラの山野草コーナーは、リニューアルされて美しく、見やすい展示になりました。キューはやはり世界一の植物園だけあって、コレクション数がずば抜けています。標本室には600万枚以上の植物標本が所蔵されていると言います。
キューには、日本庭園コーナーもあるんですよ。
キューガーデンの日本庭園コーナーのシンボル、勅使門。(撮影:久志博信)
編: 山野草になんとなく「和」のイメージを持っていたのですが、今回お話しを伺って、英国と山野草の深い結びつきを知りました。
久:イングリッシュガーデンというと、バラなどの華やかな景色を思い浮かべがちですが、その原点は、山野草にあると思います。野山に生えている草花を、庭で再現しようというのが園芸の始まりですから、園芸立国である英国は、やはり山野草との結びつきも強いのだと思いますね。
植物がお好きな方はもちろんですが、山野草ファンはぜひ一度、英国の植物園へ足を運んでみることをおすすめします。
編:ちょっと距離はありますが、これほどまでに一度にたくさんの山野草を見られる場所はほかに無いですものね。いつか行ってみたいと思います!
エジンバラ植物園内の、久志さんお気に入りのエリア。砂礫地を再現した「スクリーガーデン」。(撮影:久志博信)
ウィズレー王立園芸協会植物園のロックガーデンの一部。(撮影:久志博信)
<終わり>
久志博信(ひさし・ひろのぶ)
園芸研究家/和歌山県生まれ、千葉県在住。山野草栽培のほか、国内外の野生植物、自生地の撮影や執筆活動など山野草の魅力を幅広く伝えている。
『趣味の園芸』テキストの特集に関連して、担当編集者による講師へのインタビューなどをウェブ限定で公開します。(毎月2回更新予定)