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柑橘の品種改良に潜む難しさと楽しさとは? 三輪さんに柑橘について聞いてみた!<前編>趣味の園芸11月号こぼれ話

三輪正幸さんに、柑橘栽培が楽しくなるウンチクをインタビュー
三輪正幸さんに、柑橘栽培が楽しくなるウンチクをインタビュー

ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」だけで読める連載「テキストこぼれ話」。『趣味の園芸』テキストの特集に登場した、講師の方にインタビューします。専門家の方だけが知っているおもしろい情報が満載です。

 

今月は11月号特集「完熟好き集まれ! 注目の果樹大集合」で「鉢植え柑橘実つきのお悩み解決講座」の講師を務めた三輪正幸さんに、柑橘栽培が楽しくなるウンチクをインタビューしてきました。

 

三輪正幸(以下、三):ちょっとこれを見てください。何かおかしな点に気がつきませんか?

 

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編集部(以下、編):え、何ですかいきなり。発芽しているところですよね。別に何もおかしな点なんてないですよ。

 

:左のタネを見てください。

 

:......あれ?このタネ、1個のタネから2つ発芽していますね。こんなことってあるんですか?

 

:一般的な果樹では珍しいですが、柑橘では普通ですね。柑橘の多くは1個のタネからたくさん発芽する性質を持っているんです。1個のタネのなかに複数の胚(はい)があるから、多胚性(たはいせい)っていうんですけどね。

 

:へーっ。1個しかタネをまいていないのにたくさん発芽するというのは楽しいですね。

 

:左は、レモンの'リスボン'で、1個のタネのなかに2~3個程度の胚をもつため、発芽も2~3個くらいします。一方、右はマイヤーレモンという種類で、1個のタネから1個しか発芽しません。このように胚が1個の性質を単胚性(たんはいせい)といいます。

 

:なるほど、同じレモンでも種類によって発芽の数が違うなんて、ますます面白いですね。

 

:大人の自由研究にはうってつけですね。例えばオレンジ類だと約20個、ブンタン類だと1個などと柑橘の種類に応じて胚の数にも幅があります。これからの時期は、いろんな種類の柑橘の果実が出回るので、皆さんにもぜひともタネを捨てずにまいて発芽数を観察して欲しいです。

 

:タネをまく際のポイントなどはありますか?

 

お皿などの上にティッシュペーパーを8枚くらい重ねて水で十分に濡らし、柑橘のタネをまいておくと1週間~1ヶ月ほどで発芽します。こうすると発芽の様子が観察しやすいですよ。タネが乾かないように定期的に水をやるのがポイントです。真冬になって低温になると発芽しにくいので、なるべく秋のうちにまくか、乾燥させたタネを冷蔵庫で保存して春になってからまいてもよいでしょうね。

 

:なるほど。私も試してみたくなりました。ところで、柑橘にとっては1個のタネから複数の発芽があったほうが、生き残るためには有利なので、戦略的に進化していったのでしょうか?

 

:柑橘の祖先が意思をもって進化していったというよりは、突然変異で多胚性をもつ柑橘が偶然生まれ、その後に環境の変化に順応してたまたま残ったのではないかと私は考えています。しかし、人間が柑橘の品種改良を行う場合には、多胚性が厄介な存在になるんですよ。

 

:えっ!どういうことですか?

 

:通常、多くの植物は、花粉が雌しべにつくと、花粉(父親)と胚珠(母親)の特徴を受け継いだ受精卵がタネになります。果実の果肉は母親由来の組織ですが、タネから発芽してできる苗木は父親の性質も受け継ぐため、食べた果実とは異なる味の果実が収穫できる可能性が高いんですね。

 

:だから果樹はタネからではなく、つぎ木やさし木で苗木をつくるんですよね。

 

:その通りです。一方、多胚性をもつ柑橘の場合は、受精によってできた受精卵の近くにある珠心(しゅしん)という組織が異常分裂して、受精卵を壊してしまうのです。珠心とは、人間でいえば胎盤のように母親を由来とする組織なので、珠心から発生したタネから発芽してできた苗木も母親、つまり果実や果実がなっていた木とまったく同じ性質をもつクローンとなります。

 

:あー、そうか。受精卵から生まれた苗木ではないから、父親の特徴は受け継がれないわけか。つまり、品種改良の際に花粉を交配しても意味がないってことですね。

 

:せっかく新しい品種をつくろうとしても、クローンしかできないのでは、品種改良にとってはマイナスですからね。

 

:でも、柑橘も品種改良されてどんどん新品種ができていますよね。

 

:はい。柑橘のなかでも、先ほどの写真の右のマイヤーレモンやブンタンなどは、珠心が異常分裂せず受精卵から苗木ができるため、クローンではありません。そういった単胚性の柑橘を優先的に品種改良の際に母親、つまり雌しべの受粉される側に選ぶというのが方法の1つです。柑橘で人気がある'不知火'や'せとか'もこの方法によって生まれた品種なんですよ。

 

:なるほど、発芽が1個の単胚性の柑橘は育種においては重宝されているのですね。

 

:そうなんです。違う種類と掛け合わせた方が、はるかにたくさんの種類が生まれますからね。他の品種改良の方法としては、花粉の交配に頼らない場合もあります。枝の先端の分裂組織で突然変異が起こって、木の先端の枝だけ異なる性質をもつことがありますが(枝変わり)、その枝を他の木についで、新しい品種として利用する場合もあります。他にも・・・。

 

:三輪先生、これ以上はちょっと難しくて頭が整理できないので、後編はもう少し優しい内容でお願いします。

 

:分かりました。後編は私が最近ハマっている養蜂についてお話します。

 

:養蜂!園芸雑誌ですけれど、大丈夫ですか(笑)。

 

後編はこちら

 

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三輪先生の研究室。デスクを飾る浮世絵や屏風絵などは故郷の岐阜県関ケ原町にちなんだもの。 郷土愛が半端ないようです。

 

三輪正幸(みわ・まさゆき)

千葉大学環境健康フィールド科学センター/果樹園芸学、社会園芸学が専門で、柑橘、ブルーベリーなど、家庭で楽しめる果樹栽培の普及に取り組む。本誌『全力回答!園芸相談室』の果樹担当としてもおなじみ。「園芸相談室に届く皆さんからの質問、いつもとても楽しみにしています。ドシドシご応募ください」

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