台湾の人にとってコチョウランとは？富山昌克さんにコチョウランについて聞いてみた！＜前編＞趣味の園芸1月号こぼれ話

ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」だけで読める連載「テキストこぼれ話」。『趣味の園芸』テキストの特集に登場した、講師の方にインタビューします。専門家の方だけが知っているおもしろい情報が満載です。

今月は 1月号特集「鉢で楽しむ着生コチョウラン」の講師を務めた富山昌克さんに台湾のコチョウラン事情についてインタビューしました！

編集部（以下、編）：ランの専門家としておなじみの富山さんですが、『趣味の園芸』では特にコチョウランを担当されることが多いですね。

富山（以下、富）：そうですね。「12 か月栽培ナビ③コチョウラン」も執筆させてもらったし。そもそもランのなかでは、コチョウランの流通量が一番多く人気があるので『趣味の園芸』で取り上げられることも多くなりますよね。

編： 11 月号「コチョウラン 花の進化が止まらない」（11 月18 日放送）で台湾に行かれていましたね。

富：そうそう。「2018 台中フローラ世界博覧会」（以下、花博）の会場で『趣味の園芸』の公開収録をやらせてもらいました。 楽しかったです。花博が始まる直前に会場入りさせてもらったので、誰よりも早く見られて感動しましたよ。

編：台湾はコチョウランの生産地としても有名ですが、実際に行かれてどうでしたか？ 街にコチョウランが溢れてたりしましたか？

富：台北では、あんまり見なかったですね。もっとベランダとかにコチョウランの鉢物が置いてあるかなと思ったんですけど。

編：そうなんですか。

富：そもそも台湾に行った9～10月ってコチョウランが花芽分化する時期なので、開花している株は少ないんです。さらに花博が始まるころだったので、台北の花市場にもコチョウランがあんまりなくて。すべて花博会場のある台中へ集まっていたみたいです。

台北の花市場

花市場でコチョウランの寄せ植えをつくっている様子

花市場で見つけた寄せ植え。それぞれのコチョウランが個性的でおしゃれ

編：それは残念でしたね。

富：でも、もっと南へ行って、嘉義（かぎ）市では鉢植えのコチョウランを置いてあるのをいくつか見ましたよ。

編：嘉義市ってどこですか？

富：ちょうど北回帰線あたりにある都市なんです。

編：へー。どうして、急に北回帰線？？

富：コチョウランをはじめ、着生ランは、北回帰線と南回帰線の間にたくさん自生してるんだよね。北回帰線は台湾のちょうど真ん中あたりを通ってるの。だから台湾の南側だと本当によく育つみたいです。

編：そうなんですか。

富：嘉義市は北回帰線近くにあるから、台北よりコチョウランが身近だったというわけです。逆に言うと、北回帰線より北、つまり台湾の北側半分には、コチョウランはあまり自生していないんですよ。

嘉義市の駅構内で見かけたコチョウラン。賑やか

編：ということは嘉義市あたりが、コチョウランの自生地の北限と言ってもよいのでしょうか。

富：いわゆるコチョウランの自生地という意味では、北限かもしれません。コチョウランの仲間の小型のドリテノプシスや、それらの近縁属のナゴランは、頑張って沖縄まで分布を拡大してるし、同じく近縁属のフウランは、本州まで上陸していますからすごいですよね。つくづく生物が寒さを克服していく進化って素晴らしいものがあると思います。

編：進化しながら南方から北上して行ったのがわかりますね。

後編はこちら

富山昌克（とみやま・まさかつ）

園芸研究家／1964 年、大阪府生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、ハワイ大学熱帯園芸学部交換研究性を経て、メリクロンアーツおよび富山蘭園・奈良農場代表。著書に「NHK 趣味の園芸 12 か月栽培ナビ③コチョウラン」「NHK 趣味の園芸 よくわかる栽培 12 か月デンファレ」など多数。

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