擬態、脱皮......"生ける宝石"の不思議に迫る!島田典彦さんにリトープスについて聞いてみた!<後編>趣味の園芸2月号こぼれ話
ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」だけで読める連載「テキストこぼれ話」。『趣味の園芸』テキストの特集に登場した、講師の方にインタビューします。専門家の方だけが知っているおもしろい情報が満載です。
今月は2月号の多肉植物特集で「リトープスの水やりを極める」の講師を務めた島田典彦さんが登場します。前編では、リトープスの「擬態」などについて伺いました。後編では「脱皮」や、そのほかの栽培のコツを伺います。
編集部(以下、編):もう一つリトープスの面白いところに「脱皮」があると思います。
島田:脱皮とは、古い葉から新しい葉に水分を移行させて、徐々に古い葉が枯れていく過程のこと。花後、だいたい1月ごろから始まり、5月ごろには完了します。株が充実して十分な大きさに育っていると、このとき「分頭」して、2対の新葉が出てきます。
編:ということは、1年で倍にふえるということでしょうか?
島田:いえ、そうとはかぎりません。面白いことに、実生4~5年でその株が初めて開花したときは必ず分頭します。ところが翌年以降は基本的に毎年開花はするけれども、毎年分頭するわけではない。やはり葉が大きくなっていないとダメなんです。
編:ふえるスピードはゆっくりなんですね。
脱皮しはじめたリトープス
編:夏にダメにしてしまった、という話をよく耳にします。
島田:リトープスはアフリカの乾燥地帯、つまり強い直射日光が降り注ぐ土地に自生しているので、夏の強光には強いんです。ただし強いのは頂面だけ。
編:どういうことでしょうか!?
島田:乾燥している自生地では土に埋もれるように生えているので、頂面にしか日光が当たらないのです。日本で同じようにしたら株元が腐ってしまうので、浅めに植える必要があります。そこで緑色の側面には強い西日が当たらないよう、夏は50%程度の遮光をしたり、置き場を工夫したりする必要があります。
編:夏は断水すると書いてある本もあれば、ときどき水やりをすると書いてあるものもあります。実際のところはどうすればよいのでしょうか?
島田:昔は、"夏は断水派"が多かったんです。休眠期なので、水はなくても枯れることはありません。ところが近年の猛暑では、夏に完全に断水していると根が硬くなって、秋以降の立ち上がりが悪くなることがある。そこで私は、夏もときどき根を湿らせる程度の水やりをして、「根をいたわる」ことを勧めています。
編:そうなんですね。あとは、肥料はどうしていますか?
島田:肥料は植え替え時に少量の緩効性化成肥料を混ぜ込むだけ。リトープスはそもそも水やりの回数が少ないので、次の植え替えまで十分に効果が続きます。液体肥料を使うと不自然に株が大きく、膨らんだようになることもあるので、私は使いません。
編:なるほど。ところで、リトープスは何種類くらいあるんでしょうか?
島田:現在のリトープスの分類をつくったのは、南アフリカのコール博士です。これまで発見された多くの種とその変種に、「コール・ナンバー」と呼ばれる番号をつけて整理し、現在420ほどに到達しています。ここに、さらに栽培変種が加わりますね。
編:それは集め甲斐があります!
島田:まあ、あれもこれも......と欲が出てくる気持ちはわかります。ですが、まずは"少数精鋭"で1年やってみてください。1年たって水やりや管理のコツがつかめたら、それから新しいものに挑戦してみることをおすすめします。
<終わり>
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島田典彦(しまだ・のりひこ)
リトープス栽培家。群馬県桐生市でリトープス専門ナーセリー「群仙園」を営み、リトープスの普及に努めている。
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