神秘と伝説に彩られた竜血樹<テキストこぼれ話・特別編>第2回
『趣味の園芸』2019年2月号で、カナリア諸島のアエオニウムの自生地レポートを紹介しましたが、大西洋に浮かぶスペイン自治州カナリア諸島は、アエオニウム以外にも島固有の植物の宝庫です。
誌面では紹介しきれなかったカナリアの植物たちを、全3回に分けて紹介します。
『趣味の園芸』×『旅するスペイン語』2月号テキストこぼれ話・特別編 第2回
文/NHK出版語学編集部『旅するスペイン語』取材班
ミイラや錬金術に使われた
カナリアを含むマカロネシアやモロッコの一部に自生するリュウケツジュ(竜血樹/Dracaena draco)。現地ではドラゴと呼ばれています。観葉植物ドラセナの仲間ですが、大きくなると20メートル近くにもなります。インド洋ソコトラ島(イエメン)にも竜血樹と呼ばれる植物がありますが、こちらは和名ベニイロリュウケツジュ(Dracaena cinnabari)という近縁種です。名前の由来は傷をつけると出てくる樹液が、乾燥して固まると血のように赤くなることから。カナリアの先住民グアンチェ族は死者をミイラにする風習があり、そのミイラ作りにもこの樹液が使われていました。ヨーロッパでも古くから薬や錬金術の材料として珍重され、スペイン人によるカナリア征服後、乱伐され、大木の数が激減してしまいました。胴回り23.4mのものがあったという記録も残っています。
カナリアで最も有名な巨木は、テネリフェ島のイコー・デ・ロス・ビノスにあるドラゴ・パークの巨木です。高さ16m超、近づくとその迫力に圧倒されます。また、テネリフェ島をはじめとした各島の街中でも、広場などでリュウケツジュを見ることができます。
テネリフェ島ドラゴパークにある巨木のリュウケツジュ。一説には樹齢1000年を超えるとも言われています。
ラ・ゴメラ島のホテルの庭に植えられていたリュウケツジュ。
テネリフェ島ラ・ラグーナの大聖堂前にもリュウケツジュが。
『旅するスペイン語』2019年2月号、『趣味の園芸』2019年2月号でも、カナリアの植物について詳しく紹介しています。
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