琵琶湖のハスを救え!若松康史さんにスイレンと水生植物について聞いてみた!<後編>趣味の園芸8月号こぼれ話
ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」だけで読める連載「テキストこぼれ話」。『趣味の園芸』テキストの特集に登場した、講師の方にインタビューします。専門家の方だけが知っているおもしろい情報が満載です。
今回は8月号特集「涼を呼ぶ花 スイレン図鑑」「水生植物のきほん」の講師を務めた若松康史さんが登場。前編ではみずの森で見られるスイレンや香りのよい品種について教えていただきました。後編では、琵琶湖のハスをめぐる取り組みを紹介します。
2016年、例年ならば琵琶湖の湖面を覆いつくすほどの葉を茂らせ、花を咲かせるはずのハスが「消えた」という事態が起こりました。草津市立水生植物公園みずの森が位置する烏丸半島周辺は、約13ヘクタールに及ぶ国内最大級のハス自生地で、観光客も多く訪れていただけに、ショックの大きさは計り知れません。
みずの森に隣接する琵琶湖岸に、かつてはハスの群生地があった(写真上、2014年7月撮影)。2019年5月時点ではまったく葉が上がっていない(写真下)。
編集部(以下、編):"ハス消滅"の原因は何だったのでしょうか?
若松(以下、若):翌2017年に行われた調査によると、ハス消滅の原因は、ハスの生育に適した粘土層の消失や、地中のメタンガス濃度の上昇など複合的な要因があったそうです。その時点では、「再生は不可能」という結論が出ました。
編:復活を望む声も大きかったのではないでしょうか?
若:ええ。2018年には、湖底に苗を植えつけ、根づくかどうかの試みが行われましたが、再生したものはありませんでした。
編:そうなんですか......。
若:でも、再生をあきらめたわけではありません。2018年春、滋賀県立大学名誉教授の小林圭介先生より自生地で生き残っていたハスのレンコン(地下茎)を当園で譲り受け、養生を始めました。株分けを行って現在12鉢になっており、生育の様子を見ながら池に入れたり、バックヤードに戻したりしながら管理しています。まだ元の場所に植えつけられる状態にはなっていませんが、園内で十分な個体数を確保しておいて、再生の協力を求められたときに苗の供給ができるように準備しておくことが、植物園としての役割・機能であり重要なことと考えています。
園内の池で管理している自生地のハス(中央手前~右奥の黄色い旗付近)。背景に咲いているのは園芸品種。
編:それは朗報です!
若:自生種を維持するのが植物園の重要な役割ですし、何より地元の方々に愛されてきたハスですから、ぜひ復活させたいですね。
<終わり>
前編はこちら<スイレンの魅力は香りにあり!若松康史さんにスイレンと水生植物について聞いてみた!>
若松康史(わかまつ・やすし)
園芸研究家。1965年京都生まれ。東北大学農学部大学院修了後、種苗会社、試験場などを経て、現在は草津市立水生植物公園みずの森勤務。幅広い園芸の知識を持つ。
『趣味の園芸』テキストの特集に関連して、担当編集者による講師へのインタビューなどをウェブ限定で公開します。(毎月2回更新予定)
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