万葉時代のお花見はサクラよりもウメやモモだった!?~〈万葉の花〉第1回 サクラ
野山に咲くサクラに万葉の風景を見る
『万葉集』が編まれた奈良時代、3月3日の上巳(じょうし)の節句には、ウメやモモなどの花を観賞しながら詩歌を詠む曲水(きょくすい)の宴が行われました。春を象徴する年中行事で、現在では形を変えて桃の節句として引き継がれ、儀式としてのお花見の起源とも考えられています。
唐の文化に憧れた当時、中国伝来のウメやモモが大人気でした。庭園という閉じた空間で儀式として観賞されたウメやモモに対し、野山の開放的な空間で観賞されたのがサクラであり、日本の地域性を示す花だったといえるでしょう。
現在でも野生種のヤマザクラやカスミザクラは奈良周辺の野山にも普通に見られ、なかでも吉野山のヤマザクラは平安時代からサクラの名所として有名です。さらに南の紀伊半島南部の自然林では、シイ、カシなどの常緑樹にヤマザクラやクマノザクラ(※)が混ざり、万葉の時代の姿にもっともよく似ているように思われます。(テキスト『趣味の園芸』2020年4月号より)
※クマノザクラ:2018年に発見された新種の野生のサクラ
<万葉の花>は、2020年4月からスタートした「趣味の園芸」の放送テーマです。万葉びとに愛された名花の魅力と日本独自の文化を見つめ直します。
万葉の花 第1回「サクラ にっぽん心の花」
第1回は日本の花の代名詞ともなったサクラ。2018年に発見された新種の野生種、クマノザクラを訪ねながら、万葉時代のサクラ風景を考えます。
ミニコーナー:「万葉 花のうた」では、万葉の歌を題材にして、その昔の日本人が野山に咲くサクラにどのような思いを寄せていたか、紹介します。
◆テキスト
NHKテキスト『趣味の園芸』4月号(p.111~)
◆放送予定
4月5日(日)午前8:30~8:55 NHK Eテレ
【再】4月7日(火)午前10:25~10:50 NHK Eテレ
【再】4月9日(木)午後0:30~0:55 NHK Eテレ
※ニュースや地震の関連番組などにより放送が変更、休止になる場合があります。