入谷さんお気に入りの野生種のバラ~連載「ディーププランツ入門」5月号こぼれ話
園芸の入り口は限りなく広く、その先は限りなく深い。『趣味の園芸』テキスト連載「ディーププランツ入門」では、毎月、特定の植物を深く愛する人たちに、その植物の魅力を教えてもらいます。誌面に収まりきらなかったこぼれ話をウェブ限定で公開!
『趣味の園芸』5月号「ディーププランツ入門」の第2回に登場した入谷伸一郎さん。
テキストでは日本での栽培が難しくても挑戦したいという野生種のバラを紹介してくれましたが、実際には日本で育てることのできる野生種もたくさんあります。
誌面で紹介しきれなかった入谷さんのお気に入り野生種3種をご紹介。
ロサ・エカエ
Rosa ecae
撮影:入谷伸一郎
「私の手元にある個体は、その昔、鈴木省三氏(バラ育種家1913-2000)がニュージーランドのTasman Bay Rosesより導入したものだと聞いています。アフガニスタンとトルキスタンに自生する野生種で小輪の黄花を咲かせます。誌面で紹介したロサ・プリムラ、次に紹介するロサ・プラテアカンサも含め、黄花の野生種は早咲きで、ほかのバラが咲く前に庭を彩ってくれます。」
ロサ・プラテアカンサ
Rosa platyacantha
撮影:入谷伸一郎
「私の手元にある個体は、上田善弘さんが1990年代後半、中国新疆に調査に行かれた際に導入されたものが由来で天山山脈固有種とのことです。先生の調査では標高700-2000mの幅広い地域で生育しているとの事。高温多湿に弱く、栽培は難しいですが、環境を工夫することで何とか千葉県でも栽培することができます。」
ロサ・モエシー・ヒリエリ(ヒリアーローズ)
Hillier Rose(Rosa × pruhoniciana)
撮影:入谷伸一郎
「この個体は、20年ほど前にPeterBeales Rosesより導入しました。正確には野生種ではなく、野生種同士の交配(ロサ・モエシーRosa moyesiiとロサ・ムルチブラクテアータRosa multibracteataまたはロサ・ウィルモッティアエRosa willmottiaeの交配)といわれています。ロサ・モエシーも花が赤く美しい野生種ですが、ヒリエリはさらに色が濃く、特徴的な花色です。」
バラといえば華やかな園芸種を思い浮かべることが多いですが、このように野生種にも趣のあるバラがたくさんあります。テキスト5月号では、入谷さんが今年も挑戦しているロサ・ペルシカをはじめ、野生種のバラの魅力をご紹介しています。
教えてくれた人
入谷伸一郎さん
1971年大阪府生まれ。バラの種苗会社・京成バラ園芸で20年以上バラの生産に携わり、多くの野生種・園芸品種を自ら栽培してきた。
『趣味の園芸』テキストの連載「ディーププランツ入門」。誌面に収まりきらなかったこぼれ話をウェブ限定で公開します。【毎月1~2回更新予定】