アドロミスクスの育て方~連載「ディーププランツ入門」6月号こぼれ話
園芸の入り口は限りなく広く、その先は限りなく深い。『趣味の園芸』テキスト連載「ディーププランツ入門」では、毎月、特定の植物を深く愛する人たちに、その植物の魅力を教えてもらいます。誌面に収まりきらなかったこぼれ話をウェブ限定で公開!
『趣味の園芸』6月号「ディーププランツ入門」の第3回に登場したブロガーの杢太郎(もくたろう)さん。
誌面では多肉植物のなかでもちょっと地味で、情報も少ないアドロミスクスとの出会いとその魅力について紹介してくれましたが、「みんなの趣味の園芸」では、誌面に入りきらなかった育て方についてご紹介します。
失敗が多いのは冬と夏
「アドロミスクスの育て方」はあるようで、なく、ないようで、あります。
挙げるとすれば3つ。
●最低気温は5℃を切らないようにする
●冬は乾かし気味にする
●夏は3つのポイントを押さえて乗り切る
くらいでしょうか。
アドロミスクスは「春」と「秋」が生育期なので、その時期にしっかりと水を与えていれば自然に育ちます。
問題なのは冬と夏。
冬は最低気温が5℃を下回らないような場所へ移動をさせ、成長が止まっているようなら水やりを控えめに行います。
イメージとしては月に1回程度。
関東地方なら外気の当たらない簡易温室に入れ、暖かい日の日中に水を与えます。
で、特に失敗が多くなるのは夏。
「高度に多肉化」したアドロミスクスは、夏によく腐るのです。
はじめは葉色が変化し、柔らくなり、最後には溶けるようにして腐る。
これを防ぐにはまずは「遮光」です。
寒冷紗などで温室を覆い、直射日光に当たらないよう工夫します。
次に「通風」を確保し、なるべく涼しいところに置いておくこともポイント。
そのうえで重要なのは「水やり」です。
僕の場合、真夏にはシワシワになるまで水やりを控え、9月ごろの涼しくなったときに水やりを再開します。
杢太郎さんが最初に買ったアドロミスクス「達磨クーペリ」。
撮影:丸山光
今も試行錯誤しています
そのほかの栽培方法は多くの「ベンケイソウ科」の多肉植物に準じます。
エケベリアやセダムの鉢と隣り合って育てることもできるし、その分、面白さも増します。
普及種であればアドロミスクスの栽培は簡単で、初心者の方にも気軽に育てられる植物だと僕は思います。
あとはいかに良い色を出すか、つやを出すか、はたまたフォルムをつくっていくのか......。
地味めな多肉植物に分類されるアドロミスクスでも、楽しみ方は奥深く、いくらでも追求できるのです。
そんなことを偉そうに語る僕はいま、どんな土がアドロミスクスに合うのか探っているところ。
いまいち元気のないアドロミスクスがあって、根の張りが良くなる土を探しているのです。
そこで僕は、多肉植物に良く使われる赤玉土の量をちょっと減らし、その代りにヤシガラチップをブレンドし、腐葉土とくん炭を......。
おっと。
「アドロミスクスの育て方」はあるようで、なく、ないようで、あるのです。
つまり、植物の育て方は、ひとそれぞれに試行錯誤し、確立していくもの。
「正解」はないのです。
自分なりの「正解」を求めて繰り返し育てることもまた、趣味園芸の醍醐味でしょう。
これ以上は各自のお楽しみで。
教えてくれた人
杢太郎(もくたろう)さん
1987年神奈川県生まれ。群馬県にある鉢花生産農家に勤務しながら、関心のある植物や植物の書籍などの情報をブログで発信している。
杢太郎さんのブログ:ボタニカログ
『趣味の園芸』テキストの連載「ディーププランツ入門」。誌面に収まりきらなかったこぼれ話をウェブ限定で公開します。【毎月1~2回更新予定】