ヘデラの多様性に驚く!~連載「ディーププランツ入門」8月号こぼれ話
園芸の入り口は限りなく広く、その先は限りなく深い。『趣味の園芸』テキスト連載「ディーププランツ入門」では、毎月、特定の植物を深く愛する人たちに、その植物の魅力を教えてもらいます。
『趣味の園芸』8月号 連載「ディーププランツ入門」の第5回で、変異に富んださまざまなヘデラ(アイビー)の品種を紹介してくれた野々口 稔さん。しかし紙幅の関係で紹介しきれなかった魅力的な品種がまだまだたくさんあります。そこで誌面で紹介できなかったおすすめ品種を、野々口さんに紹介していただきます。
ヘデラのおすすめ品種
野々口:とてもポピュラーな園芸植物であるヘデラが「ディーププランツ入門」に掲載されることを疑問に思われる方もいらっしゃるかと思います。「ディープ」な理由は、「葉の形、色、斑の入り方のバリエーション」だけではありません。
確かに耐寒性・耐暑性に優れ、用土や鉢の種類に関してもこだわらない「超入門的な植物」でもありますが、これらの特徴的な葉色や葉形を維持するには、個々の品種の習性を理解して、栽培箇所(屋内・屋外、日当たり等)や管理(剪定、施肥、水やり等)を適切に行う必要があります。たくさんの品種を栽培するようになって、さらに「奥が深い」ことに気づいてしまいました。
ヘデラ '輝'
Hedera helix 'Kagayaki'
日本生まれの品種。'エバーグリーン'('Evergreen')の枝変わりで、葉は深緑色で、葉縁は波打っている。小葉は3~5裂に分岐しているが、深く切り込んでいるため、一枚一枚のがそれぞれ細長く独立した葉のように見える。残念ながら育成者は'輝'の生産を現在中断しており、入手困難な品種となってしまった。余りにも個性的なので、残しておきたい品種だと思う。
ヘデラ 'バタフライ'
Hedera helix 'Butterfly'
起源が不明で生長が遅めの品種。葉は小さめで、鳥足状で3裂の小葉に分岐する。葉に、白、灰、黄色の斑がランダムに混ざりあい、蝶の羽の様に美しい。一枚一枚の葉の模様に変異があり、見ていて飽きが来ない。
ヘデラ・コルシカ 'デンタータ・バリエガータ'
Hedera colchica 'Dentata Variegata'
1900年代にリッチモンド(ロンドン)の個人庭園で、本種が成長しているところが発見された。斑入りの品種で、葉は長さ20cm程度まで大きくなる。葉形は葉先が尖ったハート形だが、成長すると丸みを帯びてくる。成長は速くシュートを良く伸ばして、登坂能力にも優れる。耐寒性に優れ、日本でも良く栽培されている。
ヘデラ 'ダックフット'
Hedera helix 'Duck Foot'
1970年代後半にアメリカ・ニュージャージー州のナーセリーで発見された'メリオン・ビューティー'('Merion Beauty')の枝変わり。ミニチュア系の特徴的な丸い緑色の葉は、水掻きのついたアヒルの足の様で可愛らしい。こんもりと垂れ下がるので、吊り鉢仕立てが似合いそう。
ヘデラ '雪の妖精'
Hedera helix 'Yuki no Yousei'
日本生まれの品種。'白雪姫'の枝変わり品種で、ラベルに「妖精が舞い踊っているような神秘的な雰囲気」と書かれており、その通りの雰囲気。ウエーブした斑入りの線形の細葉が特徴的かつ魅力的。寒い時期の新葉は白色となる。夏場は強い日射を避けるのが栽培のコツ。
ヘデラ 'ムーンチャイルド'
Hedera helix 'Moon Child'
日本生まれの品種。ライムグリーンの葉が美しく、葉裂片の切れ込みは3裂。極小の葉が密に生え、ツルが垂れ下がる雰囲気がよい。蒸れに注意して、風通しの良い場所での栽培がおススメ。
*写真は全て野々口稔さん撮影
テキスト8月号では野々口さんが選りすぐった10品種と、ヘレボルス・トルカータス(クリスマスローズの原種の一つ)の自生地で一緒に咲くヘデラ・ヘリックスの写真などを掲載しています。ぜひこちらもご覧ください。
教えてくれた人
野々口 稔(ののくち・みのる)さん
「HELLEBORUS倶楽部」代表。クリスマスローズをこよなく愛し、著書も多数執筆。毎年のようにクリスマスローズの原生地を訪れている。(写真は2017年4月にモンテネグロ・ニクシチ西方でスラノ湖を背景にして、スマートフォンで遠隔操作して自撮り撮影したもの)
『趣味の園芸』テキストの連載「ディーププランツ入門」。誌面に収まりきらなかったこぼれ話をウェブ限定で公開します。【毎月1~2回更新予定】