必見「アリダマ」のタネまき!不思議なアリ植物の魅力~連載「ディーププランツ入門」9月号こぼれ話
『趣味の園芸』9月号「ディーププランツ入門」の第6回では、アリと共生し、植物体内にアリのすみかになる部分がある、生態も形態も不思議な「アリ植物」を紹介しました。
ただでさえマニアックで珍しいアリ植物ですが、今回のこぼれ話では、アリ植物の一つ、「アリダマ」のタネまきという超貴重な情報をお届けします! 2019年にアリ植物専門の農場を立ち上げた伊藤彰洋さんが教えてくれました。
アリダマとは
アリ植物には、シダやラン、多肉植物なども含まれますが、ミルメコディア、ヒドノフィツム、ミルメフィツム、アンソルリザ、スクアメラリアのアカネ科5属を、特に「アリダマ(Hydnophytae)」と呼んでいます。原産は東南アジアや太平洋の島などで、多くは樹や岩に生える着生植物です。ミルメコディア やヒドノフィツムは比較的入手しやすく、園芸店などで見かけることもあります。
誌面で紹介したパプアニューギニアで発見されたアリダマ(ヒドノフィツムの一種)。クレーター状の穴が無数にあいているのが特徴 /撮影:丸山光
ヒドノフィツム・フォルミカルム /撮影:田中雅也
とりまきならほぼ100%発芽
アリダマはある程度成長すると、葉腋に花を咲かせ、その後に実ができます(温度が25度以上あれば通年開花結実します)。実は熟すと赤~オレンジ色になります。
星形のミルメコディアの花 /撮影:丸山光
オレンジ色のミルメコディアの実 /撮影:丸山光
この実をとって手でつぶすと、中からタネが数粒出てきます。
ミルメコディアのタネ /撮影:丸山光
アリダマは基本、自家結実するので、1株だけでもタネがとれます。このタネをとって、すぐまく「とりまき」をすれば、発芽率はほぼ100%です。湿らせた水ゴケにまき、乾かないように管理します。20℃程度の環境下で、2〜3日ほどで発芽します。
環境によってはカビやすいので、タネの周りのぬめりや果肉を綺麗に洗うと安心です。
また、実の収穫のタイミングは自然に落ちかけるギリギリがよくタネが成長しているのでベストです。
撮影:丸山光
この写真は発芽して1~2か月のヒドノフィツム・パフィーです。すでに基部が膨らんでいるのがわかります。
撮影:丸山光
発芽から半年程度のものを抜いて下から見てみると、すでに、アリのすみかとなる空洞ができ始めています。
その後は、6か月程度で間引き、大きさが5cm程度になったら一株ずつ鉢に移すか着生させ、温度と湿度を保ちながら栽培してください。
ヒドノフィツム・パフィー。タネをまいて2年程度の状態 /撮影:編集部
テキスト9月号の「ディーププランツ入門」では、植物園でもなかなか目にできないような貴重なアリ植物の写真と、栽培の基本について紹介をしています。ぜひこちらも参考にしてください。
教えてくれた人
伊藤彰洋(いとう・あきひろ)さん
1989年愛知県生まれ。2019年にアリ植物専門の農場・STRINGE PLANTS(伊藤蟻植物農園)を立ち上げる。イベントなどでの販売、講演や植物園への展示協力なども行いアリ植物の普及に努める。
園芸の入り口は限りなく広く、その先は限りなく深い。『趣味の園芸』テキスト連載「ディーププランツ入門」では、毎月、特定の植物を深く愛する人たちに、その植物の魅力を教えてもらいます。誌面に収まりきらなかったこぼれ話をウェブ限定で公開!