イチジクの魅力とおすすめの食べ方~『趣味の園芸』11月号こぼれ話<前編>
ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」だけで読める連載「テキストこぼれ話」。『趣味の園芸』テキストの特集内容に関連して、誌面で紹介しきれなかった情報をお届けします。
11月号で、イチジクの栽培について初心者向けにわかりやすく教えてくれた齊藤拓朗さんは、千葉県館山市で、イチジク狩りを楽しめる観光農園を営んでいます。もともと農家だったわけではない齊藤さんが、イチジクに目覚め、イチジク農家となった理由をうかがいました。
ネグローネでイチジクの魅力を知る
「もともとホームセンターで店長をしていましたが、植物を販売しているうちに、実際に植物を育てる仕事をしたいと思い、ホームセンターを辞めて農家で研修をしました。そのときにビワ農家を手伝い、果樹の魅力に目覚めました」。
その後、ヨーロッパではたくさんの品種が育てられているのに日本ではあまり品種の出回らないイチジクに出会い、イチジク農家となることを決意します。
「'ネグローネ'(11月号でも紹介)という品種を食べたとき、酸味があり、食感がそれまで知っていたイチジクとかけ離れていて感動しました。品種ごとの特徴や完熟した味を知ってもらうためには、実際にその場で食べてもらうのが一番と思い、イチジク狩りができる観光農園の業態を選んだのです」
齊藤さんがイチジクの魅力に目覚めるきっかけとなった'ネグローネ'。
イチジクに魅せられた理由は、品種ごとの味のバリエーションと完熟の味。その魅力を知ってもらおうと、イチジク狩りだけではなく、農園にカフェを併設して、イチジクを使ったスイーツを出したり、ジャムやお茶などの加工品の販売をしたりもしています。また苗木の販売や剪定教室、さらにさし木の苗木づくり体験も行っています(さし木の方法は後編でお伝えします)。
おすすめの食べ方は?
齊藤さんに、収穫したイチジクのおすすめの利用法についてうかがいました。
「まずは、樹上で完熟させたものをそのまま生で食べるのが一番のおすすめです。完熟したイチジクは傷みやすく流通に向かないので、完熟を食べることができるのは育てた人の特権です。品種によって甘さ、食感、酸味などの違いがあり、それを実感できるのはやはり、生食です」。
「たくさん収穫できたら、縦に4等分してから冷凍しましょう。そのままでもおいしいシャーベットになります。これも完熟で糖度が高いからこその食べ方です。少し溶けてくると、生とは違う食感も楽しめます。それでも食べきれないようなら、誌面で紹介したようにジャムにすることで、利用法も広がります」
冷凍してシャーベット状になったイチジク。
ちなみに、担当編集者が感動したのは、イチジクジャムとマヨネーズを等量混ぜた「イチジクマヨネーズ」(11月号に掲載)です。最初はジャムとマヨネーズを混ぜるだけと聞いて、どうなのだろう?と思いましたが、食べてみると甘くてコクがあって高級な味に驚きました。中華料理のエビマヨのようなメニューに使うと、ぴったりだと思います。
「イチジクマヨネーズ」。ぜひ試してみてほしい。
(写真撮影はすべて丸山光)
後編では、誌面でも予告した「イチジクのさし木」の方法について教えてもらいます。
齊藤拓朗(さいとう・たくろう)
イチジク農家。千葉県館山市でイチジク狩りの観光農園「館山パイオニアファーム」を経営。苗木づくり、剪定などの栽培教室も開き、果樹としてのイチジクの魅力を広く伝える。
「テキストこぼれ話」では、『趣味の園芸』テキストの特集に関連して、担当編集者による講師へのインタビューなどをウェブ限定で公開しています(毎月2回更新予定)
『趣味の園芸』2020年11月号(10/21発売)
11月号の「まずはイチジクからはじめよう」では、齊藤拓朗さんがイチジクの育て方について詳しくお伝えします。