花がなくても楽しめる、多肉植物的な原種ラン6選~連載「ディーププランツ入門」1月号こぼれ話
『趣味の園芸』1月号「ディーププランツ入門」の第10回は、バリエーションに富んだ原種のランの世界の一端を、ラン園を営む松本正昭さんに教えてもらいました。
しかし紙幅の関係で紹介しきれなかった魅力的な種がまだまだたくさんあるため、特に、花がない時期も楽しめる、多肉植物的な形態の原種ランのおすすめ種を、こぼれ話としてこちらでご紹介いたします。
小型のランはコレクションしても置き場に困らない
松本さんはこう語ってくれました。
「今回紹介しているのは、ほとんどが小型の原種ランです。都会はなかなか栽培スペースがとれないと思うけど、小型のものなら、置き場にも困らない。最近若い人たちがよくうちにランを買いにくるけど、小さくて変わった植物が流行ってきているのには、そういう理由があるのかもしれないですね」
多肉植物的に楽しめる原種ラン 6選
「形態が違うランを揃えて、1株1株じっくり眺めているだけで、時間がたつのも忘れてしまいます。ランといえば華やかな花というイメージがありますが、葉やバルブなど、花のないときの魅力も知ってもらいたくて、あえて、花なしの写真で紹介します」(松本さん)
1.デンドロビウム・リケナストラム
Dendrobium lichenastrum
オーストラリア原産の極小型のデンドロビウム。まるで多肉植物のような葉姿は、花なしでも十分楽しめる。自生地は夏に乾季、冬に雨季があるので、栽培でも夏は水を控え、冬はしっかり水やりするとよい。暑さに強く、寒さは1~2℃まで耐える。
2.デンドロビウム・プレンティケイ
Dendrobium prenticei/Dendrobium lichenastrum var. prenticei
オーストラリア原産のデンドロビウムで、リケナストラムより葉の長いタイプ。リケナストラムの変種扱いとされることもある。性質もリケナストラムとほぼ同様。
3.カトレア・ルカシアナ
Cattleya lucasiana
レリア属に分類されることもあり、テキスト1月号で紹介したリリプターナと同じく、ブラジル原産で岩場に岩生するロックレリアと呼ばれるグループ。花はピンクでコショウのようなスパイシーな香りがする。花のない時期もバルブと葉が、うさぎの耳のようでかわいらしい。
4.カンフィロケントルム・クラッシルヒズム
Camphylocentrum crassirhizum
テキスト1月号で紹介したカンフィロケントルム・オルニソリリンクムと同じく、中南米では珍しい単茎タイプ(茎が1本で左右に葉を伸ばす)のラン。葉と同じように茎から出てくる根もおもしろい。寒さには弱い。
5.ナゲリエラ・プルプレア
Nageliella purpurea
メキシコ原産。強光下で栽培すると葉がよく色づく。自生地は冬に霧が出る環境なので、冬に湿度を保つ。
6.エリア・パンネア
Eria pannea
ヒマラヤ~中国原産。白い綿毛に包まれた花を咲かせるが、花のない時期も、多肉植物的なおもしろさがある。
*写真はすべて丸山光撮影
1月号の「ディーププランツ入門」では、松本さんが愛してやまない旧プレウロタリス属を中心に9種の原種ランと、栽培方法のわからない植物を育てるときのヒントをご紹介しています。ぜひこちらもご覧ください。
教えてくれた人
松本正昭(まつもと・まさあき)さん
園芸家/1950年生まれ。東京都八王子市で、小型の原種ランを中心に珍しい植物ばかりを扱う松本洋ラン園を営み、全国の植物マニアたちにその名を知られる。
園芸の入り口は限りなく広く、その先は限りなく深い。『趣味の園芸』テキスト連載「ディーププランツ入門」では、毎月、特定の植物を深く愛する人たちに、その植物の魅力を教えてもらいます。誌面に収まりきらなかったこぼれ話をウェブ限定で公開!