野菜の「とう立ち」って何?
野菜の「とう立ち」とは何なのでしょう。よくないものだと考えられがちですが、とうを食べる野菜もあるんです。恵泉女学園大学人間社会学部教授の藤田 智(ふじた・さとし)さんに、「とう」について詳しくうかがいました。
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とう立ちさせたくないのは葉ものと根菜類
とう立ちとは、花芽 (はなめ/植物の芽のうち花になるもの)がついて花茎(かけい/花芽がついた茎=とう)が伸びること。正確には「抽薹(ちゅうだい/抽苔)」といいます。
植物は、一定の条件がそろうと花芽分化(はなめぶんか/葉や茎を作り出していた成長点に花芽ができること)し、できた花芽が発達すると、葉もの野菜や根菜類では花茎が伸びます。これがとう立ちです。とう立ちしたあと、花芽はやがて開花します。
トマトなどの実もの野菜は、花を咲かせて実をつけさせるものなので、とう立ちとはいいません。とう立ちが問題になるのは、葉や根を利用する葉もの野菜と根菜類です。とう立ちすると葉の数が増えなかったり、堅くなったり、根が太らなかったりするからです。
葉もの野菜と根菜類のとう立ちを防ぐにはまず、花芽分化させないことが大切です。
「とう」がおいしい野菜もある
穂ジソ
撮影:丸山 滋
シソの花茎が伸びたもので、開花前の蕾を刺身のつまや薬味にするほか、天ぷらなどにも利用される。
ナバナ
撮影:岡部留美
ナバナはとう立ちした花茎と蕾(つぼみ)を食べる。専用品種があるが、コマツナやハクサイなど一部のアブラナ科の花茎も美味。