さらに気軽にコチョウランを楽しむ方法~『趣味の園芸』3月号こぼれ話<前編>
ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」だけで読める連載「テキストこぼれ話」。『趣味の園芸』テキストの特集内容に関連して、誌面で紹介しきれなかった情報をお届けします。
今回は、3月号の「ラン」特集で「コチョウランの超ズボラ栽培」を教えてくれた椎名正樹さんが登場。コチョウランの品種改良と生産を長年手がける椎名さんが、<さらに気軽にコチョウランを楽しむ方法>を紹介してくれました。
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編集部(以下、編) 椎名さんから教わった「超ズボラ栽培」でコチョウランを育てはじめて、早2か月。花も変わらず、きれいに咲いてくれています。
椎名正樹(以下、椎) それは良かったです。
編 その間、水やりをしたのはたった2、3回だけで。なんだか、水やりをすることを忘れてしまいそうです。
椎 そんな人におすすめなのが、誌面でも紹介したコチョウランのための底面給水鉢です。
これは5年ほどかけて開発した鉢で、中に入っている水の量が外から見えるので、水がなくなったらポットを開けて水を入れるだけ。はじめてコチョウランを育てる人にも安心です。
編 ほんとうですね。水の量がひとめでわかります。
椎名洋ラン園の底面給水鉢。「4号サイズ タンブラー ポット(写真左)」と「アクアポット(写真中央2点)」、「3号サイズ タンブラースリム ポット(写真右)」。 撮影/田中雅也
椎 お客さまとお話する際にも、必ず質問に上がるのが「お水はいつあげればいいの?」「コチョウランは難しいんでしょ」という話題でした。なぜか日本では、コチョウランは高価で気難しい花だというイメージをお持ちの方が多いんです。でも、実際は全然難しくありません。
2012年の国際園芸博・フロリア―ドにて、金賞を受賞したミディ(中輪系)コチョウランの人気品種「チュンリー」。かわいらしさと育てやすさを兼ね備えている。 撮影/田中雅也
ピンクの花弁のグラデーションが愛らしい新品種「スイート キャロライン」。花径約7.5cmのミディコチョウラン。 撮影/田中雅也
椎 ひとつ置くだけで、部屋を華やかに彩ることができるんです。さらに底面給水鉢を使えば、コチョウランが自分に必要な分だけ水を吸い上げてくれるので、より気軽に管理できると思います。
編 水やりのタイミングがわかるのは、安心ですね。
椎 はい。コチョウランの場合、水切れはもちろんですが、水をあげすぎて根腐れしてしまうのもトラブルの一因なんです。根腐れすると花も葉も衰弱していきます。
編 そんなときは、どうすればいいんでしょう?
椎 一度根腐れした株は、バークチップや水ゴケなどの植え込み材をすべて洗い流して、腐った根をハサミで切り、残った健全な根を丸め、新しい植え込み材に植えこんでと、その再生には手間がかかります。
編 たしかに。うまくできるか自信がありません。
椎 そのうえで、株に力があれば夏場に新たな根と葉を発生させて復活することも。ただ、深刻な根腐れを起こしていると復活しないこともあります。
編 それは悲しいですね。
椎 そうなんです。なので適切なタイミングで水やりすることが、とても大切なんです。
編 そうですね。
椎 ご自身に合った手軽に続けられる栽培法で、ぜひ日常の生活の中でコチョウランを楽しんでください。
機能性とデザイン性を兼ね揃え、さらに気軽に育てられるようになった水の見えるコチョウラン「ran-to」
後編は、1年目の花を楽しんだ後のコチョウランの管理について教えていただきました!
椎名正樹(しいな・まさき)/椎名洋ラン園
1980年生まれ。大学を卒業後、都内の花市場にて研修。千葉県旭市の椎名洋ラン園に就農後、年に数回海外に足を運び、欧州のカジュアルな花文化に影響を受ける。モットーは「笑顔を咲かせる花づくり」。
「テキストこぼれ話」では、『趣味の園芸』テキストの特集に関連して、担当編集者による講師へのインタビューなどをウェブ限定で公開しています(毎月2回更新予定)
『趣味の園芸』2021年3月号(2/20発売)
コチョウランというと、「お祝い用の花でしょ」「ちょっと敷居が高い...」もしそんなふうに思っていたら、それは大きな誤解です。びっくりするほど手軽に、気ラクにコチョウランを楽しめる「超ズボラ栽培法」を椎名さんが教えてくれました。